プロット

文字数 1,921文字

起:
 妖怪好きの小六女子・三峰雫はある日、リサイクルショップでイケメン烏天狗のヤクモと出会う。妖怪が本当に存在したことに、雫は感動する。
 ヤクモは、常日ごろから売り場のテレビでお笑い番組を見て爆笑し、店員さんに怒られていた。「山に帰ったらお笑い番組なんて見れないんだよ」さめざめと泣くヤクモに、雫は「そんなにお笑いが好きなら、自分でネタ考えて、やってみたら」と突き放す。
 すると、ヤクモに「おれは漫才が大好きだ! それをやるには、相方がいる! お前、おれの相方になれ」と雫をスカウトする。
「いや!」「なんでだよっ? お前、妖怪が好きなんだろ。おれは烏天狗だ。妖怪に妖怪の話を聞く、絶好のチャンスだぞ」「あたしが好きなのはヴァンパイアなの! もっとクールで冷たい雰囲気の妖怪が好きなの! こんな山臭そうな妖怪なんていや!」「山臭そうだと……!」
 失礼なことをさんざんいわれたヤクモは、雫を自分の山まで引きずっていく。
「お前に山というものがどういうものなのか、教えてやる!」

承:
 雫を山に連れてきたヤクモは、さっそく山トレーニングを開始する。雫に山の尊さを教えるためだ。
「山では、自分の食事は自分で確保する」「いや、あたし小学生だよ? そんなことできな……」「山育ちはみんな、生まれたときから自給自足だ!」「はあー? 赤ちゃんのときからですかーっ?」
 自然薯を掘ったり、イワナを釣ったりしながら、ヤクモと雫はその日、存分に山生活を満喫する。ふと雫は、ヤクモといい感じにボケツッコミをしていたことに気づき、ぽわんと胸があたたかくなるのを感じる。
 その時、大きなヒグマが雫を襲う。ヤクモはふしぎな力、神通力を発動し、雫を助ける。お姫さま抱っこで助けられた雫は、不覚にもヤクモにドキッとしてしまう。
「夢にまで見た、いつかドラキュラさまにしてほしかったお姫さま抱っこを、天狗にされるなんて!」
 それでも妖怪の推し変はするもんか、と雫は必死にその気持ちを押しとどめる。

転:
「天狗がいるなら、ドラキュラさまもいるんだよね。どこにいらっしゃるんだろう」「ドラキュラって吸血鬼のことだよな」「やめてよ。吸血、なんてさ。ドラキュラさまっていいなさいよ!」「いっしょだろ。あいつなら、山のふもとでトマト農家やってんよ」「ええー! あんた、知り合いだったのッ?」
 意外な事実に、雫のテンションはマックスに。ヤクモに道案内させ、愛しのドラキュラに会いに行く雫。
 しかしドラキュラは、最近トマト農家を辞めてしまったらしい。近所の人に聞くと、芸人になったのだという。ドラキュラに相方候補を取られると思い、焦るヤクモ。「おれの相方になれ」コールがはじまるヤクモを押しのけ、雫はドラキュラに会いに、芸人養成学校に向かう。
 そこで見つけたのは、漫才の相方を探している……もとい、トマトに飽きたので、人間の相方を見つけて、合法的に血を貰おうとしているドラキュラ・ヴラドがいた。好きなお笑いができて、あわよくば相方に血を分けてもらえる一石二鳥だ、とヴラドはしたり顔だ。雫の軽快なツッコミを見たヴラドは、さらにニヤリ。自分の相方になれという。
 かくして、ヤクモとヴラドは雫の相方の座を狙って、お笑い対決をすることに。
「いや、あたし、芸人になるなんていってないんだけど……」

結:
 ヤクモとヴラド、交代で雫とネタを披露し、より雫の面白さを引き出せたほうの勝利だ。やる前はヤクモ優勢に見られたが、雫の豊富なヴァンパイアネタで、ヴラドとのノリノリの漫才を会場に見せつける。雫は自分の胸に、引っかかりがあることに気づく。
「別に芸人になりたいわけじゃないし、どちらを応援しているわけでもないけど……。ちょっとヴラドさま贔屓しすぎたかな。なんだかヤクモと気まずい雰囲気なんだけど……ネタやりにくいな……」
 いよいよ、ヤクモとの本番。しかし、ちょっとしたすれちがいで舞台上でケンカをはじめてしまう。
「あんたねえ、山に連れて行くのも急だし、相方になれっていうのも急だし、勝手すぎなの! なんなの、神通力でドングリに虫が入っていないか見極めるやつ。神通力のムダ使いなんだけど!」「神通力にムダな使い方なんてない! お前、そういわれた神通力の気持ち考えたことあんのッ?」「神通力の気持ちってなにッ?」
 会場を飲みこむような軽快なケンカ、もといボケツッコミの応酬。ふたりの息はぴったりだった。完全に負けたヴラドだったが、清々しい顔をしていた。
「諦めないよ。きみの相方になること」
 突然のライバル宣言に、ヤクモは「おれと雫の漫才に、着いてこられんのかーッ?」
「いや、あたし芸人になるなんていってないんだけど……」
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