第3話 サード・ミッション!

文字数 2,082文字


 クリスマス・イブの夜。
 純一の家では毎年、宅配ピザを頼んで祝うのがお馴染みになっている。

 ピザをたらふくを食べ終えたら、純一は自室のパソコンをこっそりと起動する。
 確かこの頃、純一の所持しているパソコンは、IBM製のウインドウズ98。
 モニターはブラウン管で、アホみたいにデカい。

 そしてこの頃、発表さればかりのウインドウズXPにアップグレードしていたと思われる。
 純一が購入した人生初のエロゲーは……脱衣麻雀だった。
 購入する前、メル友である紳士さんに相談して、ちゃんと起動できるか入念にチェックしていた。

 CDーROM版を買ったので、インストールするディスクは3枚もある。
 当時としては、画期的な高画質のアニメーションが堪能できるからだろう。
 
 そのため、純一の持っているパソコンでは多少のスペック不足があったようで。
 一枚のディスクをインストールするのに、1時間近くかかったと思われる。
 聖夜に彼は女性の裸体が見たくて、3時間もモニターと睨めっこをすることに。

 だが純一のパソコンは、何度もエラーを出して再インストールを勧めてくる。

「クソがっ! さっさとインストールしろやっ!」

 21時から何度もインストールしているのに、一向に終了できない。
 気がつけば、日付が変わって25日のクリスマス当日になっていた。
 午前0時になっても、インストールは成功できず、苛立ちが募る一方だ。

 ようやくインストールが成功できたのは、深夜の3時ごろ。
 純一は眠気で倒れそうだったが、どうしても裸体を見ないと眠れなかった。

 しかし、彼が人生初のエロゲーをプレイするには敷居が高かったようだ。
 それは選んだジャンルのせいだ。
 麻雀のルールなど、純一は全く知らないド素人。

『ポン! カン! チー!』

 を連続して選択する。
 すると……。

『いえ~い! リーチ!、ツモ!』

 ヒロインたちに連敗してしまう。

『マンガン、ドラドラ、テンホー』

 訳の分からない役を言われて、激怒する純一。

「うるせぇー! 日本語で話せよっ! さっさと負けて脱げ!」

 ルールの知らない彼では、一夜でヒロイン達を攻略するのは無理があった。
 結局、眠気に耐えられず。この日は眠りについた。

 ~それから、一週間後~

 クリスマスも終わり、年内にヒロインを攻略できずにいた純一。
 メル友であるエロゲ紳士さんに、脱衣麻雀のことを話すと。

『え? まだクリアしてないでござるか? 拙者は3日でクリアしたでござるよ』

 もちろん、彼の言うクリアとは、全ヒロインを全て脱衣させたことになる。
 純一はまだ一人も攻略できていない。
 麻雀のやり方がわからないと、相談したら。

『なるほど。リーチしやすくするためには、ポンやチーなどは使用しなければいいでござるよ』

 その助言を聞いた純一は、再度エロゲーを起動する。
 ちょうど両親や兄たちは、年末でおばあちゃん家へ帰省している。
 だから、冬休みの間に攻略しまくろうと考えていた。

 そして年が明けて、3日経ったころ。
 ようやく初めてひとりのヒロインを、脱衣させることに成功。
 歓喜する純一。

「っしゃーーー! ざまぁみろ、君たちは今から僕の好き放題に……」

 と言いかけている最中、その事件は起きてしまう。
 脱衣アニメーションが終わりかけたころ。
 生まれたばかりの姿になった若いヒロインが、涙目で叫び声を上げる。

『イヤッ! ダメェ~ 出ちゃうのぉ~』

 次の瞬間、絶頂したヒロインが何を思ったのか、失禁してしまう。

『もう、だから言ったのに……バカぁ!』

 その姿を見た純一は、喜びの顔から一転して、眉間に皺を寄せる。
 モニターに向かってこう呟いた。

「は? 出すなよ……」

 興奮していた純一だが、その性癖に耐えられず、一気に冷めてしまった。
 すぐにゲームを終了し、深いため息を吐きだす。

(脱がせたのに、お漏らしとか意味わかんねぇ……)
 
 翌日、エロゲ紳士さんにメールで、そのことを報告すると。
 彼からすぐに返信が送られてきた。

『なるほど。純一くんは結構ピュアなのですな?』

 そして僕に合うエロゲーを考えてくれて……1つの作品を勧めてくれた。

『純一くんには今、話題の“Ka●on”などはいかかですかな? キャラも可愛くて、シナリオも良きで。泣けますぞ?』

 エロゲ紳士さんの言った一言が、どうしても気になる純一。
 
 (なんで、エロゲーなのに泣くんだ? 抜くんだろ?)

 これ以降、純一がクリスマス・イブに購入した、エロゲーソフトを起動することはなかった。
 クリアしないで、売却してしまう。
 そして、うぶな彼には刺激が強かったようで、しばらくトラウマになったとか。

 
 ちなみに、本作を書くにあたって、味噌村はDL版を再購入したらしい。
 例のシーンを見ても、性癖が歪みまくったおっさんには問題なかった。
 ただ一つ感じたのは、10人以上も女性がいるのに下着の色が、白が多かったところ。
 20代のOLや30代の主婦が、上下ホワイトていうのは、ちょっとロマンが無い。
 容量的な問題だったのかも?

 メリークリスマス、18才!

  了
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