第2話

文字数 905文字

イツキは、再び、店頭に戻って、レジに立った。
 あそこには、また、色んな客が来ている。
 雑誌のコーナーの前には、何人かの男性客がいる。
 競馬の雑誌。
 クルマの雑誌。
 そして、アイドルの雑誌。
 さらには、『ヤングマガジン』や『ヤングジャンプ』の雑誌。
 そうだよな、と思った。
 そもそも、イツキは、今、川崎駅前のコンビニにいるが、沙織は、京急横浜駅の近所に住んでいる。
 前に一度、沙織は、たまたま、ここのコンビニに来たが、そんな風な展開はないと思った。
 イツキは、前に、小説教室で、江國香織著『とくべつな早朝』を読んで思った。
 あんな健気な話ってないのか、と思った。
 そして、太った女性客が来た。
 イチゴのショートケーキを買っている。
 そうか、この人も寂しいもんな。
 江國香織著『とくべつな早朝』の大学生ではないけど、おまけをしてあげたい気分だった。
 そして、また、カップルの客が来た。
 いや、女性物のショーツを買っている。
 良いのか、これ、と思った。
 客がいなくなって、イツキは、モップで掃除をした。
 大学生のとき、ショッピングモールで掃除をしていたら、会社の人が「上手だね」と言っていた。
 そうだ、それは、自信だったと思う。
 いや、今年の正月は一人だろうか?
 誰もいないので、そこにあったスマホで短歌をたまたま見た。
「正月は
 指原莉乃で
 妄想す
 夢の中では
 デートするなり
 歌人 新橋イチロー」
 なんてあった。
 この新橋イチローは、彼女がいなくて、悶々としているのか?せめて誰か誘えば良いのにと思った。
 沙織は、京急横浜駅の近所に住んでいるけど、川崎大師は、人が多いかと思った。
 今日は、3時で仕事が終わるけど、でも、この新橋イチローと同じ一人だろうか?
 そう思った時だった。
 お店のチャイムが鳴った。
 その時だった。
 沙織が、そこにいた。
「ギザギザポテト一つください」
 イツキは、
「からあげクンもおまけします」
 と言った。
 3時前だった。
 仕事が終わって、イツキと沙織は、川崎大師へ、初詣に行った。食事をしてから、二人は、カラオケボックスへ行って、いきものがかり『気まぐれロマンティック』を歌ったらしい。<終>
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