オーダーメイド

文字数 396文字

 金曜日の夜。仕事を終えた僕を玄関で迎えてくれた妻の笑顔が、いつもよりも色っぽく見えた。
「ただいま。何かいいことでもあった?」
 鞄を床に置いて手を握る。
「子どもが欲しいの」
 妻は僕の目をじっと見つめたまま甘い声でそう言った。
「わかった。すぐに作るよ」
 これまでは二人の時間を大事にしてきた。もちろんこれからも大事にするつもりだが、子どもが一人くらいいた方が賑やかでいいのかもしれない。
 
「おはようパパ、ママ。はじめまして」
 娘は休日の間に完成した。
「君にそっくりだろ?」
「とっても可愛いわ」
 機械の娘の第一声に笑顔を浮かべる妻。この笑顔のためなら僕は何だってする。
「これからどんどん言葉を登録していくから。きっと世界一可愛い子になるよ」
 君のためなら僕はきっと何だってできる。そんな想いを伝えるように繋いだ右手に優しく力を入れた。
「とっても可愛いわ」
 愛する妻は今日も要望通りの返事をくれる。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み