花街のサメと掴みかかる手 第2回

エピソード文字数 1,359文字

前回までのあらすじ:ドグマ防衛組合代表理事である石カブト直々に、サメクマ不祥事案件の調査を依頼された田沼。2人の女性が行方不明になった歓楽街に向かい、手掛りを探すことに。
夕方。横浜某所。
BGM:SOUNDORBIS『Shadow Dance』
http://dova-s.jp/bgm/play5957.html

人間では気付けない異臭を、人喰いグマの鼻は捉えていた。
すでに磯のような臭いがするな……この事件に関わっているのはサメなのか?
ひとまず顔写真を見せて聞き込みをするより、臭いの濃い所を探そう。臭いの主が事件に関係ないただの迷いザメでないことを祈ろう。
田沼の数十メートル先で、ホストが女性を呼びとめている。
今からお仕事?お互い大変だよね。君っていつも早めの時間帯に来てない?
んー、まーね。昼間に特にこれといってやることないから、早めに仕事場に来てスマホのゲームとかしてるよ。
もしよかったら、うちの店で時間つぶしてかない?30分でいいからさ。
(……こいつら人間ではある。人間ではあるが、)
初メテノオ客サンダシ、さーびすスルヨ。クタビレタオッサンノ相手バカリジャア、疲レチャウデショ。
ホストクラブか……一回行ってみようかな。1時間だけね。
ジャア、一名様ゴ案内!
(空気を漂う匂いと味で分かる。こいつら生者に変装したゾンビだな。だが知性ゾンビ特有の芳香はしないな、普通の不快な腐臭だ。ゾンビを操ってる奴がいるんだろうな。まだ確信はないが、こいつらの親玉が連続誘拐犯という前提で動こう。ひとまずこのソープ嬢はまだ助けずに、アジトまで案内してもらうか)
BGM:SOUNDORBIS『Shadow Dance』
http://dova-s.jp/bgm/play5957.html
路地裏に入っていくゾンビ2人と女性。距離を取りながら追う田沼。
路地から別の通りに出たところで、3人の姿は消えていた。
(磯の匂いが濃くなっている……ここらで“こっち側”から“潮だまり”に移動したのだな。ゾンビはサメやクマと違って鼻が利かないから尾行がすごく楽だ)
田沼は道路の白線を平均台を渡るように歩き出す。
行き交う人々は、美青年の唐突な奇行をちらりと見ては興味をなくし去ってゆく。
田沼には、人々とは別の風景が見えていた。道路から海水が湧き出してゆく。アスファルトがどんどん沈下してゆく。海水の中を、輪郭のおぼろげなたくさんのサメが泳いでいる。
誰が最初に思いついたんだろうな、線の外を鮫のウヨウヨいる海に見立てる遊び。1号は「人間の遺伝子に染みついたサメへの本能的恐怖からくる訓練」だの言ってたが、正直眉唾だ。
ともあれ、潮だまりに入るには、
右側に倒れ、海水に飛び込む田沼。
ビルの隙間、トイレのドア、そして白線の外側。
五感と勘を働かせ、こっち側と潮だまりの“仕切り”を探すのだ。
艶めいた肢体を想像し鼻の下を伸ばしながら通りを歩く男たちは、アスファルトに身体を叩きつけ、地面に吸いこまれていく青年に気付かない。
サメパワーによって形成された潮だまりを、訓練もなしに認識できる人間は極めて少ない。
第3回へ続く
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登場人物紹介

志村絹
種族:人間 性別:女 所属:楢蜜騎士団(騎士)
身長:166cm 体重:標準BMIよりやや重い
特記能力:
サメ使い(ノコギリザメ)

高校生。BTS-06による神奈川県O市散発占拠事件に巻き込まれた際サンゴ切りを発見、彼女や他の協力者たちと共にBTS-06一味を撃退。その後は姜との結婚資金を貯めるために、楢蜜騎士団の機動部隊隊員としてサメクマ事件に携わっている。
自身の思考に柔軟性がないこと、場の空気を読めないことを強く自覚しており、ゆえに内気な性格。
なお、胸囲は1mを超えている。アイコンジェネレーターでは表現できないことが遺憾である。

サンゴ切り
種族:サメ(ノコギリザメ) 性別:雌 所属:楢蜜騎士団(騎士)
体長:65cm 体重:中型電動チェーンソーと同じくらい
特記能力:空中遊泳、サイバネティック強化、ボストンティーシャーク筋組織移植、潮だまり展開

サイボーグザメ。BTS-06に監禁・強化手術を受け、人喰いグマにして強力なサメ使いである麻弥子の奴隷となっていたが、隙を見て脱走。現在は志村の相棒となっている。ただし志村の家族へのサメクマ真実漏洩を阻止するため、姜
の家に住んでいる。
戦闘力が高いと踏んだ相手に萎縮する傾向があるが、超硬チップによる高周波レシプロ斬撃は相対する食人者にとって正しく驚異である。
お調子者でスピリッツ・リキュールを好む。背ビレフェチの同性愛者。

姜泰元(Kang Taewon)
種族:クマ(ツキノワグマ) 性別:雄 所属:楢蜜騎士団(将校)
体長:163cm→本来の姿と同じ 体重:志村よりわずかに重い→志村よりわずかに軽い
特記能力:ヒト擬態、部分的擬態解除、クマ抗菌力、クマ脱臭力、クマ芳香、クマ撥水力、標準より高いクマ動体視力およびクマ嗅覚

高校生。女装の美少年。檀君傍系の子孫を自称する韓国の上流階級グマ「タングンジェ(檀君弟)」の中で、明治期に大阪に定住した氏族の末裔。
彼は人間に擬態している時の方が肉体的・精神的に安定しており、完全に擬態を解くと戦闘能力が格段に向上するが、同時に好戦的・嗜虐的な精神状態になる。また、O市散発占拠事件のさなか志村の血を舐めたことで軽度の人血依存症になってしまった。
普段は優しく穏やかで、しかし正義感に満ち溢れた熊物。志村とは、中学生時代に同級生からの暴行恐喝から助けて以来の恋仲。

田沼信光
種族:クマ(雑種) 性別:雄 所属:関東中部ドグマ防衛組合(特別服役職員)
体長10m→178cm 体重:5トン→痩せているように見えて姜よりずっと重い
特記能力:ヒト擬態、全身収縮(最小178cm)、
クマ味覚、クマ高周波振動、標準より高いクマ脊力、クマ咀嚼力、クマ反射神経、クマ消化力、クマ再生力およびクマ耐久性

大学生。クマ喰いグマ。熊殺し人殺しの呪われグマ。BTS-01の配下。
クマの親から育児放棄されていた彼を拾ったサメクマハンターのチームがマダー・ティーパーティーの策謀によって全滅し、彼自身も生存のために養父である田沼清仁の遺体を喰わざるを得なくなった過去を持つ。
今の彼にあるのは快楽殺人者への怒りと憎悪、そして煙い血への渇望だ。彼はドグマ防衛組合からの汚れ仕事を受け持つだけでなく、自発的に人喰いグマや人喰いザメを探し出し、喰い殺す。そのため人間濃度が極めて高い。

BTS-01
種族:サメ(ホホジロザメ) 性別:雌 所属:
関東中部ドグマ防衛組合(一般職員)
体長:4.7m→165cm 体重:1tは超えてる→ヒト擬態時の姜よりやや軽い
特記能力:
ボストンティーシャークである固形物透過、空中遊泳、ヒト擬態、擬態時筋力維持、疑似ゾンビ召喚、潮だまり展開、標準より高い電気受容感覚、嗅覚、歯の硬度

ボストンティーシャーク1号。アメリカ独立戦争の13匹の生き証人の1匹。
シマクマの愛人であり、
ドグマ防衛組合創立期からの衛生部職員(だが上層部の圧力により出世はできなかった)であり、防衛組合に属するサメの中で最強の存在(なぜなら彼女がボストンティーシャークだからだ)
人間おっぱいフェチであり自身は貧乳(子宮ミルクで胎児を育てるホホジロザメは、割と擬態すると巨乳になることが多いのだが)。部下である伊庭の胸を定期的に揉ませてもらっている。

ホンシュウトラ(Panthera tigris japonensis)
福島・山形県南部から山口県にかけて生息するトラの一亜種。動物の肉の他に竹の葉や芽を好んで食べる習性がある。
全長オス270-300cm、メス240-255cm。体重オス170-240kg、メス100-130kg。
日本の天然記念物であり、古くから屏風絵などの美術の題材として好まれてきた。もし日本にトラがいなかったら、日本の十二支においてブタがイノシシに置き換わったように、トラもクマになっていただろうと言われている。
トラは時にクマを捕食すると人間の研究者から認知されているが、犠牲となるのはあくまで幼いクマや弱ったクマであり、普通のクマはおろか駆け出しのサメクマハンターにさえ到底勝てる見込みはない。

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