二冊目/あなたに貸す本はございません

文字数 435文字

葛間クズコは苦悩していた。
それは、とんでもないレファレンス・サービスについて。
謂く、

「村下冬樹のよさがわからない。あの作家のどこがおもしろいんだ?なんでノーベル文学賞有力と言われているんだ?」

はあ。
あのですね、お客様…
あのー…

あのね、あのねー、レファレンス・サービスはね、文献をね、ご紹介したりね?あとね、読書のね、手助けはするけどね?ね?

あのな!!!
本のよさなんて人それぞれなんだよ!!!

たとえ村下冬樹が世間で流行ってようが世界的に評価されてようが、お前が面白くないんだったら話はそこで終わりだ!!!
村下冬樹はお前に読まれなくても結構だし、本人むしろノーベル文学賞迷惑がってるしな!!!
だいたい、「よさがわからない」ことを相談されてもな、お前に貸す本はないんじゃ!!!

クズコは心の声を押し殺し、微笑む。

「比較的読みやすいエッセイや、短編集はどうですか?図書館奇譚はおすすめですよ」

(あ、作品タイトルはそのまま。)

お前に貸す本はない。
いえ、あなたに貸す本はございません。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み