第8話 生い立ち

文字数 1,160文字

遥佑は生まれた時から恵まれた環境にあった。
父親の格巳(かくみ)は腕一本で今の建設会社の前身である工務店を立ち上げ職人3人で東京で一番の工務店にのし上がった。
技量、人格、才能とも周りとはかけ離れた能力を発揮した。
使う職人もずば抜けた技術を要し何度かのヘッドハンティングにも団結心で乗り越えて来た。
最初は知り合い、ご近所から始めた事業も何時しか国の委託事業を請け負うまでになった。

当然、遥佑の家庭は裕福で、お金持ちのボンボンと呼ばれていた。
気に入らない事に対しても、父親を鼻にかけ学校関係者への根回しをするなど抜け目がなかった。
父親が息子達二人を溺愛していたことが理由にある。
仕事で帰れない日々が続いたが、息子達を思う気持ちは母親以上だった。
然し、それが逆に息子達の反感を買う。
中学あたりから兄の(しょう)が悪い友達と遊びまわって家に帰らなくなり、父、格巳は初めて手を挙げた。
それ以来、翔は家に帰らずとうとう海外の会社へと思いを馳せるようになった。

遥佑は、頭がいいというか要領がいい子供で自分に被害が及ばないよう用心を重ねて言った。
父親はそんな性格の遥佑を嫌っていたが、兄が海外へと思いを馳せた為、次男の遥佑に期待せざるを得なかった。
然し、格巳の考える経営方法は遥佑には荷が重く、要領よく自分に負担のかから無い経営方法を格巳は煙たがっている。

父は兄が海外へ行ってしまった頃から銀座に通い詰めるようになった。
最初は遊んで帰るだけだった。
然し、のめり込んでいくうち家も外も見境がなくなり、母がいるのに女を連れ込み目の前でも情事に耽る様になった。
遥佑はそんな姿を見る事に嫌気がさし、母と一緒に家を出てマンションを借りた。
然し、母の弥ゑ子(やえこ)も父と同じように年齢関係なく男を連れ込み何時しか子供が出来たと嘯き、遥佑を置いてどこかに消えてしまった。
兄と連絡を取り、家の様子を伝えると、兄のポケットマネーから住まいを維持する為の生活費を遥佑に送ってくれた。 
格巳は、突然会社を引退すると言いだし、海外で成功している兄では無く、遥佑を社長にすると言いだした。

「自分にはできない。」と何度言っても父は拳を振り上げ、自分の思い通りに2代目の椅子に座らせた。
今までいた職人たちは既に父の会社は終わったと考え、ヘッドハンティングの誘いに乗って、今もライバル会社で職人を続けている。

残された遥佑は何もできないまま、父、格巳が連れて来た御田原(おだわら)と言う経営のプロが遥佑の横に居座り実質その御田原が、会社を動かす形で今の全国展開がある。
遥佑は、父親の名前を活かす目的としてトップの地位にあった。
所謂、お飾り社長だ。



「誰が何と言おうが俺は経営者だ。とやかく言うやつは首を跳ねればいい。」

その思いとは裏腹にいつ自分が会社を追われても経営に露ほどにも困ることがないことは自覚していた。
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