デカい女はモテないらしい

文字数 1,136文字

そんな前向きな気持ちになったのも束の間、中学生になって170cmに到達した私の心は、ひどくえぐられた。私の身長に対して、“女として”という視点からの言葉が加わった。
「俺、デカい女とか無理なんだけど」
直接話しているわけではないが、私にも聞こえるようなところで交わされている会話。私に対して言っているわけではなく、ただ各々の好きな女の子のタイプについて話していたのだろう。私はその男子に告白してもいないのに、好きでもないのに、フラれたようなみじめな気分になった。デカい女はかわいくない、恋愛対象外だということを突き付けられた。
「デカい女とか無理」という言葉にも十分傷ついたが、その後、近くに私がいることに気付いた誰かの「やべえ、聞こえるって」と囁く声と、ひそひそと笑う声が何よりも嫌だった。
 私が通っていた学校だけなのか、一般的にそうなのかは分からないが、「小さい女の子がかわいい」という風潮が強かったように思う。

女友達からの言葉にも苦しめられた。私の周りの友達はみんな、平均的な身長だった。友達は多いほうだったと思っているが、仲良くなると何でも言い合えるという関係性は、私を苦しめた。休み時間での数人での会話。みんなは冗談で、笑いのネタとして、何かにつけて“デカい”ことに触れた。「デカいから彼氏作るの大変だね」「デカいから男子も怖がってるよ」「デカいから遠くからでもすぐ見つけられる」
中学生や高校生になると、女子はより「モテ」に敏感になる。みんなの私に対する高身長イジリの裏には、小さい女の子がかわいいとされている中での「私は背が小さいから!」という優越感も少なからずはあったのだと思う。実際に、「背高いのうらやましい!私ちびだから」と何度も言ってくる子もいた。そんな子はたいてい、近くに男子がいるときに、周りにも聞こえるように、私を見上げながら言ってくる。本当にコンプレックスに思っているのなら、わざわざ大きい声で言わないだろう。写真を撮るときにわざわざ私の隣に写って、自分の身長の低さを際立たせたりはしないだろう。「低身長アピール」、「あざとい」なんていう言葉はそのとき全く浸透していなかった。従ってそんな言動や行動がまかり通っていたし、やっぱり「小さい女の子はかわいい」のであった。
だからこそ、何も言い返せなかった。勉強やスポーツができても、私は女としてはだめなんだ。女として私は劣っているから、この子たちには何も言い返せない。それに、もし言い返したら場の空気が悪くなる。中学・高校時代に友達を失うということは、学校での生きる術を失くすことを意味する。その場を盛り上げるために、私は必死に口角を上げ、時には心をすり減らして自虐と言われるような発言もしたこともあった。
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