プロット

文字数 1,676文字

序章

 「花咲く歌声」を持つ天才アイドル、ラベンダーリリィ(ラベリ)は、幼馴染みのイケメンアイドルデュオ「アルペジオン」のアズサとレン、そして三人の親代わりである作曲家の日後葉央と一緒に暮らしていた。
 四人が住むのは、さくらんぼ色のレンガで建てられた庭付き二階建ての家。通称「音楽室」。売れっ子アイドルとして忙しいながらも、葉央が作った美しい音楽が絶えず流れる、幸せな生活を送っていた。






 突然の事故によって葉央が帰らぬ人となり、ラベリは悲しみで歌えなくなってしまう。ラベリの分まで働くアズサとレン。「音楽室」は荒れ、三人は深い悲しみから抜け出せないでいた。
 そんな三人の前に、葉央の甥である日後真宙が現れる。真宙は葉央が書いた「ある一曲」の楽譜を渡して欲しいと言うが、全ての楽曲を知っているはずの三人も知らない曲だった。
 真宙は葉央から「もし自分に何かあったら三人のことを宜しくと頼まれていた」と言い、音楽室で楽譜を探しながら三人の面倒を見ると言い始める。突然の申し出に反対するアルペジオン。しかし、真宙のピアノを聞いて涙を流したラベリを見て渋々了承する。



 
 掃除や庭の手入れ、食事の用意、そしてたまに弾くピアノ。
 その姿は葉央そっくりだったが、穏やかで完璧だった葉央と比べ、真宙はドジで適当で楽観的だった。そんな真宙と過ごしていくうちに、ラベリは少しずつ笑顔を取り戻していく。
 対するアルペジオンは、真宙と打ち解けるのに時間がかかる。からかったり嫌味を言う二人。とりわけレンは、真宙とラベリが仲良くしていることが気に入らず、真宙と口喧嘩することもしばしばあった。しかし、ある日レンがファンから怪我をさせられそうになったのを真宙が守ったことをきっかけに、二人は真宙を完全に信頼するようになる。
 かくして、音楽室には以前のような暖かくて美しい雰囲気が戻りつつあった。




 葉央の部屋で楽譜を探している最中、真宙は花のオルゴールを見つける。硝子細工でできたそれを見た途端、昔、まだ幼い子供だったラベリと出会った日の記憶を思い出す。
 そこにレンとアズサが現れ、ラベリがもう一度歌えるように計画を立てたいと言う。三人が話しているのを偶然立ち聞きしたラベリは、葉央の事故の原因が自分にあると知り、音楽室を飛び出してしまう。
 


 
 行方をくらましたラベリを探し出し、花のオルゴールを持って迎えに行く真宙。オルゴールはラベリにとっても、葉央との想い出が詰まった品だった。
 ー「それは葉央の宝物?」
 ー「僕の宝物でもあるし、僕の世界で一番大切な人の宝物でもあるんだ」

 小さなネジを回すと、懐かしいメロディがゆっくりと流れ出す。
「百合香、歌って」
「どうして私の名前を知っているの?」
「子供の頃に会っているからだよ」
 百合香は音に合わせて、おそるおそる、鮮明に覚えている歌詞を口ずさむ。歌い始めると、今までが嘘だったかのように、美しい声が伸びていった。
 歌い終わると、カチッと音がし、硝子の花びらから小さな扉が現れる。そこを開くと、小さく折り畳まれた楽譜が入っていた。
 葉央と、葉央の妹で真宙の母である紅葉が子供の時に作った曲だった。真宙が病床に臥す母のためにずっと探していた曲だった。
 真宙から、葉央と紅葉の話や、事故の原因は決して百合香のせいではないと言い聞かされる。話しているうちに心が落ち着いていく百合香。
 音楽室に帰り、真宙が弾く葉央の曲に合わせて三人で大きな声で、たくさんの曲を歌った。葉央との想い出を語り合いながら。

 こうして無事に歌声を取り戻したラベリ。真宙が作った曲を歌い、アイドルの活動を再始動させていく。

 一方、レンはラベリが歌声と笑顔を取り戻したことに安堵し、ずっと憧れていた留学を決意する。ともについて行きたいが、邪魔をしてしまうから言い出せないと悩むアズサ。ラベリと真宙はアズサの背中を押し、アルペジオンはフランスへ留学する。
 
 二人きりになってしまった音楽室だったが、アルペジオンがいつでも帰って来れるよう、絶えず美しい音楽が流れ続けている。


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