第2話 家族について

文字数 837文字

家族構成ですか?
息子が一人います。彼だけが家族です。母は亡くなりましたし、義父とは疎遠ですから。
きょうだいはいません。夫もいません。結婚せずに出産したので、ずっとシングルマザーです。
息子はすばらしい存在ですよ。知能指数が特別に高いと、幼稚園の頃に知らされました。政府から視察が来て、彼を褒めたんです!
今は小学校に通っています。9歳で飛び級をしたので、来年は中学生になるかな。さらに良い成績であれば、科学系のアカデミーに進学できるかもしれないんです!
物理が好きらしいけど、彼の説明する数式の半分も理解できません。ふふふ。
ダメな母親ですね……。
でも、いい教育を受けさせたい……。だから稼がなくちゃ。
彼には私とは違う人生を、歩ませなければいけません。新しい世界に進ませたい。

成育歴ですか? なんですかそれ。あ、生まれ育った環境?
えっと、両親は地方で小さな農家を営んでいました。
私が5歳になったとき、父は用水路に落ちて亡くなったんです。大雪の晩でした。覚えています。
それから母は「生活のために」って、二度再婚しました。女手一つじゃ、なかなか生きていけませんからね。まあ母は握力が弱くて、農作業を続けることが難しかったんです。
他の仕事はありませんでした。都会に出るあても勇気も無かったんでしょう。
最初の義父は数年で母から去りました。理由は分かりません。
次の母の結婚は……最悪でした。ちょっと……言いたくないんで。ごめんなさい。涙が。

……逃げるように、私はボーイフレンドのアパートに住み着きました。彼は最初は優しかった。でもそれだけ。
私が妊娠すると、アパートから追い出したんです。私は故郷を去って、首都圏まで出て、あとは母子施設のお世話になりました。でもその母子施設は不潔だったし、何よりも滞在期間が限られていましたから、ここを紹介されて、働くことにしたんです。

はい。もちろん事実を知っているんです。就労の契約をするときに説明されました。
絶対に他言してはいけないとも、肝に銘じています。
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