親友の裏切り

文字数 1,737文字

私には親友がいる。美人でスタイルが良く、気さくな性格。仕事と育児を両立し、旦那に文句があっても本人の前ではグッと堪えて旦那を立てる。よくできた女性だ。唯一定期的に会う友人で、彼女には何でも話せる。

そんな親友に裏切られた。別に本人は裏切ったつもりはない。何気ない彼女の言葉に私がそう思っただけ。でもその一言で、親友に対する想いがパチンと切れた。

先日、親友を含め3人で女子会をした。もう一人は後輩で、親友も私も会うのは3年ぶり。先に後輩と私は落ち合った。

後輩と会っていない間の出来事を話した。主に今の彼とのことだ。

彼とは付き合って3年目に入り、同棲もしていて順調だ。再来年までには入籍しようと話している。親同士も仲良くなり、みんなで食事にも行く。同棲初日に迎えた愛猫は本当の息子のようで、もう家族として成り立っている。

しかし、付き合った当初は大変だった。
彼はバツイチで、出会った頃は元嫁との泥沼離婚劇で憔悴しきっていた。知らないうちに貯金を使い込まれ、「実家に遊びに行く」と言われたまま子どもを連れて出ていき、いつの間にか転校させていた。いわゆる連れ去りだ。彼はそのまま子どもと会うことなく離婚が成立した。

彼は温厚な性格だ。付き合ってからこれまで、理不尽に怒られたことはない。けれど元嫁は弁護士を通して彼をモラハラと呼び、徹底的に攻撃した。自分は家事育児をほとんどせず、お金も使い込んだのに。

財産が欲しいがための言いがかりとはいえ、聞くに耐えない仕打ちだった。やっとの思いで離婚は成立したが、結局今でも彼は子どもと会えていない。本当は会いたいが、子どものことを思って身を引いた。きっと元嫁が子どもに自分のことを悪く吹き込んでるだろうから、その状況で自分と会ったら子どもが混乱するからと。彼なりの子どもへの精一杯の愛情だ。

その後に私と出会う。
まだ傷は深く、付き合った当初は元嫁への恨みつらみを聞かされた。私もバツイチで別れるまではそこそこ大変だったから、彼の状況に寄り添える度量はあると思い、彼の話を徹底的に聞いた。子どもを奪われたショック、もう会えない悲しみ。止まることなく話された。

時に感情の起伏が激しく、こちらもついていけない時もあった。いきなり自分の目の前から消えて、悪者にされたらそうなるのも仕方ない。だからひたすらに聞いていた。しんどい時はあったけど耐えて、彼を支えることに徹した。

子どもと引き離されたショックからか、鬱の症状も見られた。結局、鬱と診断されたら自分が崩れるそうだからと病院には行かず、なんとか精神を保って乗り越えた。彼も辛かったが私もそれなりに大変だった。この一連のことを親友には話していた。





久々に再会した後輩に話し終えた頃、親友が遅れてやってきた。私の近況報告をしていたと伝えると、彼女は後輩にこう言った。


「聞いた?まじ面白いでしょ!もういろいろあってホントに面白かったんだから」


愕然とした。


親友は楽しい場にいると、舞い上がって人を小バカにして笑いをとろうとする癖がある。優劣感に浸りたいのか、やや上から目線でものを言う。まさにその現れだった。もしかしたら彼女なりに場を盛り上げようとしているのかもしれないし、舞い上がったらそんなこともあるだろうと考え、今までは流していた。

けれど、今回の言葉はさすがに刺さった。
私はあまり人に弱音を吐かないし相談もしない。辛くてもサラッと言うタチ。だから彼との間でしんどいことがあっても面白く可笑しく話したこともある。心配かけたくなかったからだ。それでもなかなかヘビーな内容だったから、私が笑いながら話しても親友は神妙な面持ちで聞いてくれた。

だからなおさら、今回の言葉はショックだった。私が辛かったことを知っているのに、ネタにするのは少し違う。軽率だ。けれど、その場を笑いながら終わらせた。

この一件で親友に対する何かが弾けた。私が辛かったことを知っているのに小馬鹿にするのか。やはり人の不幸は蜜の味なのか。仲が良くたってこんなことが起こる。やっぱり人間は信用できない。

最後は笑顔で別れたが、私の心は不完全燃焼だ。本当に信頼できる人を見つけるほうが難しいのかもしれない。哀しかった。

今はしばらく親友には会いたくない。

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