第1話

文字数 706文字

 東京にあって庄内にない物の一つに路地がある。
【路地】建物と建物との間の狭い道( goo 国語辞書から引用)。
 山形県庄内町は広くて人が少ない。その大きさは東西約 22.2km、南北約 38.9km、面積は 249.17平方キロメートルで、地目別では山林が約 61.9%、田が 22.8%と約 85%を占め、宅地は 2.8%を占めるに過ぎない。そこに総人口 20,151人しか住んでいない(令和2年国勢調査による)(庄内町公式ホームページから引用した)。
 だから庄内では、狭い道を挟んで軒を連ねて家を建てる必然性がないのだ。

 写真は今は昔、2014年1月13日に撮影した、東京浅草の路地である。

 狭い路地を挟んで何軒もの焼肉屋が軒を連ねている。見るだけで朦々(もうもう)とする焼肉の煙の臭いがしてくる。しかもどの店も美味しそうだ。
 私は呑み屋街を歩いていると、不思議と一杯呑み屋がごちゃごちゃと建て込んだ路地に誘導されてしまう。
 そして庄内に永く居る今、この写真を見ると路地の呑み屋を思い出し無性に恋しく思う時がある。
 何故だろう?
 それは、この雰囲気をよしとする見ず知らずの人たちが、お互い手の届く距離で焼肉を摘まみ酒を飲む。かと言って隣はどこの誰だかは分からず、自分の世界を邪魔されることもない。この距離感を保った場と時間を共有する微妙な連帯感がいいのではないだろうか。
 お互いに空間の距離は十分にはあるが、お互いを知り尽くした庄内とは対極の世界なのだと思った。

 人が集まって自然にできた路地がある東京もよし、路地ができる必然性のない大きな自然がある庄内もよし、まあ、住めば都ですの~。

 んだんだ。
(2022年11月)
 
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