第2話  謎めいた部活

文字数 1,500文字

 ここ私立青谷畑高校は、名前の通り畑や谷があるど田舎高校…ではなく東京でトップの進学率と実績の誇る名門高校である。当然学問のみならず部活動も充実し、運動部では他校と差をつけ圧倒的好成績を残している。
 では文化部はどうか。この問いに対して一般生徒はあまり良い印象を描かない。常にダラダラと自己満足の象徴として浮かぶ文化を放課後に残ってでも行う活動精神に理解が及ばない人がほとんど。その枠組み除外される一部の生徒がいなければとっくのとうに廃れていたはずらしい。

 だが、そこに一線を風靡するかの如く存在している部活がある。今私が歩く廊下の先にあるのがその部活の活動場所だ。

ーーけど、やっぱり今日はやめとくべきだったかな。

 若干後悔気味に肩を落とす理由は先程の出来事が的になっていた。放課後、クラスメイトの丹生に「やめといたほうがいいよ」と止められながらも文化部のポスターを身に掲示板まで移動した私はそこで面白い貼り紙を見つけた。

 『??部 部員募集中』

 淡々と書かれたその文字に心惹かれたのも無理はないと思う。隣の情報部、その下の英語部などがイラストやパソコンを使って鮮やか色彩で人を呼び寄せているのに対し、その張り紙は黒いマジックで真ん中に綴られていただけ。
 そして??などと巫山戯た当て字。
 これで部員を集める気があるとは思えない、そんな内容にうっかり視線が固定されてしまった時点で我ながらちょろいと感じてる。
 
 両親や丹生から『部活に入れコール』を受け続ける私は興味本位に職員室へ行き、この部活をことを聞いてみた。入学初日に何かあったらいつでも来いと名ゼリフを言った顔と言動が一致してない担任の先生に。顧問を知らないので当然のことだよね?

 しかし、その部活のことを話すと何やら歯切れは悪くなる先生。苦笑いで「明日にしないか」なんて、入学して間もない新入生が聞いたら速攻引き下がるに決まっているのに。慌てた私の身を案じたのか、すまんと言って仮入部届けを無理やり手に取らせた先生はそのまま仕事に戻ってしまった。

 すぐに職員室から出た私。教室がまだ空いていたことを幸に仮入部届けに記入を開始した。ボールペン? シャーペンでいいのかな、などと独り言を呟きながらなんとか記入し終えたところでふと気づく。

ーー活動場所がわからなし、??部でいいのこれ。というか部員数とか記してないの掲示板ってどうなの?

 以上のことが相まって後悔と不安の津波に体が押し出し押し返されてる。廊下の他学年たちが話していた内容に聞き耳を立てなければ生憎もう一度職員室に向かうことになっていた。恐るべし文化部。
 因みに他学年というのは写真部のことで、その人たちが2階の廊下の先にある活動場所に赴き活動の写真が撮りたいと言ったら断られたらしい。やはり一線風靡してることはある。何に対してかは知らないけど。

 と、心の中で意見を巡らせている間にも入り口のドアは着実と近づき目と鼻の先まで迫ってきていた。

 右手を振り上げドアにそっと近づける。特に教室のドアとなんら変わりはないそれは開き戸。勢いだけで来た身からすればやはり明日がいいと後悔せざるおえない。

ーーここで負けてはだめ。勇気を振り絞らなきゃ。

 コンコン。

 「はーい、どうぞ」

 嫌に間延びした声。もしかして結構緩い部活だったり…

 「あ、僕のお菓子とったでしょ」
 「とってねえ盗んだんだ。クッキーひとつで大袈裟な」
 「な、せっかくのマドンナちゃんから貰った洋菓子を。この代償は高くつくぞ!」
 「やかましい。クソチビ」
 「なんだと、前髪かかって根暗なくせにー!!」

 ガチャン!

ーーもう家に帰ろう。
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