第3話(14)

エピソード文字数 1,972文字

「にゅむっ! ゆーせー君っ、無事だったんだねっ!」
「師匠っ! 安堵したぜよ!」

 緒覧駆(おらんく)公園に着くと、ズダダダダッ。レミアとフュルが、猛スピードで駆け寄ってきてくれた。

「敵に襲われて、シズナが助けてくれたんだよ。心配かけてスンマセン」
「ううんっ、こっちこそゴメンねっ。け、結界が硬くって、ちっとも入り込めなかったのぉっ」
「わ、ワシも全力で魔法を撃ち込んだけど、ビクともせんかったが……。まったく情けないぜよぉ……!」

 2人は俯き、ギリリと両手を握り締める。
 この人達が、全く歯が立たないなんて。空間分野に関しては、角族が遥かに上なんだな。

「ってそれは有り得ない! シズナは『戦場空間』に入ってたじゃん!」

 あれを展開したのは、リョウ。そのリョウが展開した時半径30メートル内に彼女はいなかったから、侵入してるぜよ!

「そ、それは、あれなのっ。シズナちゃんはね、特殊なまひょう――魔法(まほー)を使ったんだよーっ」
「侵入防止の結界を破る魔法があるがぜよ! 名前は…………兎にも角にみょっ、それがあれば朝飯前なが!」
「…………シズナ。そうなの?」
「うーん。そうね」

 魔法使い魔王ちゃんは、肯定した。が、だ。苦笑いを浮かべております。

「…………シズナ。事実を語ったら、あとで5回怒ってあげるよ?」
「そんな魔法はどこにもないの。『角族』はかなり自惚れていて、侵入防止の結界は触れただけで弾け飛んだわ」

 ふーん。タッチで消滅か。

「それに『戦場空間』を解いて逃げられると面倒だから、私が魔法で空間を乗っ取り展開者になっていたの。なので仮に――そのあとで桁外れに強力な結界が張られたとしても、仲間であるレミアさん達なら簡単に入れるわよ」

 この人が解除したから、怪訝に思ってたんだよね。ああできたのは、これがあったからなんだな。

「…………レミアにフュル、キミらは嘘を吐いてる。アンタ達は、入り込もうとしてなかったでしょ?」
「……にゅむ……」「仰る通りぜよ……」
「そうかそうか。俺らが戻る直前まで、貴様達は何をやっていたんだ?」
「眠ってました……」「夢の中にいたぜよ……」

 ほぉぉ。魔王と勇者は、敵が来たのに寝ていたのか。
 ……俺があの時命令をしたら、速攻来れてたんだなぁ……。

「ついさっき起きたら、『戦場空間』とシズナちゃんの気配があったんだけど……。動こーとしたら、空間(くーかん)さんが解除されちゃってねー……」
「こりゃ出遅れた、マズイぜよ。そう思って、苦戦したフリをしてたがよ……っ」

 ガバッ×2。魔王と勇者が地面に両膝をつき、砂にオデコをつける。

「ゴメンナサイゆーせー君っ。猛省(もーせー)してるから許してっ」
「えろうすまざった! 不眠不休で、普段より眠たくなっちょったがよっ! 同じ過ちは起こさんき、堪忍してつかぁさいっっ!」

 額をゴリゴリこすり付け、全力で土下座。全次元最強の2人が、とっても謝っている。

「従兄くん、私からもお願いするわ。大目に見てあげて頂戴」
「もとより、そうするつもりだよ。ちゃんと反省している人を叱っても、意味はないからね」

 叱るってのは、反省を促す行動だ。俺の溜飲を下げられるってメリットはあるんだけれども、こんな子達に吠えるのは可哀想だよね。

「にゅむむーっ! ゆーせー君ありがとーっ」
「深謝ぜよっ。大岡裁きぜよ!」

 魔王と勇者は感謝感激でお馴染みの感泣をし、2人とも俺の胸に顔を埋める。更にそれと同時に公園の前を通りかかったお喋りマダムが『たらし!? 色紙君って女たらしなの!?』と勘違いしまくっていたが、気にしないようにしました。人の噂も七十五日ですから。
 多分。

「ふふっ、いい光景だわ。二人も、従兄くんが大好きなのね?」
「にゅむっ。好きだよーっ」
「師匠は、尊敬に値する御方っ。とても好いてるぜよ!」

 2人は声を弾ませ、力強く頷く。
 へー、すっげーな。コイツらの間だと、従兄くんで通じるんだ。

「そんなゆーせー君が死んじゃったら、とっても辛かったよー。シズナちゃん、助かりましたっ」
「ついさっき、発動ワードのミスに気付いたきね。ヒヤッとしたがよ」
「やっぱ、あれはミスか。歩きながら考えてて、俺もそう思ってたんだよ」

 例の、メモ用紙。誤字脱字がHPを削るメモ用紙を広げ、《壁起動ぜよ!》の文字をなぞる。

「喋っても害はないみたいだから、お尋ねするね。これは、《『壁起動』、ぜよ!》なんでしょ?」

 こういうのは、よくある失敗だ。弩級の龍馬オタクでも、呪文に土佐弁は組み込まないよね。

「師匠、違うぜよ。誤りはそこじゃないが」

 へ? ちが、う?
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登場人物紹介

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

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