第8話女子高生 真希

文字数 1,109文字

午後3時、女子高生の真希が一人で入って来て、飛鳥の前に座った。

飛鳥は、いつものふんわりとした笑顔。
「いらっしゃいませ、真希ちゃん」

真希は、顔をポッと赤くする。
「どうしても、飛鳥さんを独占したくて」
「この前は、華奈がいい思いをしたから」

飛鳥は、真希の前に、香りつきの冷水を置く。
真希は、「うふ・・・」と一口、目を輝かせる。
「リンゴ?さわやか・・・」

飛鳥は、BGMをケルト風オルゴールサウンドに変える。
店の雰囲気が、愛くるしいような、ファンタジックなものに変わる。

真希は、ますます「うふふ」の顔。
「私って、こんな可愛いイメージなの?」
飛鳥は、軽くウィンク。
「妖精さんみたい、真希ちゃんは」

真希は、顔が真っ赤、胸をおさえる。
「うれしい・・・幸せ・・・」

飛鳥は、ホイップクリームをたっぷり乗せたココアを真希の前に置く。
そのホイップクリームには、シナモンがほんのりかかっている。

真希は、ますます、「魅了された」顔。
「うわ・・・おしゃれだ・・・」
「飛鳥さん・・・」
「うれしくて涙が出てくる」

真希がココアを飲みはじめると、キッチンから香苗が顔を出した。
「はい、パウンドケーキ」
「中身はレーズンとリンゴを煮詰めたもの」

真希は、香苗のパウンドケーキを一口。
「これも・・・絶品・・・幸せ・・・」
「香りがいいいなあ、ワクワクします」

飛鳥は話題を変えた。
「真希ちゃん、文学部志望だったかな」
真希が頷くと、一冊の本を真希の前に。
式子内親王の歌を解説した本だった。

真希は、さっそくページをめくる。
「あまつ風 氷をわたる 冬の夜の 乙女の袖を みがく月かげ」

歌の下に解説があった。
「冬の五節の舞の夜、内裏の中は、氷のような冷たい風が吹き抜けている」
「舞姫の袖には月影がキラキラと輝いている」
                      
真希は、ブツブツとつぶやく。
「内裏・・・冬の夜の五節の舞・・・若く美しい舞姫」
「氷のような冷たい風が吹いていて・・・色あでやかな衣装の舞姫」
「その袖にキラキラとした月が映る?」
「これは・・・冬の美しさの・・・最高の一つかな・・・キラキラして」
「胸をはずませた可愛い女の子たちの、息づかいも・・・」

飛鳥は、やさしい顔。
「勉強の合間に」
「受験のためだけの勉強も、味気ない」
「その歌を自分で、真希ちゃんの言葉で現代語訳してみるのも、また面白いかな」

真希の目が輝いた。
「上手にできたら、飛鳥さんに見せに来ます」
「うん、絶対に来ます」
「ご覚悟を!」

真希は、香苗から「明日、お友達と」と、大量の特製のココアクッキーをお土産にもらった。
「また、飛鳥様ファンが増えるなあ・・・でも、一人で食べると太る」
と言いながら、帰って行った。
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