第4話(12)

エピソード文字数 4,366文字

「にゅむっ、『占いチャンネル』やってる! しかももーすぐあたしの占いだから、少し見させてねーっ」

 高級ホテル・ベロサイユに着くなり、レミアがロビーにある大型テレビに走る。外見は冷徹な女王様なのに、相変わらず中身はお子ちゃまだ。

「ほお、レミア先生は運が良いにゃぁ。自分の放送が近いなんて、滅多にないぜよ」
「え、なんで? 占いってそんなにパターンないでしょ」

 星座だと基本12、血液型だと基本4。誕生日ごとのやつでも、366しかないぞ。

「この占いチャンネルは占い専門のCSチャンネルで、とても細かい占いをするのよ。ほら、あんな風にね」


《お次は、7月28日生まれのA型、の女子の、16歳で、長女で3人家族の方です!》


 どえらい細かい。大勢に発信されているのに、個別に占ってもらった感覚になるわ。

「これくらいしないと、占いの結果が他の人と被ってしまうんですって。その甲斐あって占いチャンネルの的中率は、99・9999999999%よ」
「それもうほぼ的中じゃんか!」

 ハズレる確率は、0・0000000001%――1000000000000回に1回。占いじゃなくて予言だぞ。

「にゅむむー、あたしは7月29日生まれの6人家族の長女(ちょーじょ)だから、あとちょっとだー。あっとすっこしっ、あっとすっこしっ」

 魔王様が、小躍りしながら待つこと暫し。ついに発表の時となった。

「いよいよぜよ。どうなっちゅうがやろうね?」


《明日は、オーラがとても不安定な日です。幸福と不幸のオーラが複雑に絡み合い、不定期に幸運と不幸のどちらか、あるいは両方が訪れるでしょう》


「にゅむー……。そーなのかー」
「レミアさん、明日はそういう日なのね。難しい日になりそうだわ」
「いやいやいやいや、それは年中そうだからね!? 人生ってそういうモンだからね!?

 この占い、的中率を上げるために当たり障りのないことを言ってる! 占いの風上にも置けんぞっ。

「従兄くん、この占いは深いわ。実に深い」
「師匠の誕生日は、三日後の八月一日。チェックしていくぜよっ」
「断る。チェックインしますよ」

 こいつは当てにならない。貴重な時間をこんな茶番に使えるかっての。

「ほら、レミアもシズナも。フロントに行くよ――」
「今ホテルに入られたという事は、魔王使いチーム様ですよね? 少々お時間をよろしいでしょうか」

 突如声が聞こえ身を翻すと、執事服を着た品の良い御老人が――いや、それだけじゃない。その隣には赤いチャイナ服姿の、色っぽいお姉さんも立っていた。
 どちらも見掛けは俺らと同じ『人』だが、彼らの光彩は白金。異世界の生物だ。

「別に、構いませんが……。どちら様っスか?」
「申し遅れました。わたくしは決勝戦に残ったチームのリーダーである、神蔵王器(かみくらおうき)様の執事、支下健造(ささしたけんぞう)でございます」
「アタシは王器様の第一従者、魅条魅里(みじょうみさと)です。以後お見知りおきを」

 二人は教科書通りの、綺麗なお辞儀をしてくれる。
 うわぁぁ。久し振りに、まともな人に出会えたよぉ。

「先生らぁは、対戦チームの人かえ。ワシらに何用なが?」
「…………周りには、誰もいませんね。支下さん、ここでお伝えしましょう」
「そうですね。それがいいでしょう」

 お二人は頷き合い、俺を見つめる。
 人目を気にする、話題か。なんなんだろ?

「魔王使いチームの、リーダー様。不躾だと、わたくし共は重々承知しております」
「ですが、お願いさせて頂きます。明日の決勝は、アタシ達のお願いする通りに戦ってくださらないでしょうか?」

 懇願を超える程の、夥しい願いの念が宿った視線。執事さんと従者さんは、揃ってソレを送ってきた。

「……実を言いますと、アタシ達の目的は『優勝』ではないのです。我々がこの戦いに参加したのは、王器様を覚醒させる為なのですよ」
「覚醒? なんでまた」
「それは、ですね……。皆様は、『白金族(しろがねぞく)』をご存知でしょうか?」

 俺は、無論ない。そこで三人を見やると、シズナは知識があるようだった。

「『遠見』で視覚の旅をしていた時に、その一族が住む星を見ました。私の記憶が正しければ、争いを嫌う温厚な民族でしたね」
「左様でございます。犯罪件数は1000年間0で、万引きすら発生しない平和な星なのですよ」

 支下さんは誇らしげに語り、「ですが……」が顔を暗くする。

「白金星は資源が豊かな為、常に侵略の危険に晒されております。昔はそこまで多くはなかったのですが、今では一か月に一回は大軍が押し寄せてくるのですよ」
「アタシたち白金族は戦闘力が高い為、毎回撃退できていました。しかしながら先月の戦いで、『十一勇士(じゅういちゆうし)』――一族の中で特に強い十一人が、全治二か月前後の重傷を負ってしまったのです」

 全治、2。それだと、次で落とされてしまう。

「そこでわたくし執事と四人の従者は、坊ちゃま――王器様に眠る、王の力を頼る事にしました。その力『白金化(しろがねか)』を使えば一騎当千の猛者となり、お独りで一万人の敵を葬れるのです」
「けれど『白金化』を自然に行えるようになるのは20歳からで、現在16の王器様は不可能。そこで密かに、別の方法で目覚めさせようとしているのですよ」

 ふむふむ。だから、二人だけで来てるのか。

「年齢以外で使用できるようになるには、自分が窮地に陥って精神に著しいストレスがかかり、なおかつ『どうしても仲間を助けたい』という強い思いが要るのです。そこで皆様に坊ちゃまがショックを受けるような戦い方をして貰い、覚醒の手助けをして頂きたいのですよ」
「勿論、他意はございません。優勝は差し上げます――といいますか、王器様が『白金化』をしても魔王使いチーム様には勝てません」

 こっちには、1人で何兆人も葬れるヤツが3人もいるんだもんね。結果は目に見えている。

「このように、貴方がたの優勝は揺るぎません。ですのでどうか、わたくし共に御力をお貸しください!」
「好転しないと、アタシ達の星は支配されてしまいます……。どうかご協力をお願い致しますっ!」

 支下さんと魅条さんは拝み込み、深く深く背中を曲げた。

「皆様っ。わたくし共ができることであれば、何でもお礼を致しますっ」
「ですからどうかっ。どうか、お願い致します……っ」
「お二人とも、お顔を上げてください。私達は、無報酬で手を貸しますよ」
「ぇ……。貴方様の一存で決めても、よろしいのですか?」

 執事さんは、目を丸くする。
 発言したのは、シズナ。即ち非リーダーなのだから、そう感じちゃうよね。

「支下先生。これは、一存じゃないがよ」
「にゅむっ。ゆーせー君はそんな人を放(ほー)っておけない人で、お返事は決まってるんだよー」

 その通り。いい人がピンチになってるなら、助けるしかないよね。

「私達のトップは、通常の人格の時はそういう人なのです。よろこんでお引き受けしますよ」
「「あっ、ありがとうございます! ありがとうございますっ!」」
「いえいえ。困った時はお互い様っスよ」

 自分達も、親切にされた経験は多々ある。それにこちらは大して苦労しないんだから、そこまで感謝して貰わなくてもよいのだ。

「にゅむむー。ゆーせー君って、いっつも優しいねー」
「本当に、そうね。従兄くんは実の従兄だけど、段々好意を抑えられなくなってきたわ……」
「おいバカ女! さらっと捏造するんじゃねーよっ!」

 俺とお前は、親族ではない。それに、「んぁあっ。こういう怒り方をする従兄くん、好き……!」好意は少しも抑えられていないだろ。

「師匠は、とてもつもなく出来た人間ぜよ。坂本龍馬先生と勝先生張りに偉大やにゃぁ」
「わたくしは、そのお二人の足元にも及びません。フュル、二度と喩えにするんじゃないぞ」

 二人と肩を並べちゃったら、坂本龍馬&勝海舟ファンに殺される。そういうの、マジでヤメテ。

「勝先生! 評価は自分がするモンじゃない、社会や周りがするモンやきね!」

 これも、龍馬さんは言っていない。その時分は『社会』とか使わないから、ソレを口にしたのは現代人だろ。

「は~ぁ、まったく。いつもいつも賑々しいヤツだなぁ」

 俺は苦笑し、結構放置してしまいましたからね。ここで執事さん達に目を向ける。

「脱線してスンマセン。それで『お願いする通りに戦って』と仰ってましたけど、具体的にはどのようにすればいいんですか?」

 これ、とっても重要。きちんと聞いておかないと、ウチのおバカがトチるのである。

「元々決勝戦で負けるつもりでしたから、台本を御用意しています。あとでアタシと支下さんがお部屋にお持ちしますので、お目を通してください」
「わたくし共は、『スイートルーム ペロンチョの間』におります。内線を使えばいつでも繋がりますので、落ち着きましたらお電話ください」

 お二人はそのように告げ、本を準備するため一足先にお部屋へゴー。帰り際に窺えた両者の安堵した顔は、見ていて気持ち良かったです。

「にゅむっ、とっても喜んでたねー。あーゆーお顔を見ると、こっちもハッピーになるよっ」
「それは同感ながよ。人助けは不思議なもんで、自分の心も豊かになるにゃぁ」
「こらこらレミアさんフュルさん、まだ成功していないのよ? そういうのは、きちんと終わってからにしましょ」

 シズナがクスッと笑い、悪戯っぽく右目を瞑る。
 不思議といえば、これもそうだ。コイツがまともなことを言うと、スゴイことに感じるから不思議。

「従兄くん、大成功を収める為にはシナリオを読まないとね。チェックインして、部屋に持ってきて貰いましょ」
「だね。行きますか――」


《お次は、8月1日生まれのB型、の男子で、16歳の、3人家族の長男の方です》


「にゃむっ、ゆーせー君のだ! 見てこ見てこっ」
「折角だからチェックしていくぜよ。運勢先生を知得するがよ!」

 二人に両腕をガッシリ掴まれ、身動きが取れなくなる。
 しゃーない。守りに入りまくりの占いに付き合いますか。

《明日の運勢は》
「はいよー。なんざんすか?」


《頼まれ事に、要注意。引き受けた事をやってしまうと、最悪死に至ります! 明日そういう用事があるのなら、今日のうちにキャンセルしておきましょう》


 俺の時だけ、事細かに語られた。
 あ、あれ? 別の番組に切り替わってた、のかな?
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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