第1話
文字数 1,636文字
かつて俺は子供が嫌いな大人だった。
正確には「子供をちゃんと育てない親が嫌い」だったのだが、それでも蹴り殺してくれようかという子供が何人も俺の前を通り過ぎて行った。
今は子供と接するのがホント楽しい。
そんな俺の「子供嫌い」をブッ壊してくれた女性の話。
4~5年前になるだろか?
俺の働く店にやってきた奥様。旦那さんへのプレゼントをお探しだそうだ。その買い物に付いてきた娘さん。この子との出会いは衝撃であった。
当時で4歳か5歳かそれくらい。
子供とはいえ女の子だからかけっこう喋れるようで、暇そうにお母さんに付いてくるその子に話し掛けてみた。
「君何歳?」
「へえー、じゃあ君は幼稚園とか行ってんの?」
「お母さんこう言ってるけど君はどう思う?」
こんなやりとりをしばらく続けていたらその子は言った。
「キミじゃないよ、ひよりだよ。あたしはひより!佐々木ひより!」
俺「あ、そうなんだ…ゴメン知らんかったからさ。じゃあひよりちゃんて呼べばいいんかな?」
ひ「そうだよ」
なかなかのマセガキである。不思議なものでもっと喋ってみたいという気になった。ふと、彼女の持っているおもちゃが気になったので話し掛けてみた。
俺「なんか面白そうなおもちゃ持ってんね」
ひ「そう。これマックでもらってん」
俺「ああ、ハッピーセットな。ひよりちゃんマック好きなん?」
ひ「うん、ひよりマック大好き!大きくなったらな、ひよりマックで働こうと思てんの」
俺「ああーいいんじゃない?マックだったら高校生から雇ってくれるもんね」
ひ「高校生は勉強しなきゃダメでしょ!大人になってから働くの!!」
俺「そうかゴメン、そらそうだわな。学生の内はちゃんと勉強せんとな」
ひ「そうだよ、仕事は大人になってからだよ」
俺「そらそうだ、じゃあひよりちゃんはマックの正社員を目指すってことね。マックいいんじゃない?俺もたまに行くし」
ひ「そうなん!おにいさんもマック行くん?!」
俺「うん。太っちゃうからたまにだけどさ、あの23号のゲオの隣のとことか行くよ」
ひ「ひよりのウチとめっちゃ近~い!どこのマックで働くか迷ってたけど、おにいさんも来るならひよりもうあそこに決めたわ!」
俺「いいのそんなんで決めて!?そんならひよりちゃんが働くようになったら食べに行くからな」
ひ「うん!じゃあおにいさんが来たら、ひよりがおいしいハンバーガー作ってあげる」
なんだこの子。カワイイな。
今までいろんな子供を見てきたが、今までは産まれなかった感情だ。
その日、ひよりちゃんは「フード部分に目が付いた緑のパーカー」を着ていた。
フードを頭に被ったひよりちゃんは俺とは離れた場所に行ってしまっていたので、もっと話したくて近くに来て欲しくて、改めて声を掛けた。
俺「あれ!あすこにいるの誰かと思ったらひよりちゃんじゃん!!あーびっくりした、俺ぁてっきりカエルがいるのかと思ったらひよりちゃんだ!」
俺の声に気付いたひよりちゃんは満面の笑みで、俺との距離5メートルを全力で俺のところまで走ってきてくれた。
立ってる俺に抱き着いて来るひよりちゃん。彼女の頭は俺のヒザ程の高さしかない。
抱き着いたヒザの位置から俺を見上げて彼女は言った。
「ケロケロ♡」
かわいいいぃぃ!!!
かわいすぎて立っていられなくなったのは初めての経験だった。
崩れ落ちた俺はヒザでしか立っていられなくなり、さっきより近くなったひよりちゃんを思わず抱き締めてしまった。「ひよりちゃんカワイイいぃ!!」
あの日から幾年月。
考えてみれば、あのひよりちゃんも今はきっと小学校の高学年。
もう一度逢えるなら、高学年のひよりちゃんにお礼を言いたい。
「君が俺の人生を拡げてくれたんだよ」って。
彼女はきっと言うだろう。
「君じゃなくてひより!なぁおにいさん、しばらく見んうちにおにいさんちゅうかもうおじさんやな」
ケロケロ…イヤ違った。
ちゃんちゃん、だ。
正確には「子供をちゃんと育てない親が嫌い」だったのだが、それでも蹴り殺してくれようかという子供が何人も俺の前を通り過ぎて行った。
今は子供と接するのがホント楽しい。
そんな俺の「子供嫌い」をブッ壊してくれた女性の話。
4~5年前になるだろか?
俺の働く店にやってきた奥様。旦那さんへのプレゼントをお探しだそうだ。その買い物に付いてきた娘さん。この子との出会いは衝撃であった。
当時で4歳か5歳かそれくらい。
子供とはいえ女の子だからかけっこう喋れるようで、暇そうにお母さんに付いてくるその子に話し掛けてみた。
「君何歳?」
「へえー、じゃあ君は幼稚園とか行ってんの?」
「お母さんこう言ってるけど君はどう思う?」
こんなやりとりをしばらく続けていたらその子は言った。
「キミじゃないよ、ひよりだよ。あたしはひより!佐々木ひより!」
俺「あ、そうなんだ…ゴメン知らんかったからさ。じゃあひよりちゃんて呼べばいいんかな?」
ひ「そうだよ」
なかなかのマセガキである。不思議なものでもっと喋ってみたいという気になった。ふと、彼女の持っているおもちゃが気になったので話し掛けてみた。
俺「なんか面白そうなおもちゃ持ってんね」
ひ「そう。これマックでもらってん」
俺「ああ、ハッピーセットな。ひよりちゃんマック好きなん?」
ひ「うん、ひよりマック大好き!大きくなったらな、ひよりマックで働こうと思てんの」
俺「ああーいいんじゃない?マックだったら高校生から雇ってくれるもんね」
ひ「高校生は勉強しなきゃダメでしょ!大人になってから働くの!!」
俺「そうかゴメン、そらそうだわな。学生の内はちゃんと勉強せんとな」
ひ「そうだよ、仕事は大人になってからだよ」
俺「そらそうだ、じゃあひよりちゃんはマックの正社員を目指すってことね。マックいいんじゃない?俺もたまに行くし」
ひ「そうなん!おにいさんもマック行くん?!」
俺「うん。太っちゃうからたまにだけどさ、あの23号のゲオの隣のとことか行くよ」
ひ「ひよりのウチとめっちゃ近~い!どこのマックで働くか迷ってたけど、おにいさんも来るならひよりもうあそこに決めたわ!」
俺「いいのそんなんで決めて!?そんならひよりちゃんが働くようになったら食べに行くからな」
ひ「うん!じゃあおにいさんが来たら、ひよりがおいしいハンバーガー作ってあげる」
なんだこの子。カワイイな。
今までいろんな子供を見てきたが、今までは産まれなかった感情だ。
その日、ひよりちゃんは「フード部分に目が付いた緑のパーカー」を着ていた。
フードを頭に被ったひよりちゃんは俺とは離れた場所に行ってしまっていたので、もっと話したくて近くに来て欲しくて、改めて声を掛けた。
俺「あれ!あすこにいるの誰かと思ったらひよりちゃんじゃん!!あーびっくりした、俺ぁてっきりカエルがいるのかと思ったらひよりちゃんだ!」
俺の声に気付いたひよりちゃんは満面の笑みで、俺との距離5メートルを全力で俺のところまで走ってきてくれた。
立ってる俺に抱き着いて来るひよりちゃん。彼女の頭は俺のヒザ程の高さしかない。
抱き着いたヒザの位置から俺を見上げて彼女は言った。
「ケロケロ♡」
かわいいいぃぃ!!!
かわいすぎて立っていられなくなったのは初めての経験だった。
崩れ落ちた俺はヒザでしか立っていられなくなり、さっきより近くなったひよりちゃんを思わず抱き締めてしまった。「ひよりちゃんカワイイいぃ!!」
あの日から幾年月。
考えてみれば、あのひよりちゃんも今はきっと小学校の高学年。
もう一度逢えるなら、高学年のひよりちゃんにお礼を言いたい。
「君が俺の人生を拡げてくれたんだよ」って。
彼女はきっと言うだろう。
「君じゃなくてひより!なぁおにいさん、しばらく見んうちにおにいさんちゅうかもうおじさんやな」
ケロケロ…イヤ違った。
ちゃんちゃん、だ。