第21話  黒澤を制するものは……

文字数 3,107文字

 

 ※


 放課後。いつものように聖奈が先に帰ると、クラスの面々も続々と教室から出て行くのであった。


 俺も平八さんにももまろを預かってもらってるので、俺も早く帰らねば。

いきましょっか

 美優ちゃんに声を掛けられると、一緒に帰らねばなるまい。

 この時ばかりは、先程までフレンドリーに話していた男子生徒の目が冷たいのは仕方がない。


 染谷くんがいると、この視線も分散されるんだが、俺一人になると全部俺に集中するからな。

いこっ。美優

 だが魔樹王子がお迎えに上がると、さっきまでの視線は感じなくなるのだった。


 三人で階段を降りて下駄箱までくると、魔樹の下駄箱から大量の手紙が落ちてくる。

 これには周りの人まで引きつる量であった。

あぁ……

 元気なく手紙を拾い上げる魔樹だった。

 周囲を見てみると、色んな方向から女の子がチラ見しているのが分かる。

はぁうう!

 今度は美優ちゃんが声を出すと、すぐさま向かう。すると魔樹と同じような手紙が辺りに散乱していた。


 二人とも何も言わずに靴を履きかえると、そのまま校門潜ったところで溜息を吐くのだった。

参ったな。こりゃ。すげー人気だ

 そこまで言うに留めた。その気持ちは分かる。

 俺だって、中学の頃に……そういう体験はしてきたから。


 おかげで下駄箱を開けるのが怖くなっちまったからな


困ったなほんとに
うにっ……
 魔樹の苦笑いに、美優ちゃんまでテンションダダ下がりだった。
何か対策しないとな

 だけどな……その対策ってどうすりゃいいのか思いつかないんだよな。人の好意をどうやって違う方向に向けさせるのか、そんな事を考えていると……


 後ろから黒澤。と声を掛けられる。

 女の子の声だったので振り返ると、米山さんが走ってこちらにやってくる。

黒澤。ちょっといい?
はい。どうしたんっすか?

 米山さんはチラチラとミユマキを伺うと、二人は空気を呼んだのか「じゃあ帰るね」と先に歩き出した。


 ん? ミユマキに用事じゃなくって俺?

悪いわね。私もこの後部活であんまり時間ないんだけど。

 そう言いながら歩き出した米山さんについて行く。

 

 第一体育館前まで来ると、その辺の連中は皆ユニフォームに着替えており、今から部活始まりますよ~って空気になっていた。

ねぇ。黒澤。今度さ、また皆で遊びに行かない?

さゆりんと、私の友達の愛美が来るんだけど。


え? 俺? ってか男は……俺一人?

あの、ま、魔樹は呼んでないの?

魔樹くんも呼んでもらってもいいわよ。
 横の柱からニョキっと生えてきた清原さんにビビってしまうと、米山さんが続ける。
女の子三人と黒澤だけのハーレムじゃないの。いいでしょ?
ちょ! お、俺がそんな……というか魔樹にも聞いてみますし。

今回はね。どちらでもいいの。

黒澤くんって普通に面白いし、それに魔樹くんとも仲いいしね。親睦を深めようというわけ。

 なんてこった。あのだんじりのはっちゃけぶりが良かったのだろうか。

 こんな風に蓮が女子に囲まれるとは、まったくの予想外である。


 そんな時、遠くから梶谷くんがこちらにやってくると、俺を発見するなりこちらに寄ってくる。

お。黒澤。何してんの?

つーかお前ら。黒澤を狙い出したわけ?

違うわよ。あんたは関係ないでしょ。

お~い黒澤。こいつらはやめとけ。ロクなやつじゃねーから。


そう言っておきながら、まゆちん好きだからね。梶ちゃん。

へ?
ちょっと! 何言い出すのよっ!

こらっ! どこでどーなってそう結論づけんだよ!

あ、誤解だ黒澤。こいつとの関係なんて全てフィクションだから。

じゃあ今度。黒澤と梶ちゃんと、私らとさゆりんでどう?

 3対2。これなら結構いいかも。

 できればもう一人男がいた方がいいんじゃね。


 西部はムリゲーだし、真鍋……高坂くん。う~む。

いやいや。そんなヒマねーよ。


もうすぐバスケの試合だし、気合い入れてやらねーと。

せっかくレギュラーになれたのに。

そうなの? やるじゃん!

まー梶ちゃんは一年からレギュラーになれると思ったけど。

お前も柔道頑張れよ。愛美だって高一でも通用するだろ。

まゆこ。お前だって遊ぶヒマあんのかよ。練習しろよ練習。

 おおっ。何だか梶谷くんが格好良くみえる。

 確か、梶谷君と米山さんがバスケ部で、清原さんは柔道なんですね。

じゃあな! 俺はさっさと練習して、インターハイでも行きますか。

黒澤もこいつらの相手しねー方がいいぞ!

 そういい残し、梶谷くんは体育館の中へ消えると、取り残された米山さんと清原さんがジトっとした目になってしまう。
遊びは遊び。別にいいじゃないのよね。

そりゃそうっすけど……米山さんや清原さんって試合とかやるの?

それなら、俺。応援しに行きますよ。


それこそ魔樹や美優ちゃんも呼んでいいし。

ほんと? 黒澤くん?
見に来てくれるの? そ、それなら部活頑張ろうかな。
 俺は二人にうんうんと頷くと、米山さんと清原さんが俺の手を持ち握手ブンブンしてくるのだった。
魔樹くんが応援してくれたら、私きっと覚醒するわっ!

あっ! やばっ。先生来た。

まゆ。着替えよっ!

じゃあね。遊びの件も考えててよ! じゃあよろしくっ!

 二人が体育館の中に入って行くのを見届けると、俺は一人グラウンドの端っこを歩いてゆく。


 遊びに誘われるのは非常にありがたいけど、俺には色々と縛りがあるからなぁ……

 などと考えながら、校門を潜ろうとすると、急に西部の声が聞こえてきた。

く~ろっさわ。

お前。米山とか清原と何してたんだよ。

もうっ! そんな風に言っちゃダメだって。

なぁ黒澤。ちょっと駅前のマグマグでも行かね?

あ~~ごめん。ちょっと急いで帰らないといけなくって。

 早く家に帰ってももまろを見なければ。

 行きたいところではあるが、リミットもさっき来たし……断るしかない。

なんだてめー。米山や清原の用事は受けるっつーのに「

西部っ! 落ち着けよっ!

すまん。マジで時間が無くて……

 俺は放課後遊べない。


 入れ替わり体質の欠点であり、これは俺が一番キレたくなるシチュエーションなのだ。

このシチュエーションだけは、マジで納得いかない。

リミットのせいで……俺は今まで……どれだけ苦労したか、考えればキリがない。

まぁいいじゃん。今度また行こうぜ。

お前にも是非ともアイドルプリンセスの魅力を伝授してやろうと思ってただけだから。


お前とつるんでたら、女子生徒とも仲良くやれるし、おっぱい職人の知り合いだし、良い事ばかりだからな。

 それが西部の本音だろ。

 他の奴らもよく分からんが……


 それでも俺に声を掛けてくれるのは本当に嬉しかった。

 そんな時、校門の前に黒塗りの高級車が止まる。

 その場にいた生徒達は何事かと注目すると、運転席から出てきたのは平八さんであった。

すみません。遅くなっちゃって……

いえいえ。お気になさらず。

お時間がございませんでしたので、よろしくお願いしますぞ。

 ももとまろを受け取り、リードを手渡される。

じゃあね。蓮。

凛ちゃんが家で待ってるわよ

 助手席に座る聖奈が手を振ってくれると、なぜかその場にいた男子生徒全員が手を振るという事態になっていた。

美神さん。スーツ着てたね。カッコイイし。

同じ年とは思えねーくらい大人びてたぞ。

マジでボス神さんだわ。

やはり黒澤とは友好的に接しなければならんな。


黒澤を制するものは……高校生活がハッピーになること間違いなしだ。

なんでだよ!

あとは、お前におっぱい職人を紹介してもらうだけでOKだ。

あ~~~どんな人なのだろうか。めっさ楽しみだぜ。

そのおっぱい職人は、今さっき、いたんだけどな。


 さぁ帰ろう。凛も待っているというし、ももまろがはしゃいで止まらん。

――――――――――――――――



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介


 ★登場人物でも若干のネタバレを含みます。第一部からお読みいただきますようよろしくです。

 ★逆に第二部の登場人物を先に読んでから、第一部をお読み頂きますと、別の意味で楽しめます。

 

 ★読者視点は神視点。登場人物の心の声も聞こえます。(フキダシの色がこの色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年

 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 自分自身の事よりも、仲間の為ならば凄まじく有能になる。

 ★ 白峰楓蓮 しらみね かれん


 蓮の女性の姿。類稀なる美少女だが本人にはあまり自覚がない。


 外部には黒澤家の親戚(蓮の姉)となっている。

 楓蓮では世間との関わりあいを最小限にしてきたが、徐々に一人の女性として目覚め始める。

 

 自分を理解してくれる人間が増えるたびに楓蓮は飛躍的に成長してゆく。  

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生

 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。

 

 二部中盤で凛オンリーの章があります

★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは黒澤家の秘密を知るものだけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。

★ 黒澤 玲斗 くろさわ れいと

★ 白峰 麗華 しらみね れいか


蓮や凛のお父さん。ただいま遠方で仕事中。

麻莉奈や平八。ティナとは大親友。


後半から再び登場します

★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。

 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。


 高校当初から蓮と関わりを持ち、お互いに影響されてゆく。無二の親友?

 記憶喪失だったが、徐々に昔の事を思い出してゆく。


 二人目の主人公。

★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲

 おっぱい職人。ツイッタのフォロワーは10万以上の有名人。

 作中でも最強だと言われるが……

★ 白竹 美優 しらたけ みゆう

 

 男女入れ替わり体質

 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。とても内気で、語尾が変になる。

 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は魔優と入れ替わっている

 歌が上手く、全国でも有名な絵師でもある。(エロ同人が本業)

 

 三人目の主人公。 

★白竹 美樹 しらたけ みき


 白竹美優の男性の姿。

 外部では白竹魔樹と名乗っているので、彼を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で厨房担当したり、サイクルの都合上、学校でも魔樹として振舞う。

 男の子の身体で遊ぶのが大好き

★白竹 魔優 しらたけ まゆう


 男女入れ替わり体質。

 外部では白竹美優と名乗っているので、彼女を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で接客担当。サイクルの都合上、学校でも美優として振舞う。

 心の中は女の子なので、こちらが真の姿となる。

 四人目の主人公

★白竹 魔樹 しらたけ まき


 魔優の男の姿。外部に知られているのは魔樹である。

 蓮の隣のクラスで、常にクール。成績も良く、空手や合気道を習得。

 学校内では魔樹王子と呼ばれるほどモテる。


 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は美優と入れ替わっている

 乙女ゲー大好きのツンデレ。

★白竹 麻莉奈 しらたけ まりな


美優。魔優の母。入れ替わり体質。


とてもピアノが上手く、蓮はプロの犯行だと断定。

双子の母だけあり、とても美人だが色々とヤバい人。

男の姿は、でかい上にマッチョらしい。


★ じいじ


 白竹家のおじいさん。喫茶店のオーナー。

 小太りでツルっぱげ。チョビ髭が可愛い。

 厨房担当で楽しい事があると、その場でクルクル回りだす。

★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 男女入れ替わり体質。

 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的で、クラスでも人気がある。

 楓蓮に一目惚れし、ずっと彼女を追い求める。

 オムライサーでありポニテマニア。

 

 五人目の主人公

★山田 龍子 やまだ りゅうこ


 龍一の女性の姿。

 楓蓮を追って同じ喫茶店で働く事になる。全国でも有名な山田組の人間。

 ケンカが強く、蓮も認めるほど。

 楓蓮に近づく男を排除しようとする俺っ子。

★山田 虎子 やまだ とらこ


男女入れ替わり体質。龍一の弟(妹)

全国統一を夢見る女の子。既にチームを結成しており、チームヴァルハラと名づける。

口調はキツいが、兄弟には頭が上がらない。

デコトラならぬデコチャリで街中を暴走する。

★染谷 翔一 そめや しょういち 


男女入れ替わり体質。龍一の兄(姉)

龍一が恐れる唯一の兄貴。百人でかかっても勝てないらしい。

ただいま、新婚生活真っ最中。

★染谷 桜 (そめや さくら)


 翔一の奥さん。普通の人間。

 とても清楚で大人しそうな美人だが染谷三兄弟は彼女に対し頭が上がらない。

 翔一を女らしくする為、日々調教中。

★百済 紫苑 くだら しおん


 高校二年。軽音部。実家はソッチ系統の百済組。

 楓蓮達と一緒に喫茶店でバイトを始める。関西弁ちっくな喋り方だが、とても優しく後輩想い。

 蓮の同じクラスである、米山まゆこと、坂田沙織は小学校からの付き合い。

 マイブームはマジョリーナちゃん(ミニチュアダックス)を可愛がる事。

★坂田 沙織  さかた さおり


 高校一年。蓮と同じクラス。

 いつもニコニコ。おっとりとした口調でマイペース。

 紫苑と同じ軽音部。ベース担当。

 親が犬のブリーダーで楓蓮に二匹のダックスを譲る。

★ 西部

 蓮と同じクラス。

 事あるごとに蓮に絡んでくるが、その目的は聖奈や美優と接点が持ちたいが為である。

 ツイッター名では「モントゴメリー」。おっぱい職人を神と崇める。

★真鍋

 蓮と同じクラス。西部の友達。

 頭は良く、テストでも上位だが、彼もおっぱい職人を神と崇める。

 ツイッター名は「穴バースト」

★米山 まゆこ (だんじりバージョン)


 蓮と同じクラス。坂田とは昔からの親友で、紫苑は先輩に当たる。

 魔樹王子にベタ惚れてしまい、蓮に紹介してもらえるよう頼んだ。

 バスケ部所属。一年なのに相当の実力を持っている。

★ 三輪 加奈子 みわ かなこ

 

 蓮と同じクラス。坂田沙織の友達で幼稚園からの付き合い。

 男の子同士がホニャララするのが好き。

★ 清原 愛美 きよはら まなみ


 魔樹と同じクラス。米山まゆこと中学時代からの付き合い。

 ちなみに魔樹王子と呼び出したのはこの子。

★ 梶谷


 蓮と同じクラス。西部の友達で小学生からの付き合い。

 バスケ部所属。一年でレギュラー筆頭。

★高坂


蓮と同じクラス。梶谷の友達。

ギャルゲーのアイドルプリンセスをこよなく愛する男の子。

★ 鼻


楓蓮が命名。

その昔、蓮にケンカ売ってきたり、美優をナンパしたり、ろくでなし男であったが楓蓮や龍子にボコられる。だが楓蓮に鼻を治してもらったと勘違いしている。

楓蓮に殴られてから、とんでもなく優秀な男へ変貌する(だがケンカは弱い)

★ヴァルハラメンバー 


 只今メンバーは八人。

 虎子率いるチームヴァルハラメンバー。俗に言う不良だが、楓蓮。龍子。虎子には従順。

 実は全員イケメンレベルだが、とにかく頭も弱く、ケンカも弱い。

 NO表示されており、変なヤツが混じってます。 

 竜王 冴子 りゅうおう さえこ


 高校一年。西部曰く、彼女と美神聖奈。白竹美優を三大美女認定している。

 いつも笑顔。とても愛想が良い彼女だが……

 王二朗曰く、超危険人物。鞄にスタンガンを隠し持ち、女の子を襲うらしい

★ 播磨 王二朗 (はりま おうじろう)


 高校一年。竜王冴子と共に登場。190センチの巨漢であり極道顔。

 とてもじゃないが高校生には見えない容姿に、シルエット姿となっている。

 警官とエンカウントすると、ほぼ職務質問されてしまう。

 ゴリラのモノマネが神がかっている。

★竜王 将哉 りゅうおう しょうや


 萌ゴリと共に現れた男性。とてもイケメンだが萌にナンパーマンであると暴露されてしまう。萌は恋人だと告げるが……楓蓮は最初から将哉を警戒する。 

★稲坂 萌 いなさか もえ


 楓蓮が早朝マラソンに出かけた際に知り合った女性。

 巨漢で筋肉質なので、楓蓮は男だと勘違いするほど。

 とても気さくでしゃべりやすい印象を受けた萌ゴリ。ちなみにラッキースケベ体質。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色