#18 初めて"虹"が完成した日:事故現場で霊体を探す

文字数 2,223文字

時計の針が18時10分を差した頃、
葵、白華、朱珠の3人はトンネルの東口で、
如月警部と計画を立てていた。

如月警部
『事故は全てトンネルの東口から入った車が、
対向車線の車に突っ込む形で起きていて、
その全ての車が、このトンネルの東口から、
この先の信号を2つ越えた所にある
コンビニまでの道路を走っているんだよね。
だから、この事故が霊体の仕業だとすれば、
多分、周辺に霊体が潜んでいるハズなんだ。』

如月警部の話しを聞き終わると、
白華は葵の方を眺めながら口を開いた。

林藤 白華
『もし仮に霊体の仕業だとすれば、
最悪の事態を想定して、
誰かは、ここに残った方が良いよね?』

綾女 葵
『その方が良いかもしれないわね。』

不安そうな顔で葵に近寄る朱珠。

神原 朱珠
『私は、何したらええん?』

綾女 葵
『バラちゃんは、私と一緒に、
霊体がいないか探してちょうだい。』

不安そうな顔で、
『分かった。』と返事を返す朱珠。

そんな3人を眺めながら如月警部は、
『そうと決まれば、時間も迫って来たし、
僕達は、この辺りで見張りを立てようか。』
と先程とは違って、凛々しい顔をしていた。

林藤 白華
『そうですね。』

話しを終えると、
白華と如月警部がトンネルで待機をする中、
葵と朱珠は、
コンビニまでの道のりを歩き始めた。

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コンビニの方へ歩く、葵と朱珠。

神原 朱珠
『なあなあ、葵ちゃん。
1つ聞きたいねんけどな、
悪い霊体って、どんな感じなん?
私、学校で逢った霊体しか見た事無いから、
まだ、よう分かってへんねんな。』

綾女 葵
『そうね。
強いて特徴と言えば、
霊体を包んでいるオーラくらいかしら。
でも明白に自分の持つオーラを
放っている霊体はいないと思うわ。
"皆、隠しているのよ。
誰かに、そっと近付ける様に"ね。』

そう言うと葵は、
1m先にある歩行者信号の向かい側で
信号待ちをしている男性を指差した。

神原 朱珠
『あの人が、どないしたん?』

朱珠の問いに葵は静かな声で、
『バラちゃん、
念の為、球体を構えておいて。』
と言うと、葵は刀の柄を握りしめて、
信号の方へと走って行った。

すると信号の向こう側の男性は、
不気味な笑みを浮かべると、
歩行者信号が赤にも関わらず、
道路を横断し始めた。

神原 朱珠
『あかん! あかん!
おっちゃん! 何してんねん! 死ぬで!』

朱珠が大声で叫びながら
歩行者信号の方へ走って行くも、
男性は足を止めず、

そんな中、
一台のトラックがスピードを緩める事無く、
男性に突っ込んで行った。

どうやらトラックの運転手には、
男性の姿が見えていない様だ。

青ざめた表情で唾を飲み込む朱珠。
だがそのトラックは男性を貫通し、
男性は何事も無く歩き続けている。

神原 朱珠
『(嘘やろ! もしかして!
このおっちゃんが、この事件の黒幕なん?)』

葵が信号の手前で、
白と黒に彩られた球体を床に叩き付ける中、
男性は体から漆黒のオーラを放った後、
姿を眩ましてしまった。

どうやら、
トンネルの方へ向かって走って行った、
白い乗用車の運転手に憑依した様だ。

息を切らしながら朱珠が信号の方へ向かうと、
葵はスマホを取り出し、
白華に電話を掛けていた。

葵は電話を切ると、
息を切らした朱珠に向い、
『リンドウちゃんの方へ行くわよ!』
と言い、トンネルの方へと走り始めた。

朱珠は信号の前に立ち止まり、
『嘘やろ! また走るん!』
と息を切らしながら言った後、
葵と同じくトンネルの方へ向かい走り始めた。

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一方、葵の電話を受けた白華と如月警部は、
白と黒に彩られた球体を手に、
トンネルの前で立ち構えていた。

林藤 白華
『霊体が憑依したと思われる車の色は白色。
地名は○○、分類番号は○○、
ひらがなは、○。
一連指定番号は、○○ー○○。
リアガラスには、ベビーインカーの
ステッカーが貼られているとの事です。』

如月警部
『ベビーインカーのステッカーか。
時間帯といい、
今までの事故と一致する点が多いね。』

白華の話しを聞きながらメモを取る如月警部。

小さなショルダーバッグから、
白と黒に彩られた球体を手に取る白華。

林藤 白華
『出来れば、
話し合いで終わらせたかったんですけどね。』

白華は、静かに言葉を発した後、
『ターゲットを確認次第、
この球体を投げても良いんですね。』
と如月警部に尋ねた。

如月警部
『うん。 命に比べたら車の1台や2台くらい、
どうって事無いよ。』

そうこうしていると、
コンビニのある方角から、
白い乗用車が物凄いスピードで走って来た。

白華と如月警部は、
その異常なスピードに驚きながらも、
白華は慌てて手に握った球体を、
乗用車のフロントガラスに向かって
力強く投げ付けた。

乗用車は、その後もスピードを落とす事無く、
トンネルの中へと走って行った。

林藤 白華
『失敗した⁈』

如月警部
『車の前方から
霧が立つのは確認が出来たから、
多分、大丈夫だと思うよ!
それより、トンネルの中へ急ごう!』

林藤 白華
『そうですね!』

そう2人が話していると、
トンネルの中から
大きな衝突音が聞こえて来た。

白華と如月警部は、
その音の方へと慌てて向かって行った。

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トンネルの中では、
白い乗用車が対向車線上に飛び出し、
1台の乗用車に衝突した後、
衝突された乗用車の
後ろを走っていた乗用車が、
衝突された乗用車に突っ込んでおり、
3台の乗用車からは、炎が上がり始めていた。

白い乗用車が元々走っていた側の道路を、
2台の乗用車が通過した後、
2人は事故が起きた
対向車線側へと走って行ったのだった。
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