謎の球体

文字数 895文字

6月18日付福島民友新聞みんゆうNetサイトより。

【福島上空に「謎の球体」 十字の物ぶら下げ、高度2千メートル以上】

福島県北部や宮城県で17日、風船のような白い球体が浮かんでいると、福島地方気象台などに問い合わせが相次いだ。
警察などが調べたが、持ち主や目的は不明のまま。気象台の担当者は「気象庁の気象観測装置ではない。正体は不明だ」と困惑する。
球体が目撃されたのは本県北部の福島、伊達両市や新地町など。球体の下に十字の物をぶら下げ浮遊しているのが見つかった。
県警や陸上自衛隊福島駐屯地にも問い合わせがあったが、担当者は「(何の物体か)分からない」と話す。
宮城県警関係者によると、球体の高度は約2千メートル以上。国土交通省仙台空港事務所は、航空法に基づく飛行許可の申請は出ていないとした上で、「航空機の運航に影響はないが、注視する」としている。


5人の小学生はアイスを食べながら、何か面白いことないかなーとだべっていた。
1人が言った。

「チョウチョとかトンボってさ、たくさん集めて袋に入れたら袋ごと空を飛ぶかなあ」
「馬鹿かお前。んなわけないだろ」
「いや、わかんないよ。どうせヒマだし、やってみようよ」

小学生たちは手分けしてチョウチョとトンボを探した。初夏の田舎ではそれはいくらでも獲れた。スーパーの袋に合計200匹を超すチョウチョとトンボを入れ、口をしばった。

「単に糸で結んで飛ばすよりも、重りになるものを付けたほうが安定して良いってお父さんが言ってたよ」

知恵のついた1人が言った。そこで、アイスの棒で十字型の重りを作り、袋の口にアロンアルファでくっつけた。

小学生たちがタコ糸を探している間、袋の内部では、チョウチョとトンボが酸欠状態で喘いでいた。

「ああ、ああ、苦しい。助けてくれ。子供というのはどうしてこのような馬鹿で残酷なことを考えつくのだろう。この恨み晴らさでおくべきか。うぬっ」

彼らの怨念がMAXに達した刹那、それはエネルギーに変換され、重りのついたまま、ふあっと袋を浮かび上がらせた。

袋は空高く、どこまでも飛んで行った。


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