第29話フランス人女性シェフ アンヌ

文字数 853文字

営業再開2日目、初日より少し落ち着いた店の中で、奈緒は明るい顔で接客をこなす。
何よりも、昨日、多くの客の前で、飛鳥が紹介してくれて、「がんばって!」とか「すごく可愛い!」「お人形さんみたい!」と激励やら何やらを受けたことが、実にうれしい。
「これが京都なら、大変やもの」
「どこの生まれ?」
「親御さんは?」
「そんなことネホリハホリ、全部聞かれて、しおらしく答えなあかん」
「家に戻っても、あちこちにお礼の電話せなあかんし」
「それが、東京は、さっぱりしたもんや、その分、気合が入る」

さて、奈緒の思いはともかく、今日の飛鳥目当ての客は、近所のフランス料理店の女性シェフ、アンヌ。

午後2時半に、笑顔で入って来て、飛鳥の前に座った。
飛鳥も笑顔。
「アンヌさん、ようこそ」と、レモン水を、アンヌの前に置く。
アンヌは、ゴクゴクと飲み、
「素晴らしい水とレモンの風味」と、結局、もう一杯飲む。

飛鳥は次に赤ワインを置く。
「山地は・・・わかりますよね、普通のワインですが」
アンヌは香りで産地を把握。
うれしそうに口に含み、
「ありがとう、故郷ブルゴーニュのもの」
「落ち着く」

キッチンから香苗が顔を出した。
「お口に合うかな、指摘して」
と。これも香り高いポトフを置く。

アンヌは、また幸せそうな顔。
「さすが、香苗さん、母の味に近い、娘の頃を思い出す」
食欲も旺盛らしく、ほぼ完食。

そのアンヌは飛鳥に頼みごと。
「日本の、和風の味を教えて欲しいの」
「まだ日本食は詳しくなくて」
「日本のサラリーマンが好きそうな味」
「それも参考にしたいの」

飛鳥は少し考えた。
「蕎麦の名店もあるし、天ぷらの名店も、神保町にはいろいろ」
「ランチで干物を焼く店も人気」
「もちろん、丼物も捨てがたい」
「それと、昼は手早く、夜は居酒屋的なもの」

アンヌは手帳にメモをして、飛鳥をじっと見る。
「案内して欲しいな」
「飛鳥の君のおすすめに」

飛鳥は笑顔。
「また近い時期に」

驚く奈緒に、美鈴が耳打ち。
「慌てない、口だけなの」

にっこりと微笑むアンヌに、飛鳥は「神保町ランチマップ」を渡している。


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み