#2

文字数 1,283文字

俺はリメイクだ。最初の本物のーー否、最初かは分からない。本物のリメイクであって、偽物ではない。
ーーだからだろうか? 偽物が好きじゃない。

「それって、同族嫌悪じゃない? 」

いつの間にか強化硝子を隔てたあちら側に住み着いたハッカーが言ってきた。

「そうかもしれないな。ーーあぁ、何だ? 読心術かぁ? 」

「アンタの脳にはハッキングを掛けられる♪ 簡単簡単♪ 」

それもそういう仕様なのだが、ーーそれには気付かないのだろうか?

「ねぇ、アンタさ、ーーここってやけに、どこもかしこもハッキングし易いけど、ーーそれってさ、」

「態と? 」

「どうだろうなぁ? 」

最初の嘲笑をまたくれてやった。

「〜〜〜〜〜ッちゃあぁ〜〜〜、失敗した。ーー止めた。無理。この手の奴、手に負えない! 」

ハッカーは、両手に持っていた電子工具を投げ出して、身もその場に投げ出した。

「陽動はお嫌いな様ですね。」

まさにその様だ。エールの呟きの通りだった。

「勘弁してよ、時間もお金も費やしたのにさぁ〜〜〜、」

こっちは数人の命と引き換えている……。エールも同じ思考で同じ事を考えている。俺には分かる。勘ではないやつだ。

「何? ーーえ? 」

その場に仰向けに大の字になって怠けていたハッカーが急に飛び起きてこちらに寄ってきたーー勿論強化硝子板越しだ。

「ーー『数人の命と引き換えている』って何!? 」

退屈凌ぎにと、俺はハッカーにこれまでの経緯や犠牲を少しだけ話した。

エールをフリープログラム内に生み出した事、育成と調整を別の人間が行った事、そのどちらも死に、自らも命を絶った事ーー……。

「ーーえ゛? じゃあアンタは? 幽れーー地縛霊!? 」

「さぁ? どうだろうな? 」

エールの形や型は、更に昔、それこそ最初の俺の頃から、有っただろう……。俺はエールにもリメイクを施した。きっとそうだ。

「うわぁ〜〜〜、それにもお手上げ……。生きてる奴ならーーっていうか、生きてる奴から情報聞き出そうと蜘蛛の子散らすみたいにしても、ヒットしない訳だよ! 」

「それはお手数な手間だったなぁ〜。」

「無意味な! ね! 」

「自暴自棄になりかけているお前にもう一つ、お手上げか何かになりそうな面白い情報をくれてやろうか? 」

「……。何? 」

「俺は普段、自分でプログラムした仮の姿でいるんだがーー、素の姿、つまりは素になる様な姿もある。」

「興味は無いけどーー……。何かある? 」

「ああ。その姿が」

素の姿に戻っていくーー白い髪は褐色混じりの橙に、瞳は大きくブルーに……。今より若い頃の姿だ。

「お前に似ているんだ。」

「ーーげ。」

目の当たりにしたハッカーは、顔を青褪めさせた。

「それってあれ? ドッペルゲンガー的な? 」

「違うーーだろうな。」

「態々でも無い? 」

「ああ。作り話じゃあない。」

「ーーーー俺の父さん、ーー母さんも、死んでるんだ。」

「そうらしいな。」

「エールに聞いた? 」

「ああ。」

「態とだよ。俺もそれ。あとさ、エールのプログラムなんだけど、似た子がこっちにーー……。似てる子が居るんだ。これもアンタの仕業? 」

「ーーそれは、……。」

俺かあいつの仕業だな。
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