第7話

文字数 758文字

 古代文明の発掘。それは冒険者が暇な時にやる「博打」である。
 勝てば莫大な富と名声が手に入り、負ければその対価は自らと仲間たちの生命で支払われる。
 それでも冒険者たちは博打をやめない。

 ものの本によれば、貧困は余裕を奪う。余裕が無いから判断を誤る。判断を誤るから勝てない博打をして、さらに貧困を極めていく……。
 冒険者バカばっか、本人たちはそれを自ら笑い話にするが、遠くから見てみれば本当のバカ集団なのかもしれない。
 ……だが、博打は勝つことも稀にある。いまこの時、古代文明が発掘されていた。

「見てみろよオイ。この文字の並び方……今まで無かった並び方だぞ」
「こっちにもその字がある。新しい料理のレシピっぽいな……」
 真面目な顔をして「これは新発見のものだ」と言い合う冒険者2人組。
 斥候を務めた盗賊と、いざとなれば手元のランタンから炎を弾き飛ばすことが出来る精霊神の信者が見つけた、その文字列は……
 「ラーヌン」だった……。

 古代文明に詳しい学者が必死に文献を漁り、分析家は学者の文献で得られる点々とした情報のカケラを線で結ぶようにまとめ、料理の腕に長けた一流シェフが実際に調理する。
 ラーヌンの再現には3年の月日を要した。
 そして今、ラーヌンは皆の手元にある。
 ラーヌンを発掘した者たちは、その売上で今も悠々自適な暮らしをしているらしい。

 しかし、ラーヌンに関するまことしやかな噂話が流れているという。
 それは「ラーヌンという文字の書いた板は、落書きされただけのラーメン看板じゃねえかな」という内容らしい……

 ……そんな噂を知った上でも。
 冒険者たちにとって、ラーヌンはイースタリアきっての、験担ぎに良いとされた人気料理なのだ。
 俺たちが次の古代文明を発掘してみせる、という時の勝負メシ。
 それが、ラーヌンなのだ。
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