第2話

文字数 1,813文字

 一ヶ月で異世界の戦士は七割減った。
 理由は単純、内輪揉めだ。
 最初に動き出したアメリカチームが、全ての狩人達に連絡をした。

『地球連合を作ろう! その会議を行おう! 我々は地球人であり、それぞれの帰るべき場所へ戻る為に力を合わせよう!』と。

 日本チームの殆どはそれに同意し、参加したが、残りのヨーロッパや日本以外のアジアが拒否。
 これには数が多くて、そっちもそっちでの相当な内輪揉めが起きたと聞いている。ヨーロッパやアジアとはいっても肌の色や宗教が絡むときな臭くなるらしい。

 そして主に日本、スイス、アメリカの三カ国による地球連合が成立。リーダーはアメリカチームだ。そしてその地球連合の調べにより、他の国のチームが異世界人を対象として圧倒的な武力を背景にした『言葉にできない非道い行い』をしていたことが判明する。

 それに反感を持った一人が、有志を募り、地球連合・粛清部隊を設立。組織の暴走を止める役割と、無秩序な現状を改善するために味方殺しを行った。
 他の悪い奴らのせいで搖けなかった善良な者は地球連合へ合流した。

 意外だが、血で血を洗う戦い……みたいなことにはならなかった。
 『地球人の犯罪者は皆殺しにしたから死にたくなければルール守ってね』みたいな軽い感じで終わっていた。

 俺と羽田と吉田は、義勇兵として参加した。回ってきた仕事を簡単に言えば『非道い行いを受けた被害者達の保護とお世話』だ。

 それでも粛清行為に参加したので、他のチームが持っていた武器やアイテムをいくつか譲ってもらうことができた。その時は軽い気持ちでカウンセリングやミリタリーのドキュメント動画で知識があったことに感謝した。

 そして地球連合本部からリーダーとして派遣されたレオン・ロス・テルミッドを入れた四人で日本チーム『ヨコハマ』は結成された。

 俺は、軽ショット砲とパルスブレード、そして身を守るパルスアーマーと、超加速を可能にする高出力ブースターと高出力ジェネレーター戦闘機スタイル。

羽田は、飛行バイクとスタンランチャーグレネードと、重ショット砲。プラズマシールドとパルスアーマーを装備し、機動性を失う代わりに、高火力、足止め、防御を高めた戦艦スタイル。

吉田は、飛行バイクと多目的弾薬、更に機動性と光学熱源消音消臭迷彩でステルス性能を極限まで引き上げた支援車両スタイル。

 レオン・ロス・テルミッドは、最低限のパルスガンとパルスブレードだけで、後は広範囲レーダーや通信安定装置、戦域データリンクシステムなど司令塔に相応しい前線基地スタイルだった。


 奇襲、攻撃、支援、司令とバランスが良いチームで、地球連合の中でもトップクラスに強かった……と思う。

 そしてリーダーが地球連合本部へ、会議に参加するために離脱した後、地球連合本部から全ての生きている者達へ向けてメッセージが届けられた。

《これを聴いている地球連合の狩人の諸君、我々は敗北した。これからスライムを巻き込んで自爆する。だが我々地球人は生きて地球へ戻る為に、戦わなければならない。諸君、スライムを狩れ。この世から駆逐するのだ。二度目はない。後は、頼む》

 その日、大規模な地震と火柱が上がった。スライム・ハザードの本当の怖さを俺達は知らない。だが、通常の兵器を超越した兵器群を持つ地球連合本部が陥落ないし敗北した事実は重く、俺達の心は暗い気持ちに支配されつつあった。

「どうするよ、これから」

 それは返答を期待していない呟きに似た言葉だった。


「スライムを狩るしか無いと思うよ」
「吉田……お前、勝てると思うのか?」
「勝てる勝てないじゃなくて、やらないと死ぬよ。死にたくはないから戦うよ」

 それに羽田が賛成する。

「そーだな。こっちの世界は可愛い女の子多いし」
「性欲魔神め」
「おいおい、早漏くんは諦めも早いのか?」
「うっせ、俺はなぁ、早いけど絶倫なんだ。一度ヤッただけで終わらない男さ。どんな絶望がやってきても、何度だって立ち上がるんだ。それに……彼女欲しいし、セックスしたいし、愛されたい」
「だな」
「ふたりとも造物過ぎる……まともなの一人だけとか先が思いやられる」
「オイオイ、一番の狂人がなんか言ってるぜ」
「こんな絶望的な状況で、やるしかないからやるか、を真顔で言うやつが正気なわけ無いんだよなぁ!!」

 俺達はお互いを罵倒しつつ、励まし合いながら、肩を叩く。

「よし、日本チーム『ヨコハマ』、勝つぞ」
『おお!』
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