第5話

文字数 3,757文字

夜が明けて朝となった、平原に公爵を先頭に騎士の1隊が
セオー捜索のために歩いていた。
「おい、この辺りにいるのは本当だろうな?」
馬に乗りながら左後ろにいるらランクリーに聞く
アルフォース公爵、その顔は少し不機嫌な顔をしていた
「はい…馬車引きの話によれば見たと…」と返すランクリーに
嫌味を含めて言った。
「私は“お眠の時間”を犠牲にわざわざ一夜も
起きてたんだぞ…私に迷惑かけるな!」
「公爵様申し訳ありません…」とランクリーが謝ると
鼻をふんと鳴らして公爵は言った。
「お前ごときはいつでも騎士階級は剥奪できるんだぞ!。」
「…」と不満を抱きながらも表情を出さないランクリー
その様子を見てる2人は顔に不満が現れていた。
「どこまでも自分勝手な奴だな…」
「アレじゃ先生たち可哀想だよ…」するとこの声が聞こえたのか
公爵はこっちを向いた。
「おいそこの虫ケラども何か言ったか?」
「何!」とドルッグスは声を上げようとする所ルーシーは止めた
「いえ何もありません」
その言葉にふんと鼻を鳴らし前を向いた。
「私の元にいるカス共は本当使えないどころか、無駄口も多いな」
しばらく歩いてから彼らの元に廃墟が見えてきた。
「あの廃墟を調べろ!」と公爵が命令をし、フッドらはすぐに
廃墟の中を調べると、ラグとドンカツが地べたで寝転がっていた。
フッドとランクリーは
「起きろお前ら!」と大声で起こすと2人が飛び起きて
「‼︎お前らはあの時の‼︎」
「セオーはどこだ!やつをだせ‼︎」とランクリーは言った
「い…いても出さねえぜ‼︎」と構え始めたがすぐにランクリーはラグの腕を
掴み背を抑え込んだ。
「いだいいだい‼︎はなせ‼︎」その様子を見ていたドンカツはどびかかろうとしたら
フッドは剣を抜き彼の顔に剣先を向けた。
「案内しろ、やつの元に…」
ドンカツはたじろい完全に動けなくなった。
「場合によってはうど一本がなくなるぞ」と脅しのように言い放った。
するとラグが
「腕の一本くらいなんてこともねえよ‼︎俺らは兄貴に無事が一番だ‼︎」
と大声で言った。
覚悟を決めているとみなしたフッドは剣を振りかざしたその時。
「待て‼︎」と隣の部屋からセオーが出てきた。
「そいつらには手を出すな」
「兄貴…」とセオーの心配をする2人に対して彼は言った。
「大丈夫だ俺は死なねえよ」彼は素直に外へ出た。
彼はすぐにアルフォース公爵の目の前に出され2人は目を合わせた。
「セオー、クエイス王国の元王子よ、ずいぶん泥まみれになったこと」
蔑みを含めた笑みをする公爵に
「ふん、成り上がり貴族がでかい口を叩くな」と返した。
すると左右から彼の使いの兵士がセオーの腕を掴んで押さえた。
そして公爵は腰に下げた剣を抜き彼に近づいた。
「私の愛馬を斬り殺した罪を償わせるぞ‼︎」
公爵の顔は鬼の如く怒りに満ちた。
「何を言うと思えば“そんな事”か、前を横切った子供を
踏み潰そうとしてたのにか?」とセオーは笑みを浮かべた。
「ほざけ‼︎ゲスが‼︎」公爵は剣を大きく振った。
その時左の方から小さな人かげが現れて、公爵の剣を手に持っていた剣で
受け止めた。
「‼︎エレン!」フッドの声にハッと彼の方へ向くエレン。
「あ、フッド先生すみません、勝手に行動して…」と謝った。
「チビ助…」
「大丈夫だよ、すぐに助けるから…」と剣を構えながら言うエレン。
「おい虫ケラ、そこをどけ」と威圧的に公爵は言った。
その言葉に首を振って逆らうエレン。
「エレン‼︎こっちへ来い‼︎そのお方はアルフォース公爵様だぞ!」
「いやです!」
「エレン!」
「騎士は“本当に正しい人”の味方になる事、たとえ相手がどうであろうと
“悪いやつ”は必ず討つんだ‼︎」とエレンは言った。
その言葉に公爵の眉間がピクッとシワがよった。
「エレン‼︎もういい‼︎早く来い‼︎」
「今更遅いぞフッド‼︎、この虫ケラは私への不敬の罪で即座処刑だ‼︎」
と公爵は剣を構えた。
エレンもそれに答えて剣をしっかり構えた。
最初に動いたのは公爵だった、その剣撃はただの貴族のそれとは違った。
エレンは体勢を崩しかけた。
さらに公爵の滑らかな剣は3回も入った。
「私はその辺の貴族とは違う!、剣の腕は右に出るものはいない‼︎」
さらに剣先は真っ直ぐエレンに向かい、エレンはそれをガードしたが剣は
後ろに飛んだ。
エレンはひざをくじき敗北をした。
公爵はエレンの首に刃を近づかせ斬首の構えをした。
「所詮カスはどこまでもカスだよ」
「く…」と公爵を睨むエレン
「私の心に免じて慈悲を与えよう、最後の言葉だけ
言わせてやろう」と上からの目線で彼に言ったしかし…
「ない!」
「ほう〜、言う言葉も思い付かないほどの知能も無いのか?」
「“お前みたいな奴に言う言葉はない”という意味だ‼︎」
とエレンは言い放った。
その時エレンの目は最後まで鉄のように固く光っていた。
それに対して顔に血管を浮かぶほど公爵は怒った。
「虫ケラめ‼︎地獄へ落ちな‼︎」と剣を振った瞬間だった
シュバっと両手の手首に刀の斬撃が入った。
公爵の手からカラーンっと剣が地面に落ちた。同時に両手の手首から血が溢れた。「ぎやあああああああ‼︎、手!、手が‼︎」
「スプーンもてる力だけは残したが、もう二度と剣も持てないだろうな…」
刀を持ったセオーが立っていた。
「セオー‼︎」
「立ちなチビ助、無茶しすぎだ」と腕を持ってエレンを立たせた。
「お‼︎お前ら‼︎あいつらを殺せええええ‼︎」と公爵は命じた。
兵たちはすぐに剣を抜きセオー達に切り掛かった。
しかし彼はその兵を刀で一掃した。
5、6人を“峰打ち”でのした後にセオーは残りにこう言った。
「お前ら相手を見て考えろ!、そして自分の立場も!」
その一言と一睨みですぐに彼らは考えを改めた。
剣を公爵に向け始めた。
「⁉︎…お!おい虫ケラ共‼︎何やっているんだ」
と大声で喚く公爵。
「フ…フッド‼︎、あいつらをどうにかしろ‼︎」
しかしフッドはフっと笑いこう言った。
「“アルフォース“よ、自分の立場がわかって無いようだな、
お前の兵はただ“力がある者”に従ってただけ…今のあんたは
口だけの偉そうにしているただの人間。」
手に持ってた剣を公爵に向けてさらに言った。
「もう誰もあんたには従いはしない!、あんたは横柄すぎるからな!」
続けてランクリーも剣を構えた。
「アルフォース!、もうお前の貴族階級はすぐに剥奪になるだろう!」
「うぐぐぐぅぅぅ!…」と血が切れたか自分の尊厳がポッキリ折れて
ショックを受けたか、公爵はその場に倒れた。
「気を失ったか…すぐに運び込め!」
彼はそのまま“元”従者運ばれて行った、そんな様子を見ていた
ドルッグスとルーシーは「いい気味だ」と表情に表してた。
「さてと…」と剣を納め、セオーに近づくフッド。
その間にエレンが入って彼を庇った。
「フッド先生お願いです…セオーは…」
するとフッドは言った。
「大丈夫だ、依頼主がいなくなったからお前を捕まえる理由はなくなった
だから、どこへ行ってもいい」
その言葉にエレンは笑顔になり
「ありがとうございます!」と頭を下げてお礼を言った。
「よかったねセオー」
その言葉セオーはふっと笑みを浮かべた。
後ろで見ていたラグとドンカツは彼の元へ駆け寄った。
「兄貴!本当に良かったよ‼︎」
「喚くな、運が良かっただけさ」
するとセオーはエレンの方を向いた。
「おいチビ助…いやエレン、
これは“カリ”にしておく次に会うときは必ず返すぜ」といい
そこに置き去りにされた公爵の馬に乗り
弟分2人を乗せてその場を去っていった。
それを黙って見送るエレンは思った、きっと彼は自分の国を再建できると。



馬に揺られて帰るフッド1隊、前に隊長のフッドそして横に
エレンがいた。
「エレン、今回の行動は大目には見ないぞ」
「はいすみません…」と反省するエレンに続けてフッドは言った。
「エレン、私からも実は礼を言いたい」
「え?なんでですか?」
「それは…」と言う前に横からドルッグスが現れて。
「エレン‼︎、今日の晩飯はなんだろうな⁉︎」とわちゃわちゃになってそのまま
後ろへ行ってしまった。
ふうっとため息をつくフッドの横にランクリーがついてきた。
「ランクリー、今回のことで私は誤りを気づいた」
「はい?」
「上のものには絶対服従が騎士の役目と思っていたが、エレンの
“本当に正しい人の味方”と言う言葉に、改めて気づいた」
そして続けてこう言った。
 「あの時、自分の判断でセオーを逃したのもそうだ」
「?、自分の判断ですか?」とランクリーが聞くとフッドは
こう返した。
「それはあいつが“いい人”だからだ」


毛並みのいい馬に乗って走るあらくれの王子と弟分2人は
行く宛のない行くさきへ向かっていた。
「兄貴、今度はどこで何をしますか?」
「決まってるだろラグ、その辺のチンピラぶっ飛ばして金を…」
するとセオーは
「いいやそれはもうやめだ」と言った
「え⁉︎」と驚く2人
「これからは人のために役立つことをしよう…そうだ騎士団を作るか
小さな…」と決意を表した。
「あ…兄貴、国作りは?」
「その一歩だよ、“本当に困ってる人”を助ける団を作るんだ
手伝ってくれるかラグ、ドンカツ」
その言葉に否定もなく心底を燃やすよように
「もちろんです兄貴‼︎俺らはどこまでもついて行きます‼︎」
フッと笑顔になるセオー、彼はまたどこかでエレンとの再会を願った。
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