第2話

文字数 2,177文字

騎士学校から遠く離れた所に大きめの街があった、そこの酒場は
昼でも外からでも怒号が聞こえていた。
この街の人間はここを知っている、その酒場の治安の悪さを。
あらゆる荒くれ者が集まり、ここはまるで凶暴な猿達が入った
檻の様に中は荒れていた。
その酒場の奥のカウンターには一人の男が座っていた。
左右の席にはそいつの仲間が座ったいた。
「おう坊や、そこをどけや、ここは“坊や”が来るところじゃない
んだよ」と大柄な荒くれ者がそいつに因縁をつけてきたしかし
その男は振り返らずに言った。
「消えな、他のとこで座れよ」
それにカチンと来たのか荒くれ者はさらに言った。
「ナマをほざくんじゃねよ、俺はケンカで何人もシメてるからよぉ」
なおも振り返らず男は言い放った。
「口達者なやつほどでかい口を叩くと言うぜ、なら試すか?表に出て」
男の左右の仲間はケラケラと笑っていた。
「テメェ‼︎ぶっ飛ばしてやるよ‼︎」と荒くれは剣を抜いた。



「ずいぶんと大きな街だね、初めてきたよ」と馬に乗りながら街を見回すエレン
「私がいたとこはこんな感じだったよ」とルーシーは言う。
「お前達、今日は観光ではない任務だ、気を引き締めろ」とランクリーは
注意をした。
彼ら一隊は馬に揺られ、お尋ね者を探しに遠出をしていた。
進みながら街の人にそのお尋ね者について聞き回っていたら
「ああ、見たよその男は、確かあっちの酒場に行った気がするが」
「ご協力感謝する」とフッドはお辞儀をして馬を進ませた。
「だから言ったろ、チンピラは酒場に集まるって」
「あんたの言うことはたまに当たるんだね」と皮肉に言うルーシーに
「“たまに”ってなんだよ‼︎」とドルッグスは怒り出した。
そんな彼を「落ち着いて」となだめるエレン。
そして注意をするランクリーといつも学校でやるやりとりをしていると
目の前に群衆が集まっていた。
その中心にはうずくまっている荒くれとそれを見下ろす長身の男がいた。
「ふん、剣を使うまでもなかったな」と吐き捨て仲間2人を引き連れて
その場を立ち去ろうとした。
「セオー、そこを動くな」と馬に降りたフッドとランクリー
が群衆の中から出てきた。
「騎士か…俺に何か用か?」
「アルフォース公爵様の命令でお前を捕縛する、おとなしくしろ」
それに対してセオーはニヤリと笑って言った。
「お前、なかなかいい目をしてるじゃねえか、」と腰に下げた刀を
抜いた。
すると横にいた仲間2人が前に出てきた。
「兄貴!、こいつらは俺らがやりますぜ」
少し背の高い出っ歯とガタイのいい小男が立ち塞がり、
捕縛の邪魔をした。
「ふぅ…エレン、ドルッグス、ルーシーこの2人は任せた‼︎」
と3人を呼びフッド達の前に立った。
「俺らを舐めたもんだ、こんなガキを相手にさせるとは」
「ラグ、あのでっけえガキを俺に相手させてくれ」
とセオーの弟分は話あっていた。
一方フッドの生徒3人も話し合っていた。
「エレン、何か作戦はある?」
「そうだね…まずはあいつらがどんな感じか分析する方に…」
「考えてる暇はねえ‼︎俺はあのジャガイモ野郎をマッシュするぜ‼︎」
とドルッグスは一人で片方に突っ込んで行った。
そしてその小男を足で踏みつけようとしたが、それを両腕で受け止めた。
そして後ろへと放り投げた。
ドルッグスは群衆の中へと落ちていった。
「あー…あのばか…」と呆れるルーシー。
その横ではガキィンっと鉄のぶつかる音が聞こえた。
フッドとセオーが剣を取り出して戦っていた。
「剣だけは抜きたくなかったがやむおえんな」
「抜いたのはそっちの勝手だろ」
とセオーは刀を右に振った、それを剣で受け止めてフッドは真正面から
突いたがそれをフイっとかわし手に持っていた刀を鞘に納め構えた。
「さっきもそうだったが“剣を鞘に収めて切り付ける”という行動をするぞ…
抜刀術という剣術を聞いたことがあるが、確かあれは…」
というまもなく居合い抜きを繰り出した。その速さは弓から放たれる矢
とは比べられない速さだった。
うまくガードは出来たものの思わず体勢を崩し、後ろに倒れてしまった。
セオーはそこを狙い一太刀フッドに入れようとした瞬間。
カイインっと何者かの剣がぶつかった。
エレンが前に出てきた。
「エレン」
「フッド先生、怪我はないですか」と彼に声をかける。
「どきなチビ助、相手はお前じゃない」
それでも剣を構えて前に立つエレン。
すぐに立ち上がったフッドも
「退くんだエレン、こいつの相手は私だ」
「先生…」しかしその時、この街の衛兵が群衆をかき分けてこっちへ
向かっていた。
「そこをどけ!喧嘩が起きたと報があったぞ‼︎」その様子を見てセオーは
「せっかくあったまってきたのに、ラグ‼︎ドンカツ‼︎行くぞ」
「へい‼︎」と弟分を連れて群衆の中へ消えていった。
「待て逃さねえぞ‼︎」と追いかけるドルッグスとルーシーとランクリー。
しかし群衆はすでに鍋の中の豆の様に密集しておりなかなか進めなかった。
「ダメだ逃げられる!」と人と人の間に詰まってしまう2人その時だった
頭の上を馬が飛び越えてきた、その馬に乗っているのはエレン
だった。
「エレン」と一番大きいドルッグスが彼を見つけた。
馬はダカダカと音を立てて走っていった。
「どこへ行ったんだ⁉︎」とエレンは辺りを見回して街を走った。
しかしセオーらの姿は見えなかった。
「まさかすでに街を…」エレンは後ろを振り向いてそして前を向き
街の外へ出た。
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