Lost and Found (失って、そして、見つけた)
文字数 7,380文字
第一年目の二月半ば
レイちゃんは、チヅルが燃えている家にいたと聞き、助けに行った。涼が恐れていた彼の心臓発作は、チヅルが家から救い出した後だった。
救命の方によると彼の死顔は、微笑んでいた。どうやら、レイちゃんは、チヅルを助けたのを安心して亡くなった。
女子達は、RCGを失った後Happy Homeの二階に引っ越した。二階建てのアパート住宅だったHappy Homeは、男子達が一階に移動し、私達女子の為に二階を開けてくれた。チャールズ先生と和尚さん達の勧めで私達はそこに入った。
「男子達が掃除をしたから、もうすぐそこに入れますよ」京子さんが話してくれた。
男子は、どう思っているのか伺ってみたら、「なんか気がまぎれることがあって良かった」と話したそうだ。明るいレイちゃんの存在がなくなり、男子達の間でも光を失った様だった。
バレンタイン・デーにレイちゃんの告別式をした。
レイちゃんが棺の中で眠っているようですごくきれいだった。彼の死衣装は、渡さんが隠し芸に着ていた王子様の衣装だった。
式の間、私は渡さんの隣に座っていた。
「クリーニングに出して良かった」と渡さん寂しそうに囁いたの聞こえた。
式が終わる頃に、私達は、告げる為棺のそば通った。一人ずつ彼の遺体にオレンジ色のバラを一つずつ置いて行った。寮の仲間で最後だったのは、涼だった。いつもズボン姿だった彼女は、珍しくドレス着ていた。すごくきれいだった。
そして、告別式から三日経ち、私達は、いつもの生活に戻ろうとしたが、失敗ばかりしていた。昼間のバイトで皿を割ったり、オーダーやお釣りを間違えたりなどの繰り返しで、ノブちゃんに「今日は、良いよ」と言われ帰された。
レイちゃんの死はみんなに影響していた。悲しいが、自分の事がいっぱいで前に進むしかないと思いながら生活を送っていた。
涼ちゃんは、朝から夜遅くまで姿を見せなかった。心配で彼女の部屋のポストに「今どうしている?良かったら声かけてね。(力になれるか分からないけれど)」などのメモを入れた。
「Miss. Mary」夜間学校のちみが言った。「Are
you OK? (大丈夫ですか?)」
「I will be. (大丈夫になります。)」
「Miss. Mary」ちみが立ち上がり、自分の財布と取りだし、罰金ツボに千円札を入れた。「ここから、日本語で言います。先生、今日だけ日本語にしていただきませんか?」
私は、生徒たちの顔を見たらみんな頷いていた。
「Are you sure? (良いの?)」
「先生、あなたのレッスンで『私は、今悲しい』ってメチャクチャ伝わっていますよ」
「I’m sorry. (ごめんなさい。)」
「先生、誤ってほしいから言ってるんじゃない。先生は今悲しいの只分かるんです。それに……」ちみは大助と樹の方を見た。
分かっている。悲しいのは、私だけじゃないって事は。でも……。
その時、誰かが小銭を幾つかツボに入れた。見たらクラス一人ずつ日本語の罰金を払っていた、その中に大助と樹もいた。
「先生、今日だけ日本語にしよう」樹からも言われた。
「先生、一人で悲しまないでよ。僕たちもいますから」大助も付け加えた。「だから、今日は気楽にしましょう。今日はいっぱい悲しんで、そして、次の日にもう一度先生の笑顔を見せて下さい。」
それを聞いた時に、私は泣いた。
「ほらよ」私が泣き止んでいっぱい鼻をかんでから、誠がジュースをクラスに配ってくれた。「喉乾いたんだろう」
「ありがとう」私はそのジュースを受け取り一口飲んだ。
ジュースの他におつまみもあった。生徒たちが罰金箱で集められたお金で「慰め会」をしてくれた。
「美味しい」
「これもどうぞ、先生」ユリカが私にあんパンをくれた。「食べて、元気出してください」
それを見た時に、なんか嬉しくて涙が零れ落ちた。
「っ、はい」私は見上げたら、なんかみんなが私をじっと見ていた。
「あの……私は、パンダじゃないんですけど……」
「そうだな、俺達も食べよう」そう言った隆介がおつまみの袋を開けた。
今日は飲んで食べよう……明日の為に元気を取り戻そう。
朝食に私は、Happy Homeの食堂で寮の仲間と座った。涼がいないのに気が付いた。
「ねぇ、涼見てない?」チヅルが聞いた。
火事の後、チヅルは、チャールズ家にしばらく居る事になった。彼女は、レイちゃんの告別式の前にモモをHappy Homeの裏にある桃の木の下に埋めた。あれから、チヅルは、いつも通り笑ったり話したりしていた。
「いや、しばらく見てないけど……」トムさんが言った。今日の料理担当は、トムさんと渡さんだった。男子寮長もトムさんになった。本当は、毎週土曜の夜に寮のミーティングをやるのが決まりだったが、女子寮長の涼は出なかった。
「仕事で忙しいんだろう」とみんなはいつも通りしていたが、告別式以来涼の姿をだれも見ていなかった。
この間レイちゃんが入院した時に涼が泣いていた場面を思い出した。
『私……どうしたら良いか分からなくて……』
……大丈夫だといいんだが……。
食後に火事場を見に行った。
今日は、バイトからの一日おきの休み。明日からもう一度頑張るぞ。そう思いながら、あのRose Cottageの焼き後を向かったら、家の裏庭があった場所に人がいた。
「涼!」私は彼女の所に行こうとしたら、彼女が私を見て逃げた。
「ちょっと待て、涼!」私は彼女の後を追った。彼女は足が速かったが、何かに躓き派手に転んだ。
「大丈夫?」私は、彼女をやっと追いつき手を差し伸べた。でも彼女は、私の手を取らなかった。
「涼?」
「……てよ……私をほっといてよ」彼女は顔を上げ私に睨みついた。
「どうしたの?」
「言ってよ、私が人殺しって!」
「何言ってるのよ」
「私が、あの家に火をつけたんだよ!私のせいでレイが死んだんだよ!」彼女は、嘆いた。「私の煙草でレイを殺したのよ~」彼女が泣き出した。私は彼女を抱きしめ、彼女がレイちゃんの名前を繰り返しながら、背中を摩った。
やっと泣き止んだ涼は、自分を警察に通報した。Rose Cottageの火事の原因は、たばこの吸い殻がちゃんと消えてなかったからだった。禁煙だったRose
Cottageのキッチンの裏口で煙草を隠し吸っていた。その事を知り、涼は罪悪感でもってみんなから遠ざけようとしていた。
涼が警察署に言った事を寮のミーティングでチャールズ先生が報告した。
「あの人、バッカじゃないの!」椎香が怒った。「禁煙になっているのに隠してやるなんて!」
「人ってのはなぁ、お嬢ちゃん、いけないと分かりやらない人と、いけなくてもやりたい人と、どうでもいい自分のやりたい事をやる人がいるんだ」トムさんが説明した。
「じゃあ、涼はその『自分のやりたい事をやる人』何でしょう!信じられない!」
「でも椎香、彼女を許してあげて。彼女は、本当に反省しているんだよ」私は付け加えたら、彼女が怒鳴った。
「あんた黙って!外国人のくせに知ったぶるなっ!あんたは、ここ町の常識を何も知らないから口出すな!」それから、チャールズ先生にも起こった。「あんたもあんたよ!外国から来て、『自分の考えは正しい』と思い、ここの国の人達に押し付けてよ。何が『神の愛』だ!あんた達は昔っから変わっていないんだよ!どうせこの村を乗っ取ろうと考えているんでしょう!」
「椎香、なんで怒ってんの?」私は静かに聞いた。
「私は隠し事や嘘つきが嫌いなんだよ。あんた達みたいな偽善者が最も嫌いだ!」
「椎香!いい加減にしなさい!」そのミーティングにいた和尚さんが怒った。「あなたはなんてことを言うのだ!今、先生達に謝りなさい!」
「おじさんもおじさんだよ!こんな連中とよくやっていけるわね!私は、こんなのやってられるかっつうの!」彼女が立ち上がった。
「君がそう言うなら、出て行っても良いぞ」和尚さんの声は怒りで低かった。
「ああ、出ていくとも!」その時、私は、彼女の前に立った。
「どけ!」彼女が私に叩こうとしたら、私は自分の腕で受け止めた。
「どきなさい!」
「いやだ」私は、祈りながら話し続けた。彼女が回ろうとしたら、私は、道をふさごうとした。
「私は、あんたと関わりたくないんだよ」
「それが、本音なのね」
「ああ、そうだよ!」
「先生、行かせなさい」
「和尚さん?」
「椎香、今日からもうこの町から出なさい」
「ああ、そうするよ」彼女は私を押しのけ、寮から出て行った。
和尚さんは、悲しそうに背を向いた。急に老いた様子だった。
「すまん、ジェームズ君、みんな」彼が頭を下げた。
「和尚さん――」私は、「和尚さんは、悪くないよ」と言い出そうとしたら、昴に止められた。
「今日は、帰らせてもらいます」和尚さんの声が疲れていた。
「ああ。今日は、ありがとう、尚継君」
「じゃ、また明日」そう言って、和尚さんは、食堂を後にした。
その夜、眠れなくて、ちょっと外を出る事にした。寝間着からセーターと長ズボンに着替え、ジャケットとマフラーを着て暖かくした。
夜の空が星で満ちていた。二月半ばの空気が冷たく澄んでいた。
神様、椎香が今日、寮から出て行ったよ。どうか、彼女と共にいて下さい。そう祈りながら、私の隣だった彼女の部屋を見た。
どうしてこうなっちゃったんだろう。私は、ため息をした。
「メアリー先生?」下から声がしたと思ったら、渡さんとノブちゃんがいた。珍しいコンビだった。
二人とも暖かくジャケットと帽子をかぶっていた。食堂の前にあったベンチを庭の真ん中に移動して座っていた。
「あれっ?二人ともどうしたの?」
「星を見に」渡さんが手を振ってくれた。
「先生も一緒にどうですか?」ノブちゃんが誘ってくれた。
私は、庭へ降りた。
「ここ空いてるよ」ノブちゃんがベンチの端っこにずらし、彼と渡さんの間に場所を作ってくれた。
「じゃ、お邪魔します」私が二人の間に座った。しばらく黙っていた私達は夜空を眺めた。
「……椎香、大丈夫かな」私の口から思った事が零れた。
「椎香ちゃんが飛び出したんだって?」ノブちゃんが聞いた。
「……うん」
「大丈夫でしょう」ノブちゃんが体制を前にした。「あの子は言いたい事をばっと言って、ばっと飛び出し、そして帰って来る人なんだ」
「そうなの?」
「前にもあったんだ」
「どうして、彼女はチャールズ先生にそんな事を?」
「彼女は、実は、親を亡くしたんだ。両親はクリスチャンだけど、彼女は違うんだ」ノブちゃんが説明した。
「両親が亡くなった後、彼女が教会に助けを求めたんだけど、どうやら助けてもらえなかったみたい」
「どうして?」
「その教会牧師は外国の人で、自分の国へ帰ったんだ。それから色々あったんだ」
「良く知っているんだね」
「僕は昔から椎香を知っているんだ。同じ教会にも行ってたんだ」
「教会って何の為にあるんだろう?」渡さんが空を見て聞いた。
「教会は、本当は、壊れたり、弱かったり、病んでいる人達が集まる場所なんだ。それは自分より強い神様を頼って生きて、お互いを支えあっていくコミューネティなんだ」
「ふう~ん」渡さんが聞いた。「じゃあ、どうして神様信じているんだ?病気直してくれるから?」
「僕の場合は、生かしてもらっているから」そして、ちょっとしてノブちゃんが付け加えた。「僕は、昔死ぬはずだったんだ」
「……そうなんだ」
「それが、一回だけじゃない、三回なんだ」
「え?」
私達は、ノブちゃんの話を聞いた。
彼が中学の時、彼の父親の会社が倒産して、責任を取る為に自殺した。その父親を発見したのは、ノブちゃんだった。
「僕は、あの後うつになり、大人になってもなかなか治らなかった。医者や精神専門家に何人も見てもらい、薬ももらったけど、治らずに悪化した。そして、とうとう仕事ができなくなり、自殺を図ったら、三回とも失敗し、病院に入ったんだ。その時、神様に祈った。僕を助けて下さいって」
「……それで助けてくれたのか?」渡さんが聞いた。
「ああ、二十年以上掛ったけどね」
「二十年?!」私達が驚いた。
「それでもいいんだ。僕は、生きている。いや、生かされている。長くて辛かったけど、病院の先生たちが、『社会に出て行っても大丈夫』と言われ、退院できたんだ」
その話を聞いた私達は、しばらく黙った。
「ノブちゃんすごいよ」私が沈黙を破った。
「いや、あれは、本当に神様のおかげだと思うんだ」ノブちゃんは、ベンチに預けた体制をまた前により、私達を見た。
「メアリー先生は?あなたは、どうして信じているんだ?」
「私は……孤独の人だから」自分の麦色の前髪をいじりながら話した。「この髪はね、死んだ兄の記念にやったんだ」
それは、違うよ。心の中の小さな声が言った。あなたは、ちゃんと本当の理由を話してあげなさい。
「ごめん、違った。本当は、自分が外国人だってことを示す為に染めたんだ。私は、外見日本人でしょう。子供の時、自分がみんな違って寂しかったんだ。それで、日本に暮らす機会があってすごく嬉しかった。でも、受け止めてくれなかったんだ。外見は日本人なのに日本の文化や常識が分からなかった。それで、仕事場でいじめを受け、最後に辞めさせられたんだ」
「だから、髪を……」
「……うん。『染めたらもっと外国人らしく見えるかな』と思ってね」私は、ちょっと笑ったがその過去の思い出で苦くなった。泣きたくなったけど、泣かないことにした。
「……俺は……ホームレスになる前に……刑務所にいたんだ」しばらく黙っていた渡さんが急に言い出した。
私達は、渡さんを見た。彼が私達に返した眼差しは悲しかった。
「その前は、病院でのインターンの医者だったんだ。癌の専門のね」
「そう、だったんだ」ノブちゃんが言った。「じゃあ、頭良かったんですね」
渡さんは続けた。「俺、医大で成績が良く、結構早めに病院で働き始めた。自分の進路を中学の時から計画的に予定し、その通りに段階踏んだ。そしたら、自分の期待した結果が出て自分が大したものだと思ったんだ」
渡さんの話は、昔の自慢話に聞こえたが、その語り方がその逆だった。まるでギリシャの悲劇の話をしているようだった。
「ある日、……俺が診ていた患者に……安楽死を与えたんだ」
私は、それを聞いた時、反応的に体が引いた。そして、渡さんが私をその悲しい目で見て、泣きそうに笑った。
「引くよな。無理もないさ。……俺は、人を助ける為の知識をいけない事に使ってしまったんだ」
私は、そのまま彼を見ていた。この人は、人を殺した。だから刑務所に。
彼の帆頬に涙一筋落ちた。
「俺を憎んでも良いよ。……人殺しだよ。……逃げても、良いよ」その言葉が頼み事みたいだった。
私は、動かなかった。何故かこの悲劇に続きがある気がした。
「……刑務所……どれぐらい、いたの?」ノブちゃんが聞いた。
「五年」
「渡さんに家族いました?」今度私が聞いた。
「……結婚していた。娘、一人」
「……どうして、ホームレスに」
「社会で、居場所が無くなったから。俺が犯した罪で家族も犯罪者扱いになったんだ。だから、点々と引越しをして、最後に妻へ離婚届を送り、自分から離れたんだ」
それを聞いて私の目元が熱くなった。私達は、みんな居場所を探しているんだ。だから、見えない手でここに導かれたんだ。
「そっか」
「実は……俺は、メアリーに救われたんだ。そして、RCGのみんなにな」
「……え?」
「刑務所にいた時も、ホームレスの時も、俺は自分を人間のクズだって事が分かった。自分は知識も社会で恵まれたのに、それを利用してこの手を罪で染まらせたんだ。そういう自分を憎くみ、死ぬべきだとも思った。でも……君達に会うまで……」彼は、席から立ち、私の前に身を低くして見上げた。
「メアリーは、俺を人として見てくれた。それから、ノブさんやHappy Homeの仲間に、俺の過去を聞かずに……手を差し伸べ、仲間に入れてくれた。俺は、それでもう一度やり直したいと思ったんだ。ちゃんと、自分と向き合い、これからの生き方で償い、ちゃんと生きて行きたいと」
「……私は……常識も分からないし……自分勝手だし……みんなにいい迷惑だよ」
その時、彼の暖かい手が私の頭にポンと置いた。
「君のそういうところ、俺は嫌いじゃない」
「そうですよ。メアリー先生、自分をディスカウントしないでください。それに、あなたは、何と言おうとみんなに愛されているんですよ」
「ああ、そうだ」渡さんが頷いた。
「勝手で、突拍子もなく、色々やるところも?」私は、聞いた。
「ああ。あんたのように嵐を起こす子がいると毎日が退屈しないよ」渡さんが優しく微笑んだ。
「……ありがとうございます、二人とも」
「いた!」香名さんが私達の前に現れ、腕を組んだ。
「どこへ行ったのかと思ったら、ここにいたの」彼女は、ノブちゃんを見下ろしたが眼は笑っていた。
「あっ、すまん。待った?」彼が挨拶に手を上げた。
「待った!もう、ノブちゃんったら!」香名さんが呆れた。「あなたが『小豆アイス食べたいからかいに行く』と言ったまま帰って来ないもん。北海道まで買いに行ったのかと思ったわよ」
「悪い、悪い。さあ、家に帰って君の好きなドリップ・コーヒーを入れてあげよう」そう言って、ノブちゃんは、席から立ち上った。
「そう言うんだったら、リリー先生達にお礼してよね。パパが消えたから、子供達を見るのを頼んだのよ」
「おお、そうだな」
「ノブちゃん、ありがとうね」私は、お礼を言った。
「僕は、別に何も」
「話を聞いてくれた上に話をしてくれたよ。ありがとう」
「本当にありがとう、ノブさん。今度、ノブさんのコーヒの入れ方教えて下さい」渡さんが言った。
「神田さん、良かったら明日店の手伝いに来てくれますか?その時に、美味しいカプチーノの入れ方を教えます」
「じゃ、明日から、よろしくお願いします」
ノブちゃんと香名さんは、お辞儀をし、腕組んで帰るのを見送った。
神様、私達は、なんて幸せ者だろう。こんな仲間を与えてくれてありがとう。
「さて、帰ろうか」私は、二階へ向かった。
「お嬢さん」
私はちょっと止まり、渡さんを見た。「?」
「ありがとうございます」彼が深々と頭を下げた。
「いいえ、渡さんの方こそ、ありがとうございます」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」