02 死闘! カリブの海賊
文字数 1,278文字
ゲートの外で突然はじまった血みどろの戦いをよそに、ディズニーランドの中ではすでにバトルロイヤルが始まっていた。
素早く先制を切った卜伝の剣をかわし、武蔵が近くにいた子供を盾にした。
あやうく子供の首をはねそうになるのを寸でのところで止めた卜伝。
しかし、その隙を武蔵は逃さなかった。
一撃のもとに卜伝を斬り捨てると、武蔵は子供を小脇に抱えて駆けだした。
「人質をとるとは、なんと卑怯な! 志道に背くその所業、許せん!!」
沖田が怒りに身を震わせて後を追う。
「フンッ、戯れ言を。命あっての物種よ!」
近場の建物に逃げ込む武蔵。
そこは人気アトラクション『カリブの海賊』だった。
行列を掻き分け、周囲の家族連れを巻き添えにしながら刀を振り回す武蔵。
本来、屋内では新撰組特注の丈の短い刀に利がある。
だが、子供の喉元に刃を当てた武蔵に、沖田は得意の三段突きを繰り出すことができなかった。
武蔵と沖田は膠着状態のまま船着き場へと辿りつき、流れ来るボートに飛び乗った。
やがてボートは洞窟を抜け、ガリオン船の合間をぬって燃えさかる街のシーンへと差し掛かった。
そこでふと、沖田が奇妙な構えを見せる。
晴眼に構えたまま、身動きしなくなったのだ。
怪訝に目を細める武蔵。
「土方さんも会得できなかった天然理心流奥義……」
不動金縛り――
それはまさに魔剣だった。
武蔵は脂汗を流しながら身動きできなくなっていた。
「でかしたぞ沖田!」
突如、武蔵の背後に現れたのは松林左馬助だった。
「なにっ!?」
動けぬまま、血走った目を見開く武蔵。
「くだらん闘いに興味はないが、貴様のような小悪党は捨ておけぬのでな。あれしきの柵、天守閣に比べれば屁でもないわ!」
蝙蝠斎の異名を持ち、将軍の前で難なく天守閣まで飛び上がったという左馬助。
彼にとってはディズニーランドの蛇腹フェンスを飛び越えて侵入することなど、実に容易なことであった。
左馬助の斬激が武蔵を襲う!
しかし、武蔵は気合いで金縛り状態を振り切り、おおきく太刀を振りかぶった。
風を切るような轟音とともに、武蔵の太刀が走る。
左馬助は飛び上がっているため、その太刀スジを避けることができない…
しかし次の瞬間、左馬助は懐から取り出した鉛で武蔵の刃をいとも簡単に弾いていた。
折れた刃が、左馬助の頬を切ったが、物ともせずに武蔵から子供を奪還して非常口へと逃がした。
「おのれ!」
折れた刀を捨てた武蔵は、左馬助の首根っこを片手で掴んだ。
ギシギシと骨が軋む音がして、異様な方向へ首がへし折れた。
「小癪なまねを! 沖田、次はお前だ」
怒りにまかせ、鬼のような形相で武蔵が迫る。
ハッと息を呑む沖田。
その時だった。
突然、咳き込みながら吐血する沖田。
沖田が密かに恐れていた労咳の発作であった。
「フンッ…」
武蔵はつまらなそうに鼻を鳴らすと、倒れて痙攣している沖田を見捨て、カリブの海賊を後にした。
素早く先制を切った卜伝の剣をかわし、武蔵が近くにいた子供を盾にした。
あやうく子供の首をはねそうになるのを寸でのところで止めた卜伝。
しかし、その隙を武蔵は逃さなかった。
一撃のもとに卜伝を斬り捨てると、武蔵は子供を小脇に抱えて駆けだした。
「人質をとるとは、なんと卑怯な! 志道に背くその所業、許せん!!」
沖田が怒りに身を震わせて後を追う。
「フンッ、戯れ言を。命あっての物種よ!」
近場の建物に逃げ込む武蔵。
そこは人気アトラクション『カリブの海賊』だった。
行列を掻き分け、周囲の家族連れを巻き添えにしながら刀を振り回す武蔵。
本来、屋内では新撰組特注の丈の短い刀に利がある。
だが、子供の喉元に刃を当てた武蔵に、沖田は得意の三段突きを繰り出すことができなかった。
武蔵と沖田は膠着状態のまま船着き場へと辿りつき、流れ来るボートに飛び乗った。
やがてボートは洞窟を抜け、ガリオン船の合間をぬって燃えさかる街のシーンへと差し掛かった。
そこでふと、沖田が奇妙な構えを見せる。
晴眼に構えたまま、身動きしなくなったのだ。
怪訝に目を細める武蔵。
「土方さんも会得できなかった天然理心流奥義……」
不動金縛り――
それはまさに魔剣だった。
武蔵は脂汗を流しながら身動きできなくなっていた。
「でかしたぞ沖田!」
突如、武蔵の背後に現れたのは松林左馬助だった。
「なにっ!?」
動けぬまま、血走った目を見開く武蔵。
「くだらん闘いに興味はないが、貴様のような小悪党は捨ておけぬのでな。あれしきの柵、天守閣に比べれば屁でもないわ!」
蝙蝠斎の異名を持ち、将軍の前で難なく天守閣まで飛び上がったという左馬助。
彼にとってはディズニーランドの蛇腹フェンスを飛び越えて侵入することなど、実に容易なことであった。
左馬助の斬激が武蔵を襲う!
しかし、武蔵は気合いで金縛り状態を振り切り、おおきく太刀を振りかぶった。
風を切るような轟音とともに、武蔵の太刀が走る。
左馬助は飛び上がっているため、その太刀スジを避けることができない…
しかし次の瞬間、左馬助は懐から取り出した鉛で武蔵の刃をいとも簡単に弾いていた。
折れた刃が、左馬助の頬を切ったが、物ともせずに武蔵から子供を奪還して非常口へと逃がした。
「おのれ!」
折れた刀を捨てた武蔵は、左馬助の首根っこを片手で掴んだ。
ギシギシと骨が軋む音がして、異様な方向へ首がへし折れた。
「小癪なまねを! 沖田、次はお前だ」
怒りにまかせ、鬼のような形相で武蔵が迫る。
ハッと息を呑む沖田。
その時だった。
突然、咳き込みながら吐血する沖田。
沖田が密かに恐れていた労咳の発作であった。
「フンッ…」
武蔵はつまらなそうに鼻を鳴らすと、倒れて痙攣している沖田を見捨て、カリブの海賊を後にした。