01 血闘へのパスポート
文字数 1,138文字
十人の剣豪が、平日の閑散としたディズニーランドのゲート前に集結していた。
それぞれの手には「剣豪バトルロイヤル」と記されたパスポートが握られている。
「夢と魔法の王国、ディズニーランドへようこそ!」
センスのないコスチュームに身を包んだ女性キャストが、刀を差した場違いな風貌の男達を作り笑いで出迎える。
剣豪達は一様に戸惑っていた。
そこへ塚原卜伝が進み出て、
「こうするんじゃ」
と、パスポートをゲートのスリットに挿入した。
シャランッ
光の瞬くような音色がして、ゲートが開いた。
驚愕する剣豪達をよそ目に、悠々と通過する卜伝。
「おぬし、やるな!」
と、続いて入場する勝海舟。
「これしき、調べはついとるわい」
卜伝がニヤリと笑う。
沖田総司も見よう見マネで入場する。
しかし、後に続いた宮本武蔵は要領を得ず、苛立っていた。
生来の不器用である、現代文明の利器など理解できようはずもなかった。
「どれ、貸してみよ」
卜伝が手を差し伸べる。
「かたじけない…」
照れくさそうに手渡す武蔵。
しかし次の瞬間、卜伝はニヤリと笑いながらそのパスポートを破り捨ててしまった。
「むむっ!? 謀ったな、卜伝!」
無理にゲートを通過しようとする武蔵を、キャストが押し止める。
「お客様、困ります!」
「ええい、小賢しいわ!」
言うが早いか、武蔵はキャストを袈裟懸けに斬り捨てた。
血が噴き出し、悶絶しながら倒れる。
周囲から悲鳴があがる。
それを合図に、武蔵に続いて国井善弥をはじめ残りの者達がなだれ込もうとする。
だが、それを蛇腹状の鉄製フェンスが遮った。
「お前らは、不戦敗じゃ」
刀を差し込んで無理矢理こじ開けようとする佐々木小次郎を足蹴にしながら、武蔵が勢いよくフェンスを閉めてしまったのである。
「でかしたぞ、武蔵!」
すかさず卜伝が南京錠をかける。
見事な連携プレイであった。
その光景を静かに見守っていた松林左馬助は「くだらん」とつぶやき、
堀部安兵衛は「さあて用が済んだなら、酒でも飲むか」と言って帰ってしまった。
しかし小野忠明は
「仕方がない。こっちはこっちで楽しませてもらおうか」
と、不適に笑いながら隣にいた伊藤一刀斎を斬りつけていた。
「お師匠様、久々にお手合わせ願いますよ…」
そう言った瞬間には、一刀斎は絶命していた。
「さて、今度はそっちの小熊みてえの、俺とやらんか?」
刀の切っ先を突きつけられたのは国井善弥だった。
「のぞむところよ!」
国井善弥は刀も抜かず、素手のまま大きく万歳をするようなポーズで小野忠明に向かって駆け出していた…。
それぞれの手には「剣豪バトルロイヤル」と記されたパスポートが握られている。
「夢と魔法の王国、ディズニーランドへようこそ!」
センスのないコスチュームに身を包んだ女性キャストが、刀を差した場違いな風貌の男達を作り笑いで出迎える。
剣豪達は一様に戸惑っていた。
そこへ塚原卜伝が進み出て、
「こうするんじゃ」
と、パスポートをゲートのスリットに挿入した。
シャランッ
光の瞬くような音色がして、ゲートが開いた。
驚愕する剣豪達をよそ目に、悠々と通過する卜伝。
「おぬし、やるな!」
と、続いて入場する勝海舟。
「これしき、調べはついとるわい」
卜伝がニヤリと笑う。
沖田総司も見よう見マネで入場する。
しかし、後に続いた宮本武蔵は要領を得ず、苛立っていた。
生来の不器用である、現代文明の利器など理解できようはずもなかった。
「どれ、貸してみよ」
卜伝が手を差し伸べる。
「かたじけない…」
照れくさそうに手渡す武蔵。
しかし次の瞬間、卜伝はニヤリと笑いながらそのパスポートを破り捨ててしまった。
「むむっ!? 謀ったな、卜伝!」
無理にゲートを通過しようとする武蔵を、キャストが押し止める。
「お客様、困ります!」
「ええい、小賢しいわ!」
言うが早いか、武蔵はキャストを袈裟懸けに斬り捨てた。
血が噴き出し、悶絶しながら倒れる。
周囲から悲鳴があがる。
それを合図に、武蔵に続いて国井善弥をはじめ残りの者達がなだれ込もうとする。
だが、それを蛇腹状の鉄製フェンスが遮った。
「お前らは、不戦敗じゃ」
刀を差し込んで無理矢理こじ開けようとする佐々木小次郎を足蹴にしながら、武蔵が勢いよくフェンスを閉めてしまったのである。
「でかしたぞ、武蔵!」
すかさず卜伝が南京錠をかける。
見事な連携プレイであった。
その光景を静かに見守っていた松林左馬助は「くだらん」とつぶやき、
堀部安兵衛は「さあて用が済んだなら、酒でも飲むか」と言って帰ってしまった。
しかし小野忠明は
「仕方がない。こっちはこっちで楽しませてもらおうか」
と、不適に笑いながら隣にいた伊藤一刀斎を斬りつけていた。
「お師匠様、久々にお手合わせ願いますよ…」
そう言った瞬間には、一刀斎は絶命していた。
「さて、今度はそっちの小熊みてえの、俺とやらんか?」
刀の切っ先を突きつけられたのは国井善弥だった。
「のぞむところよ!」
国井善弥は刀も抜かず、素手のまま大きく万歳をするようなポーズで小野忠明に向かって駆け出していた…。