第4話

文字数 527文字

「しまった」

不注意で、花瓶をテーブルから落としてしまった。

脱出したら、スタッフの人にあやまらなくては。花瓶を弁償するとしたら、いくらくらいだろう。テーブル同様、年代物のようにみえる。けっこう高いかもしれない。ああ、ついてない。

がっくりうなだれながら、先に進む。しばらくすると、また、

ボーン、ボーン、ボーン。

音がした。この屋敷に入った直後にきこえたのと同じ、三回。ここの時計は、何時であろうと三回なのだろうか。時刻を確認する。

「そんな、まさか……三時だ」

いやはや、わたしは三時に、この館へ入ったのではなかったか。記憶ちがいか。二時と三時をみまちがえたのだろうか。

何かがおかしい。

左手を壁につけ、ひたすらすすむ。いっこうに出口はみつからない。



なんとなくわかってきたのは、この迷路はそれほど複雑でもなさそうだということ。

どの道をえらんでも、スタート地点や花瓶の場所など、どこにでも容易にアクセスできる。

こんなに単純な構造で、ほんとうに迷路なのか。ひょっとして、まったく別の種類の施設だったりするのだろうか。

迷路じゃないとしたら、ここはいったいなんなのだろう。入口には、ふしぎハウスとかかれていたが、いったいなにがふしぎなのだろう。

一抹の不安がよぎる。

ガシャン。
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