第1章 エピローグ(1)

エピソード文字数 1,856文字

「にゅむ。ゆーせー君、お別れの時が来ちゃったね」

 あのあと無事直って元の世界に戻り、『色紙優星、許すまじ!』と怒り狂う神蔵さんを鎮め、俺達は我が家に帰還。俺とレミアは、初めて出会ったLDKで向かい合っていた。

「確かにこれは別れだけど、永遠じゃあない。こっちは契約を解除したいだけであって、アナタ――アナタ達とは、末永く親しくしたいよ」

 前にいる魔王様、そして彼女の両サイドにいるフュルとシズナにも笑いかける。
 この人達は大バカだけど、良いヤツだからね。四六時中いるのは勘弁願いたいが、関係は保ちたい。

「ワシも、師匠とは死ぬまで付き合いたいぜよっ。一緒におって楽しいし、土佐弁先生を教えてもらわんといかんきね!」
「私は、従兄くんの従妹だもの。付かず離れずの距離で、これからも支えていくわ」

 勇者様はピースをして、伝説の魔法使い様は姿勢を正してはにかむ。
 今は、とてもよい場面ですからね。あまり支えてもらってないんだが、という指摘はしません。

「にゅむむっ。あたしとゆーせー君はずーっとお友達で、時々はお料理(りょーり)とかを作ってもいーんだったねっ。それなら悲しくないですー」
「んっ、いいスマイルだ。来たくなったらいつでも、その笑顔を見せに来なさいな」

 俺はレミアの頭を撫で、一歩下がって契約解除の準備をする。
 こういうのって、時間が経てば経つ程やりにくくなるからねぇ。そうならないうちに、作業を終わらせましょう。

「レミア。いくよ?」
「にゅむっ」

 俺達は頷き合い、にゅむむん。共に口を動かすにゅむっ。

「俺色紙優星は、魔王黒真レミアとの契約解除を希望する」
「あたし黒真レミアは、魔王(まおー)使い色紙ゆーせー君との契約解除を希望します」

 二人の意見が、一致。取り消しの条件を満たした。

「魔王使いと魔王が同調、異論はなし。契約よ解けろ!」

 静かな室内に、俺の声が響く。
 ……………………うん。これで俺達は、使う使われるの間柄ではなくなった。

「ほぉー、それが解除の儀式先生かえ。意外と簡単ながやね」
「魔法の儀式は、こんなものなのよ。これは、少々地味ではあったけどね」

 そうだよなぁ。契約をした(勝手にさせられた)時みたいに手の甲が光ってくれると、雰囲気が出たんだよねぇ。

「まっ、解除っつーとプラスな行為じゃない。儀式も空気を読んでるんでしょ」
「それもそうぜよ。とにかく無事終わった事やし、ワシらは日本に戻ろうかね」
「親友達もレミアさんの御家族も、ここの日本の話を聞きたがっていたわ。一度帰って皆にお話ししましょう」

 皆さんレミアに会いたがっているのではなく、異世界話を聞きたいのか。魔王の関係者らしいな。

「にゅむっ、そーだね。ゆーせー君、お出かけしてきますー」
「ふふっ、レミアちゃん。いつからここは、キミのお家になったんだ?」
「にゅむっ! しばらく暮らしてたから、間違えちゃったよーっ」

 クスリと笑うと、レミアはほっぺを桜色に染めて人差し指同士をツンツンさせる。
 くそぉっ。また、ギャップ萌えに目覚めそうになるZE……!

「えっとえっと、ゆーせー君、少しの間バイバイだよー。また、遊びに来させてもらうねーっ」

 彼女は両手をブンブン振り、日本語とは異なる言語で呪文を唱える。
 奥さん奥さん。転移は特殊なアイテム等がいるみたいなんですが、英雄クラスになるとこれだけでワープできちゃうんですって。

「うーむ相変わらず、レミア先生の魔法陣は綺麗やにゃぁ。師匠、魔王先生のは特に美しいって評判ながよ」
「言われてみると見惚れちゃう鮮やかな黒色だし、絶妙なバランスで文字と模様が配置されてるね。二人の方はどんな感じなの?」
「色、模様、文字、並び全てが異なっていて、私達のも評判が良いわ。でもこんなに洗練されているのは魔王だけで、しかもワープする瞬間にもっと綺麗になるのよ」

 そりゃスゴイ。転移は見逃し厳禁だな。

「ゆーせー君っ、もーすぐ移動(いどー)するよー。カウントダウンさん、はじめるねーっ」
「うんっ。よろしくです」
「にゅむっ、ではではスタートー。じゅー、きゅー、はーち、なーな、ろーく、ごー、よーん、さーん、にーい、いーち、れーい」

 パリン
 カウントダウンが終わると、噂の綺麗な魔法陣が砕け散った。

「「「「????????????????????」」」」

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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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