第2話

文字数 288文字

正治さんは今年で88歳になる。
まだまだ元気な好々爺だが、かなり耳が遠い。
「正治さん、今日はお風呂の日ですよ」
「はー、聞こえねー」
いつもこんな調子だ。僕はわかりやすくジェスチャーを交えながら、浴室へ案内した。
正治さんはお風呂が大好き。今日もニコニコ顔で湯船に浸かっている。僕は安全のために、時々覗きにいく。
3分が経ち
「正治さん、のぼせるからもう上がりましょう」
「んー。いい気持ちだー」
「あ・が・り・ま・す・よ」
僕は叫ぶ
「いい湯だなあ」
「もうおしまい」
「聞こえねー」

僕は浴室に入り耳もとで叫んだ。
「早く出ろ!くそじじい」
パンチが飛んできた。

湯船には、耳糞らしきものが浮かんでいた。
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