第1話

文字数 372文字

「あー酒飲みてー」
真夜中に地響きのような声が聞こえた。
正治さんの部屋からだ。

ここは老人ホーム、正治さんは認知症はあるが、至って元気な好々爺。
ホームは、お酒も飲み過ぎなければ大丈夫。

ただ、正治さんがお酒を飲む姿は見たことないし、聞いたこともなかった。

正治さんは、若い頃を思い出したのかもしれないな。相当な色男だと自慢してたし。

お酒がきっかけで、記憶が甦るといいのだけど、何年も飲んでない人にはリスクが大きいすぎるよ。

「正治さん、お酒はないから、明日買ってくる。それまで我慢できる?」
普段は物静かな正治さんだが、
「早く酒持ってこんかーい」と
穏やかではない。

仕方なく僕は帰ってからの楽しみに買っていた缶をバックから取り出し、グラスに注いだ。

「これしかないよ」
「なんでもいい、早く飲ませろ」

「うーん。酒はうまい」

僕は見えないように隠した
リンゴジュースを
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