第4話

文字数 592文字

夜、予約無しで来た高齢の女性ふたり。
困る。
ジャージのまま、作業を終え風呂行かないとってタイミング。
飲ませろと。
「次は予約するから。」
いつもだ。
天然ナメコの網焼き、クジラ刺身、プレノワール手羽塩焼き。
天然きのこは今少ないからご予約に、って言ってもそんなの通用しない。
僕やこの店が好きなんじゃない。
ただ、飲む場所がない。
そういうニーズを拾う気が、僕にはさらさらない。
「一緒に飲もう!」
飲みたく、ないなあ。
ふたりとも知ってる。
死別、離別、色々ある。
子供は居るけど仲良くない。
さみしい。
この女性の話に、いつも思う事がある。
「わたしはいつも人にこんなにやってあげちゃうから。」
ならば、何故さみしい身の上か。
自分がやってあげちゃうって思う事を、みんなに押し付けてきたからだ。
それが自分を守りたい気持ちだけって、何故気づかないのか。
きみと、似てるんだ。
このまま行ったら、きみもこうなるよ。
もう僕には関係ないけれど。
僕も文句言いながら、相手の僕に対する勝手さと釣り合うように。
酔ってるから、余分に金を置いてく。
酔ったおばさん支えて店のスロープ、よろけたおばさん、僕も酔ってるから一緒にコケた。
なんとか車に乗せて、見送りもせず店に戻る。
ホストみたいな営業しちゃった。
これじゃ、前と一緒だ。
眠る車中、前の彼女とアンコウ鍋食ってSEXする夢を見た。
うん、すっかりきみを忘れられたよ。
ちょっと大変だったけど。
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