終わり
文字数 699文字
最後の一人は、無事生き残ったというのに、あっさりとした返事をするだけであった。生気が無いからとか、悲嘆や憂鬱の類ではない。「そんなことはどうでもいい」そういった顔であった。
映画等からして私の想像していたものとはかけ離れていた。もっと生の感情が剥き出しの阿鼻叫喚……逆に高邁さをそれでも尚説こうとする……そういったものは全く存在しない結果。
「一切の感情を失ったキャラ」が出てくる作品もあったが、ああいうのが一同に会したのならば近いのではないだろうか。
気味の悪い、けれど貴重なサンプルが取れたと自らを納得させ、別れを告げようとした際に彼は言った。
私……いや、周囲の者もきっと言葉をなくしたろう。
彼は極めて平然と、いや、真剣ですらあった。実験のさなかにすら見せなかった表情で私に要求しているのだ。
けれど私は咄嗟に言うべきものが何もなかった。「あ……う……」とか情けなくも、その程度が精一杯だった。
吐き捨てる彼を呆然と見送るしかできなかった――