終わり

文字数 699文字

おめでとう。君の優勝だ。安心したまへ、君は日常に戻れる――
はあ……

 最後の一人は、無事生き残ったというのに、あっさりとした返事をするだけであった。生気が無いからとか、悲嘆や憂鬱の類ではない。「そんなことはどうでもいい」そういった顔であった。

(興味深いものが得られたといえばそうなんだが……)

 映画等からして私の想像していたものとはかけ離れていた。もっと生の感情が剥き出しの阿鼻叫喚……逆に高邁さをそれでも尚説こうとする……そういったものは全く存在しない結果。

 「一切の感情を失ったキャラ」が出てくる作品もあったが、ああいうのが一同に会したのならば近いのではないだろうか。

(そんなのを選り集めたと? いや、集められていた段階では「ありきたり」な反応だったじゃないか)
 気味の悪い、けれど貴重なサンプルが取れたと自らを納得させ、別れを告げようとした際に彼は言った。
あのー、何がもらえるんです?
 私……いや、周囲の者もきっと言葉をなくしたろう。
デスゲームなら最後の一人に莫大な財産が~とかお約束じゃないですか?

 彼は極めて平然と、いや、真剣ですらあった。実験のさなかにすら見せなかった表情で私に要求しているのだ。

 けれど私は咄嗟に言うべきものが何もなかった。「あ……う……」とか情けなくも、その程度が精一杯だった。

ないの? なにそれクソゲッ!
 吐き捨てる彼を呆然と見送るしかできなかった――
……クソゲー……??
(確かにデス「ゲーム」だ。しかし、当時社会現象にまでなったものがたかが「ゲーム」だというのか? 当時のセンセーションは未だに私の中に刻まれている。だからこそ、こうして現実に起こしてまで……――)
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