第1話

文字数 880文字

 山形県余目(あまるめ)-新庄(しんじょう)間 43 km を最上川に沿って走る通称「奥の細道最上川ライン」、JR陸羽西線が並走する国道のトンネル関連工事のため、2022年5月14日から2024年度中までの予定で全線で営業を休止し、バス代行になって約1年が経過した。
 トンネル工事区間の高屋(たかや)-古口(ふるくち)駅間のみをバス代行にするのではなく、約2年間もの予定で全線を休線にしたのだ。その後、陸羽西線は2022年7月に、国主導の存廃協議の対象路線に含まれた。
 最初は地域住民に、「このままなし崩し的に廃線になるのではないか?」といった危機感や、JR東日本、行政に対する不信感はあったが、今は「ど~でもいいの~」といった諦めを感じる。
 鉄道は重要な社会基盤の一つだ。もちろん地図にも記載されている。その山形県内に起点と終点を持つJRの路線が一つ消えるかも知れないのだ。これは只事ではない。
 その対策として、列車の運行時刻に合わせて代行バスを走らせ地域の利便性を確保している、筈なのだがこの効果は怪しい。代行バスは立派な高速バスの車両だ。が、余目-新庄間の所要時間が約30分くらい延びた。腰が曲がって杖を突いた爺婆には、高速バス車両の出入り口の段差は途轍(とてつ)もなく大きい。利尿剤を処方された高齢者の患者さんは、車内にトイレがないと病院に通院もできない。冷え切った吹雪の午後に、国道沿いの屋根のないバス停に佇んでバスを待つ余裕など全くない。だから私の知る限り、代行バスを利用した人は数名しかいない。
 「代行バスが不便だから利用しない」という事実は、「陸羽西線を利用する沿線住民が減少した」にすり替えられ、きっと廃線に追い込まれるのだろう。
 寂しいの…。
 んだ。

 写真は、2018年4月に撮影したJR陸羽西線狩川(かりかわ)駅の満開の桜の下を行く新庄行普通列車である。
 これは過ぎし夢。

 この写真は2023年4月、同じく狩川駅で撮影した満開の桜と錆びた線路だ。 

 これが厳しい現実。廃線の予想は、どうか間違いであって欲しい。錆びた線路に気動車のディーゼルの唸りが力強く響く日が戻ることを切に祈る。
 ふ~。
(2023年4月)
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