五山送り火

文字数 598文字

2019年8月16日。
宇宙人∉と¶は上空から、大文字・妙法・船形・左大文字・鳥居形、5種の揺らめきを目に焼き付けた。

彼らは毎年この時期、五山送り火を楽しみに京都まで飛んでくるのである。
船形や鳥居も面白いけれど、もっとも雄大な感じのする東山如意ヶ嶽の大文字を、彼らは一番好んでいた。

「あそこへ、降りてみよう」

∉と¶は如意ヶ嶽の、火のかかっていない場所に宇宙船を着陸させた。

「オレ、お座敷遊びって一度やってみたいんだよね」
「うむ。舞妓さんと野球拳したいな」

∉と¶は宇宙船を抜け出し、京の街中へ降りた。ビルの裏でふたりとも、金持ちの社長に姿を変えた。

∉と¶はコンビニへ行き、店員の目を盗んで一万円札をくすね、それを一千枚ほど複製し、金をつくった。

「ブラックジャックでやってた方法だ。後でバレるけど、オレたちなら足は付かない」

さて、ふたりして祇園へ向かおうとすると、何やら、周りの見物人が騒がしい。彼らの視線の先をたどると、如意ヶ嶽の「大」の字が「太」になっている。

「あ、宇宙船の『電気』を消すの忘れてた」

∉が舌を出した。大の字のちょうど真ん中に、宇宙船を停めていたのであった。

「京大生が、とうとうやりおった。罰当たりめが」

横の老人が、何やらぶつぶつ言っている。

すぐに宇宙船へ戻らねば、と思ったが、∉と¶は舞妓さんの誘惑に勝てず、祇園へ向かった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み