第二話 隠された真実

文字数 1,922文字

 高い崖の上から二筋の水が飛沫となり虹を作っていた。
 シュピーゲル兄弟が崖の上で並んで立ちションをしていたのだ。
「最近は一緒にお風呂に入ってないから久しぶりに見たんだけど、お前のホクロってまだあるんだな」
 ゲオルグはフランクのオチンチンのホクロを見ていた。
「そりゃそうさ、兄さん。このホクロがない奴が現れたら、そりゃ俺に成りすました偽物だよ。
 たとえ、俺の顔がグチャグチャにされても、このホクロで俺って分かるぜ」
 オシッコが終わり、掴んでいたモノをピッピッと振り滴を払うフランク。
 ゲオルグもし終わり、ズボンの中に収めた。
「さあ、あの山を越えればシャフトラント公国だ」
 国境を越えシャフトラント公国へ入ったシュピーゲル兄弟。二人がシャフトラント公国の首都アインシュタットに入ると、そこは人で溢れかえっていた。
 辺境の国と言えどもさすが首都。大勢の人たちが往来を歩いていた。
「うわー、人がいっぱいだ。見て、兄さん! 若い女の人も居るよ」
「あんまりキョロキョロするな。恥ずかしいだろ」
「ねぇ、兄さん、ウンテル・リンデンさんのところに行くのは明日にして、今日は町で遊んでいかない?
 旅のお金だって必要以上に貰ってるんでしょ? これって、町で遊んでこいっていう父さんの粋な計らいなんだよ」
「馬鹿なこと言ってると置いていくぞ」
「ほらあそこ、兄さん好みの巨乳の人が手招きしてるよ」
「うっ、どうしよう……。ちょっとくらいいいかな? いやダメだダメだ。父さんの用事を済ませてからだ」
「えー」
 シュピーゲル兄弟が地図に描かれたウンテル・リンデンの住処を訪ねた。
 出てきたのは白髭の老人。
「誰じゃ?」
「ジークフリート・シュピーゲルの息子、ゲオルグ・シュピーゲルです」
 ゲオルグは父親に貰った剣の柄を見せた。
「おおぉ、ゲオルグか! 大きくなって。そっちは?」
「弟のフランクです」
「フランク・シュピーゲルです」
「ふむふむ。お母さんに似てきたようだな。立ち話もなんだ。家へお入り」
 家の中に案内されるシュピーゲル兄弟。
「実は、そろそろジークフリートが来る頃だと思っていたんじゃよ」
「?」
「なんだ? 何も聞かされておらんのか?」
「僕らはただ会いに行けと。話は通してあるからって」
「ふむ、そうか……」
「なにかあるんですか? 教えてください」
「そうか、ならば聞くがよい。ミッテルラント王国の真実を!」
 白髭の老人は二人に向かい、隠された歴史を話し始めた。
「実は……わしはミッテルラント王国に仕える魔法使いだったのじゃ」
 白髭の老人はミッテルラント王国の紋章が入った指輪をシュピーゲル兄弟に見せた。
「18年前、ライヒェンゲル帝国が城に攻め入っていた時に、わしと騎士団長は、国王と王妃に生まれたばかりの王女を逃がしてくれと頼まれての。
 なんとか逃がしたのはいいが、ルードバッハ皇帝が王族を根絶やしにするため、旧ミッテルラント王国中の1歳以下の女の子をみんな殺す命令を出したんじゃ」
「それ、聞いたことがあります。」
「俺も」
「そこで、わしは王女が見つからないようにする魔法をかけて、騎士団長に預けることにしたんじゃ」
「じゃあ、ミッテルラント王国の王女はまだ生きているってことですね?」
「そうじゃ。今も騎士団長の元に」
「その騎士団長の名前は?」
「ジークフリート・シュピーゲル。お前たちの父親じゃ」
「「えっ!」」
「じゃあ、行方不明の王女様の隠れ場所を父さんが知っていると……」
「魔法によりライヒェンゲル帝国には見つからないようになってるがの。
 ほれ、これを持っていけ。王女にかけた魔法を解くアイテムじゃ」
 出されたのは小さな水晶玉。
「この中に王女の魂の一部を閉じ込めてあるのじゃ。これを割れば王女の魔法が解けるのじゃ」
「兄さん、王女様だって! 急いで家に帰ろう!」
 ウンテル・リンデンの家を出たシュピーゲル兄弟は、急ぎ旧ミッテルラント王国の家を目指した。
「凄いよ兄さん。父さんが王女様の隠れ家を知ってるなんて」
「ああ、全然知らなかったな」
「ひょっとしたら、これで王女様とお近づきになれて、俺か兄さんのどちらかと結婚てなことになったりして……」
「ちょっと落ち着けよフランク」
「村には若い女の子は一人も居ないしね。兄さんだってもう20歳なんだし、結婚しててもおかしくないじゃない。気にならない?」
「そりゃあ、まぁ、僕も男だしな。ちょっとは気になるかな」
「でしょ? どんな子だろう? 楽しみだなぁ、王女様」
 まだ見ぬ王女様の姿を思い描き、妄想に耽るフランクであった。
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