第1話 時空を超えて

エピソード文字数 2,735文字

机に向かっていた。いや厳密にはスマホに向かっていた。

もう古くなったスマホ、動きが鈍い。あまりに反応が遅いのでイラつき、画面を連打してしまう。

壁時計は、既に2時12分を指していた。秒針が淀んだ空気を刻んでいく。

イラついていた。理由は分かっている。

帰り際に立ち寄ったコンビニに、今はまっているブルーベリーホイップクリームパンが無かったからだ。

今日は夜中に2つ、朝起きてひとつ、だから3つ買う予定だった。

気合いをいれて走り込んだコンビニの棚には、あるべき空間のみが空しく目に突き刺さった。

ざけんなよ!売り切れちまった。どっかのバカが買い占めたのかもしれない。

もしかしたら大物政治家かそれとも大企業の社長かもしれない。

ベリーちゃんがあったはずのスペースは、ぽっかり空いた空しい心の穴のように寂しい。

振り向きざまに、コンビニの若いバイトの娘さんに声をかけた。

「嬢ちゃん、ちょっといいかい?」

怒ってる訳じゃねえけど、確認したかっただけだ。

「ベリーちゃんは、今日はお留守かい?」

「えっ、ベリーちゃんって、ブルーベリーのホイップクリームパンですか?」

「そう、そのベリーちゃんは今日はお留守なのかい?」

「そちらの棚に無ければ売り切れです」

「無いから聞いてるんだよ。あったら聞きやしねぇよ」

「申し訳ありません」

「謝ることじゃねえよ。確認したかっただけなんだ。悪かったな、嬢ちゃん」

結局、代わりのミルクフランスを3つ買い込んで帰宅した。

春は名ばかり、まるで木枯らしみたいな冷たい風が街中を我が物顔に吹き回っていた。

しかし、風呂場に飛び込んで凍えるような冷たいシャワーを、頭から浴びて雑念を洗い流した。

小説を書いている。もちろんプロではないが、趣味で小説やイラストエッセイ、ブログや俳句なども書いている。

かってはエゴイストって呼ばれる投稿サイトが主戦場であった。他にもいくつかのサイトにおいて投稿している。

エゴには足掛け何年かはいるが、我儘でマイペースな性格なので、クリエイター仲間などほとんどいない。

既に数回退会していた。ムカつくとぶっ飛ばすバカな性格は、相変わらず変わらない。
とるに足らない些細なことで何回も退会し、性懲りもなくもう何回目かの再入会である。

初めは三日月風介と名乗った。
名前の由来は、千葉県にあるリゾートホテル三日月竜宮★が好きで、何度も通っていたからである。

風介の由来、風は風来坊、介はとるに足らない。つまりとるに足らない風来坊だから、風介なのだ。

退会し再入会。次のネームは夜空夢丞。ふと思いついたネームである。

クリエ活動においてそれなりの実績を残し、さらに三日月風介と夜空夢丞を会わせ夜空風介とネームを変更した。

睡眠時間を削り、20本ばかりの自作小説の創作を行いながら遊んでいる、おバカなおじさんだ。

今日書いてる小説のネーム?
『風介粋姿』という小説だよ。

どんな小説かって?
わかりゃしねえよ!
まだ書き始めたばかりなんだぜ。

大きな方向性はないのかって?
あんまり考えちゃいねえんだよ。

ただ作者の風介が、時空を超えて浮世絵の時代に舞い込んで、度胸と魔力を携えて大暴れする、まあ風介の自伝的空想小説だな。

どうやって時空を超えるかって?
わかんねぇよ、そんなもの。

今回もいつもの小説と同じ、適当に思いつきで書いてるんだから。

どういうシナリオでどういう風に展開するのかは、打ち込むスマホのキーを叩いている指先に聞いてくれよ。

分野は何にするか?
ファンタジー? 伝奇? ギャグ?
まあとりあえず童話じゃねえし、絵本じゃねえし、ホラーじゃねえな。

しょうがねえから、とりあえず分野はSFしかねえか・・・・・

既に2時21分を過ぎていた。
まもなく現世と過去未来がつながる魔の時間が訪れる。

えっ、知らねぇのかい。2時22分22秒のことに決まってるだろう。神代の昔から語り継がれている時空間に歪みが発生する時間のことさ。

本来、1日というのは24時間ではない。正確に言うと約24時間と1分である、いやあったんだよ。

しかし、毎日1分という半端な数字が付くと面倒であるため、1分×364日=364分=6時間。

6時間×4年=24時間=1日。
この1分の端数を4年分まとめて1日加えたのが閏年なのである。

本来は1日=24時間1分を1分隠し、24時間にしているため、毎日1分ずつあるはずなのに、あってはならない時間のズレが生じている。

それが神代の昔から闇の世界に語り継がれている魔空の時間なんだよ。

毎日、2時22分22秒から1分だけは、時空間に歪みができ、現世と過去未来が融合する時間なのだ。

この1分という隠れた時の間に入り混むと、過去や未来に迷い混んじまうのさ。

ただし時の間に入り込むためには、時の扉を開かねばならねえんだ。

扉といっても物理的扉じゃあねえ。
心理的、観念的な扉のことさ。

扉を開く条件は、1分の間に①現世にはさほど未練はない、②現実には存在しない扉を認識できる、③時空間の歪みの混沌を理解できる、者のみが原則かな。

扉から過去や未来に迷い混み神隠しにあう者、年に数人はいるのさ。

まあ、どういう話になるのかまったく検討はつかねえな。

ただし、自伝的空想系の小説だからな。かなりの部分は、風介の真実であり史実を織り込んでるんだ。

まあ結構『フカシ』も入ってるから、どれが真実でどこがフカシかは読まれる皆さんの想像に任せるよ。

風介が浮世絵の世界に紛れ込んだのいつだって?おい、おい、慌てなさんなよ。

話はこれから始まるんだぜ。
答えを急いじゃいけねえよ。

話せば長い話になりそうだ。
冷てえシャワーは浴びたし、既に着替えた真っ赤なTシャツに迷彩のハーフパンツ姿だ。

ロッキングチェアにハーパーとノアール、もちろん冷したグラスにライター、灰皿も用意させてくれよ。

ハーパーはIWハーパー、アイザック、ウォルフバーンハイムが作ったバーボンだよ。

ノアールはタバコさ。ライターは当然ジッポだけどな。風介は40個ばかりコレクションしてるから、今日は限定もののシルバーのトルネードドラゴン。

さあチェアよ心を休めてくれよ。
左手に持つグラスは江戸切子の重ね矢来文様。ハーバーをロックで。

乾いた喉をハーバーで潤したら、ノアールを軽くくわえてジッポをカチンと鳴らす。

あとは紫煙を天井に燻らすだけさ。
さあ、準備は良いかい?
そろそろ物語が始まるぜ・・・・・

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