第7話
文字数 1,747文字
修学旅行は何のハプニングもなく無事に終わった。強いて言えば、自主研修の終わり頃、あとはホテルに帰るだけの状態で私がお手洗いから出てきたら、ハリーくんが「修学旅行中に告白しようとしたけど、タイミングと勇気がなくて無理だった」と前田くんにボソッと言ったのを見てしまったくらい。前田くんも「確かにタイミングなかったな」と言っていたので、あまり接点がない1、2組の子なんだろう。
「よーし、みんな荷物持ったな、解散!」
空港に迎えが来ている生徒も一定数居るため、空港からは各自移動となった。空港直結の電車に3人で乗り込む。修学旅行中、3人でプリクラもカラオケも行けなかった。やはり先生方にダメと言われたらしい。自称オンチで自称不細工な兄ちゃんが連れて行ってくれない2つ、行ってみたかったなぁなんて思っていると、自分たちの住むエリアへ向かう電車で左横に座っていたハリーくんが「ゲーセン寄らない?」と誘ってきた。
「2人とも帰るの遅くならない?」
「問題なし。兄ちゃんと合流するまで時間潰すと思って」
「前田と俺は、俺の親が適当な時間に迎えに来るから心配なく」
3人とも今乗っている特急で私が住む南高のあたりで降りる。今日は私も兄ちゃんも塾がないので、兄ちゃんの生徒会引継ぎが終わり次第、駅まで迎えに来てくれる。優しいとは思うけど、両親が知ったら兄ちゃんの勉強時間を奪うなと怒られそうだ。
大きなキャリーをガラガラと音を立ててゲーセンに入ると、いつものゲーセンが違ったものに感じる。数日来なかっただけなのに、景品がかなり変わっている。目移りしながら何も考えずに2人の後をついて行くと、いつも近寄らなかった辺りに居た。複数の四角い箱、表面には可愛らしい女の子たち。
「……これって」
「ご希望の、プリクラですよ」
「でも、荷物見張り兼兄ちゃんからの連絡を確認する奴必要だからハリーと2人で撮ってくれ」
前田くんがそう言うと、ハリーくんが目の前の箱にお金を入れて液晶をポチポチと操作しだした。画面を覗き込んでも何が行われているのかサッパリだ。
「ハリーくん撮ったことあるの?」
「今日のためにこの機種の操作動画見てきた」
「ありが……って、えっ!? カップルモード選んだ!?」
「良いだろ、好きな人とプリクラ撮るんだからカップルモードで」
「まっ、えっ、私!?」
思わず大きな声が出る。後ろに居る前田くんが「気づけよ鈍感」と言ったので振り返ってしまう。口パクで「本当?」と訊くと、静かに1回頷かれた。ハリーくんの顔が……
「たまに顔赤かったのって照れてたの!?」
「それ今言うな!」
「いや、私なんかで顔赤くすると思わないじゃん!」
「私なんかって言うな! 入るぞ!」
腕を引っ張られながら暖簾をくぐる。リュックをハリーくんの言われたところに置き、ささっと目の前の画面で髪を直す。画面に出てくるモデルさんのポーズの真似をしろって言われて、分かったって言ったけど……距離感近いな……。
「お前も顔赤いじゃん」
「耳元で囁かないでよ」
「ほら、1枚目撮るぞ」
そこからがあっという間だった。何ポーズかしたあと、右のブースに移動しよーみたいな声がして、荷物を持って慌ててハリーくんと出て、顔の補修や日付のスタンプを押してデコる作業をして、気がついたら何かポストのような所からカードが出てきた。
「はい、お前の分」
「あ、ありがと」
手の中には、2人で頭をくっつけてシンプルにピースしているプラスチックのカード。こんなポーズいつしてたんだ。そして、いつこのポーズを選んでいたんだ。ハリーくんは1枚目の私が顔を真っ赤にして、後ろから抱きしめられてるような構図のものを選んでいた。
「な、なんでそれ」
「初めての1枚目って、なんか特別じゃない? お前、最後のポーズにしてたし」
「なる、ほど……」
「うわぁ、妹が目の前でリア充してる、萎えそう」
「兄ちゃん! いつから居たの!?」
「ちょうどハリーが告ったあたりだな」
「お兄さん、それは早すぎません!?」
「まぁ、俺はハリーなら良いと思ってるけどな。妹、今日は帰るぞー」
「は、はい! じゃあね!」
慌ててリュックにカードをしまって2人に手を振る。いつからか振り返してくれるようになった2人の手が、今日はいつもより輝いて見えた。
「よーし、みんな荷物持ったな、解散!」
空港に迎えが来ている生徒も一定数居るため、空港からは各自移動となった。空港直結の電車に3人で乗り込む。修学旅行中、3人でプリクラもカラオケも行けなかった。やはり先生方にダメと言われたらしい。自称オンチで自称不細工な兄ちゃんが連れて行ってくれない2つ、行ってみたかったなぁなんて思っていると、自分たちの住むエリアへ向かう電車で左横に座っていたハリーくんが「ゲーセン寄らない?」と誘ってきた。
「2人とも帰るの遅くならない?」
「問題なし。兄ちゃんと合流するまで時間潰すと思って」
「前田と俺は、俺の親が適当な時間に迎えに来るから心配なく」
3人とも今乗っている特急で私が住む南高のあたりで降りる。今日は私も兄ちゃんも塾がないので、兄ちゃんの生徒会引継ぎが終わり次第、駅まで迎えに来てくれる。優しいとは思うけど、両親が知ったら兄ちゃんの勉強時間を奪うなと怒られそうだ。
大きなキャリーをガラガラと音を立ててゲーセンに入ると、いつものゲーセンが違ったものに感じる。数日来なかっただけなのに、景品がかなり変わっている。目移りしながら何も考えずに2人の後をついて行くと、いつも近寄らなかった辺りに居た。複数の四角い箱、表面には可愛らしい女の子たち。
「……これって」
「ご希望の、プリクラですよ」
「でも、荷物見張り兼兄ちゃんからの連絡を確認する奴必要だからハリーと2人で撮ってくれ」
前田くんがそう言うと、ハリーくんが目の前の箱にお金を入れて液晶をポチポチと操作しだした。画面を覗き込んでも何が行われているのかサッパリだ。
「ハリーくん撮ったことあるの?」
「今日のためにこの機種の操作動画見てきた」
「ありが……って、えっ!? カップルモード選んだ!?」
「良いだろ、好きな人とプリクラ撮るんだからカップルモードで」
「まっ、えっ、私!?」
思わず大きな声が出る。後ろに居る前田くんが「気づけよ鈍感」と言ったので振り返ってしまう。口パクで「本当?」と訊くと、静かに1回頷かれた。ハリーくんの顔が……
「たまに顔赤かったのって照れてたの!?」
「それ今言うな!」
「いや、私なんかで顔赤くすると思わないじゃん!」
「私なんかって言うな! 入るぞ!」
腕を引っ張られながら暖簾をくぐる。リュックをハリーくんの言われたところに置き、ささっと目の前の画面で髪を直す。画面に出てくるモデルさんのポーズの真似をしろって言われて、分かったって言ったけど……距離感近いな……。
「お前も顔赤いじゃん」
「耳元で囁かないでよ」
「ほら、1枚目撮るぞ」
そこからがあっという間だった。何ポーズかしたあと、右のブースに移動しよーみたいな声がして、荷物を持って慌ててハリーくんと出て、顔の補修や日付のスタンプを押してデコる作業をして、気がついたら何かポストのような所からカードが出てきた。
「はい、お前の分」
「あ、ありがと」
手の中には、2人で頭をくっつけてシンプルにピースしているプラスチックのカード。こんなポーズいつしてたんだ。そして、いつこのポーズを選んでいたんだ。ハリーくんは1枚目の私が顔を真っ赤にして、後ろから抱きしめられてるような構図のものを選んでいた。
「な、なんでそれ」
「初めての1枚目って、なんか特別じゃない? お前、最後のポーズにしてたし」
「なる、ほど……」
「うわぁ、妹が目の前でリア充してる、萎えそう」
「兄ちゃん! いつから居たの!?」
「ちょうどハリーが告ったあたりだな」
「お兄さん、それは早すぎません!?」
「まぁ、俺はハリーなら良いと思ってるけどな。妹、今日は帰るぞー」
「は、はい! じゃあね!」
慌ててリュックにカードをしまって2人に手を振る。いつからか振り返してくれるようになった2人の手が、今日はいつもより輝いて見えた。