第6話

文字数 770文字

 無理やり参加させたから計画とかは全部2人でやる、という言葉に甘えさせてもらい、諸々全てを2人に任せてしまった。夏休みも家族の揉め事がない限りは勉強に集中させて貰った。

 明後日から修学旅行、そんなタイミングの総合の授業冒頭で「帰ったら席替えだぞー」と担任が言って、心がすごくゾワゾワした。

 左横は窓ガラス、前にハリーくんが居る、4月からそれが当たり前の景色になっていた。仲良くなる前から授業中とか、休み時間とか、たまに振り返ってきてた時の表情はいつも違っていて、不思議な人だと思っていた。学祭の打ち上げがきっかけでこんなに仲良くなるとは思わなかった。

「今から箱回すから、1人1枚引くようにー」

 ハリーくんが寂しそうな顔で渡してきた。今生の別れじゃないんだから、なんて言おうかと思ったけど伝わらなさそうだからやめた。適当にとって横に渡す。目の前のクジには8と書かれていた。

 私たちがクジの箱をまわしている間に担任が座席を黒板にかいていた。窓ぎわの1番前が1、そこからうしろに2、3、4と続き、その横の列の1番前が9、廊下側の1番後ろが40である。……え、私8?

「目が悪いとか都合悪いヤツいたら前に言いに来てくれー」

 その声を皮切りにクラス内が騒がしくなる。ハリーくんが振り返って私の紙を覗いてくる。

「お前おんなじじゃん」
「ハリーくんは?」
「俺39で前田は40」
「今度はそこで前後なのね」
「お前またぼっちになるじゃん」
「そうだね」

 慣れてるって、何故か言えなかった。また教室で1人音楽を聴くか本を読むかの生活だ。寂しい……気がする。

「まあ、大丈夫だよ、右向いたら俺居るよ。離れてっけど」
「離れすぎだよ」
「……そんなこと言うようになったんだな、成長したな」
「成長なのかな?」

 そうハリーくんの目を見ながら訊くと、なぜかハリーくんの顔が赤くなった。
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