第1話

文字数 1,305文字

 【情報】とは、「伝えられる内容」のことである。主に「伝達」という行為においてやり取りされる事実、知識、データ、合図(信号)等々、あるいは、その事実や知識を伝達するという行為そのもの。(weblio 辞書から引用)
 今、情報が凄い速さで増え続けている。
 自分の医学の専門分野でも最新情報に追いつけない。ふ~。
 先日、当院に研修に来ている内科専攻医の先生から聞いた話だ。要約すると、
 「1950年から医学に関する情報が倍になるのに50年を要した。今は医学の情報が倍になるのに73日しかかからない。」そうだ。(←これはえらいこっちゃ。)
 だから今時(いまどき)の若い医師は、いかに早く知りたい情報にたどり着けるかが問われる。患者を診察して思考過程を経て診断に至るだけではない。いかに患者の状態に関連する情報を探し出すか?が重要なのだ。そこには診断基準等が記載されていて患者の状態を当てはめて診断に至る。その治療方針はガイドラインに沿って決まることが多い。診断基準も治療のガイドラインも常に最新版に更新されていく。
 しかもたどり着いた情報が正しいとは限らない。情報の真偽も自分で判断しなければならないのだ。一昔前は、世界的な雑誌に掲載された論文はすべて正しいと信じられていた。(少なくとも自分はそう思っていた。)が、最近ではノーベル賞級の研究論文が掲載される雑誌にも捏造されたデータが掲載される時代になった。取り扱う情報の専門性が高く、またその範囲も多岐に広がり、情報の量が多過ぎて、検証が追いつかないのだ。
 今、情報まみれの現代社会のSOSとして、情報過多による脳疲労が問題となっている。視覚や聴覚から入って来た多量の情報を脳が処理しきれなくなって、脳がオーバーヒート状態になる。睡眠不足や集中力がなくなったり、記憶力が低下して、時には若年認知症と間違われたりする。
 しかも最近は、動画を2倍速、4倍速と早送りで観る。情報の量が増えただけではなく伝達の速さも増してきた。
 情報を追い続けるのはいいが、健康を害してまではやり過ぎだと思う。

 さて写真は2023年3月21日、羽越本線「余目(あまるめ)のS字カーブ」を行く上り貨物列車である。

 この「余目のS字カーブ」は全国的に有名な撮影地だった。しかし、余目酒田道路が立体交差でカーブの上を横切り、またカーブの線路に接して墓地ができ、それが情報として拡散され今は、訪れる人は地元の撮り鉄以外には殆どいない。
 しかし、墓地が映っているのもまたいいのだ。この構図だと、雪を戴いた鳥海山を背景にできる。撮影日が彼岸の中日だったので、墓参りをしている人が映ればもっと良かったのにと思う。
 定番の撮影地に撮り鉄が殺到し、醜い場所取りをして近隣に迷惑をかける記事が出る。それをあるプロの鉄道写真家がこき下ろしていた。所詮(しょせん)、皆、ある情報をもとに同じ場所に集まり、皆と同じ写真を撮って満足する。彼らは全く思考が停止していて、そんな人達にいい写真が撮れる筈がない、と。
 成る程、と思う。いくら情報を追いかけるだけでは真実は見つからない。何が真実かを考え、見極(みきわ)めることが大切なのだ。

 んだんだ。
(2023年5月)
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