第3話 大掃除は大変 ③
文字数 3,952文字
おそるおそる近づき、地面を這う黒い物体に箒の一撃をお見舞いしようとした瞬間。
思い出す。
思い出す。
ピタリと振り下ろそうとした箒を制止。なんとか塵取りに入れようと必死に誘導するが。
先程までノロノロしていた動きが、急に俊敏になり、逃げるように塵取りから離れていく。
先程までノロノロしていた動きが、急に俊敏になり、逃げるように塵取りから離れていく。
向かった先にはリビングの入口。
扉の下の隙間からスッと、逃げ出していく。
扉の下の隙間からスッと、逃げ出していく。
数秒の静けさの後。
キャァァアアアアア!
どうやら、夏目があれと接敵したようだ。
ガシャン、バリン! ドガガガ! というすさまじい騒音が聞こえる。
そして、こっちに騒々しく向かってくる足音。
バン! と勢いよく放たれた扉から現れたのは、必死の形相で両手に殺虫スプレーを構えた夏目の姿だった。
はぁ、はぁ、と肩で息をして、その顔色は真っ青だった。
そして、当然俺を睨んで凄んできた。
ガシャン、バリン! ドガガガ! というすさまじい騒音が聞こえる。
そして、こっちに騒々しく向かってくる足音。
バン! と勢いよく放たれた扉から現れたのは、必死の形相で両手に殺虫スプレーを構えた夏目の姿だった。
はぁ、はぁ、と肩で息をして、その顔色は真っ青だった。
そして、当然俺を睨んで凄んできた。
とりあえず夏目から殺虫スプレーを受け取り、再度Gを探すことに。
しかし、今度は中々見つからない。
薄々、夏目も気づいているとは思うが、それを口に出さない。
このままじゃあ埒が明かないので切り出すことにした。
しかし、今度は中々見つからない。
薄々、夏目も気づいているとは思うが、それを口に出さない。
このままじゃあ埒が明かないので切り出すことにした。
二階にある夏目の部屋。
一階のリビングから二階に上がる事が出来るかは分からないが、他の部屋はしらみつぶしに調べて何もないので、もう残ったのはそこしかないのだ。
一階のリビングから二階に上がる事が出来るかは分からないが、他の部屋はしらみつぶしに調べて何もないので、もう残ったのはそこしかないのだ。
夏目は指を唇にあてがい、悩む。
そして、よし! という威勢の良い声が出る。どうやら、意を決したようだ。
そして、よし! という威勢の良い声が出る。どうやら、意を決したようだ。
提案された要求を言下で突っぱねた後、二階へと向かう俺と夏目。
階段を上り、フローリングの廊下を歩いて夏目の部屋の前に来る。
扉の前には『夏目』というハート型のネームプレートがかかっていた。
こういう時にあれだが、ドキドキしてきた。今から好きな女の子の部屋に入るとなると。
階段を上り、フローリングの廊下を歩いて夏目の部屋の前に来る。
扉の前には『夏目』というハート型のネームプレートがかかっていた。
こういう時にあれだが、ドキドキしてきた。今から好きな女の子の部屋に入るとなると。
何処からともなく取り出したのは細長いスポンジ。
それを、扉の下にある隙間を埋めていく。
それを、扉の下にある隙間を埋めていく。
夏目の部屋にある扉のノブに手を掛ける。
とりあえず、夏目を納得させた後、気を取り直して扉のノブに手をかける。
そして、ゆっくりと中へと入る。
そして、ゆっくりと中へと入る。
バタン、と部屋の入口が閉まると、そこには勉強机とベッドがあり、アイドルのポスターが壁に貼られていた。ベッドの上には抱きしめれるぐらいの大きなクマのぬいぐるみがあった。
部屋の臭いに気を使っているのか、アロマか何かの芳しい臭いが漂っている。
少し、部屋の新鮮さに気を取られるが、その中央に、まるで部屋の主と言わんばかりにふんぞり返っているGを発見する。
部屋の臭いに気を使っているのか、アロマか何かの芳しい臭いが漂っている。
少し、部屋の新鮮さに気を取られるが、その中央に、まるで部屋の主と言わんばかりにふんぞり返っているGを発見する。
Gに向けて俺は殺虫スプレーを向け、思いっきり噴射させる……が。
シュッ、シュッという空しい音が響く。
シュッ、シュッという空しい音が響く。
沈黙が訪れる。
おそらく、さっき夏目が暴れ回った際に使いきったのだろう。
回らない。
思いっきり回すが、ビクともしない。
思いっきり回すが、ビクともしない。
ドンドン、扉を叩いていると、扉の下から何か管のようなものが出てくる。
そこからまさかの煙が噴き出してきたのだ。
刺激臭のある煙。明らかに、殺虫成分の含んだ煙だった。
そこからまさかの煙が噴き出してきたのだ。
刺激臭のある煙。明らかに、殺虫成分の含んだ煙だった。
煙が充満してきて苦しくなってきた。
このままじゃあ、G共々夏目に殺される。
仕方ないので、部屋についてある窓を開けようとするが……あろうことか、窓の鍵が溶接されていた。
このままじゃあ、G共々夏目に殺される。
仕方ないので、部屋についてある窓を開けようとするが……あろうことか、窓の鍵が溶接されていた。
俺は机の椅子を持ち上げ、勢いよく窓のガラス部分にたたきつけた。
ガン! という音がするだけで割れない。
ガン! という音がするだけで割れない。
狭い部屋の中では逃げ場はない。
もう、部屋の中に白い煙が充満し、中央に居たGはもがき苦しむように部屋中をカサカサ動き回ると、途端に身動き一つしなくなり、やがてひっくり返る。
もう、部屋の中に白い煙が充満し、中央に居たGはもがき苦しむように部屋中をカサカサ動き回ると、途端に身動き一つしなくなり、やがてひっくり返る。
こっちもヤバイ。
ゴホゴホと咳込みながら扉を叩く。
ゴホゴホと咳込みながら扉を叩く。
流石にあと30分とかならまだ何とかなるが、24時間は無理だ。
打開策を講じる必要性がある。
この命の危機に、俺は咄嗟に閃いた。
打開策を講じる必要性がある。
この命の危機に、俺は咄嗟に閃いた。
掌をあっさり返した後、夏目は開ける事を了承する。
やっと出られると、思った時。
がちゃ、がちゃ、とドアノブが動かない。
やっと出られると、思った時。
がちゃ、がちゃ、とドアノブが動かない。
ごめんね、と反省の色がない声が扉越しに聞こえる。
あ、そうだ! という夏目の声
ドタドタ、とその場から離れていく音が聞こえる。
そして、再び足音が聞こえて扉の前で止まる。
そして、再び足音が聞こえて扉の前で止まる。
現在、この部屋は殺虫剤の煙で充満している。
そこに火が入ったら――。
そこに火が入ったら――。
一か八かで夏目のベッドの下に潜り込み、目と耳を塞ぐ。
次の瞬間、目をつむっていても分かるぐらいのすさまじい光と音が部屋に鳴り響く。
恐る恐る目を開けると、部屋の家具がぐちゃぐちゃになっていた。
見れば扉が吹き飛んでおり、その衝撃の凄まじさを物語っている。
そこに夏目の姿は無かった。
恐る恐る目を開けると、部屋の家具がぐちゃぐちゃになっていた。
見れば扉が吹き飛んでおり、その衝撃の凄まじさを物語っている。
そこに夏目の姿は無かった。
と、思ったら、直ぐに顔をのぞかせる夏目。
けほ、けほと咳込んでいた。
けほ、けほと咳込んでいた。
自分の着ている白い防護服を指さす。
ぶすぶすと焦げ付いてはいるが、無事である。
ぶすぶすと焦げ付いてはいるが、無事である。
えっへん、と胸を張る夏目。
いや、本当にどういう思考をしているのか。
いや、本当にどういう思考をしているのか。
一体どれぐらい時間が経っただろうか? 一匹退治するだけで一時間以上費やした気がする。
しかも、部屋の扉が吹き飛んだし。
しかも、部屋の扉が吹き飛んだし。
夏目の視線が下に動くと、その顔がみるみる青ざめていく。
一体どうしたのだろうか? と、下に視線を動かすと。
一体どうしたのだろうか? と、下に視線を動かすと。
踏んでいた。
あの、忌々しい黒いものを。
額に青筋を立て、笑顔で手に持っている火炎放射器を構える夏目。
額に青筋を立て、笑顔で手に持っている火炎放射器を構える夏目。
それから鬼の形相をする夏目から逃げるのに必死だった。
こんな掃除はコリゴリだ!
こんな掃除はコリゴリだ!
the end
あとがき