第5話(9)

エピソード文字数 3,311文字

(どっ、どどどどどどどどういうこと!? なんで脱出できてないの!?

 なんでなんでなんでなんで!? なにがどうなってるの!?

『こりゃ、あれだな。どうも本当に不具合が発生して、離脱が効かなくなってるらしい』

 神蔵さん、ドアや魔法陣をぶっ壊したもんなぁ。レミア達の脱出が引き金になり、不具合発生っスかぁ…………。

『攻撃する手はないし、逃げる手もない。地味に絶体絶命だよな』
(そだね、謎の声。占い、当たってるわ……)

 三十分間限定のシールドがなくなるまでにどうにかしなければ、俺は一撃もらって死ぬ。ホントに、頼まれ事をやったら最悪逝くな……。

「魅里ちゃんを傷付ける者は、許さない!! 色紙優星、殺害!!
「……気が変わったぜ。すぐ倒すとつまらねーから、遊んでやるよ」

 強気だったら、多少警戒してくれるかなぁ。っていう淡い期待を抱き、俺様モードのままで思考を巡らせる。
 一学期のテストで、数学が満点だった俺の頭脳よ。計算のように、攻撃できる妙策を導き出せっ。

(………………………………………………)
『優星。導き出せそうか?』
(………………………………………………)

 難しい問題を解くのは時間がかかるだろ? 少し待ってくれ。

(………………………………………………)
『どうだ? そろそろ導き出せそうか?』
(………………………………………………。なんにも浮かばない)

 ざんねん……。これと計算は違いましたね……。

「魅里ちゃんを傷付ける者は、許さない!! 色紙優星、撲殺!!

 神蔵さんがシールドに、拳を矢継ぎ早に打ち込む。が、ですよ奥さんっ。『金硬防壁』はビクともしないので、嘲笑って遊んでるフリをして考えるですよ奥さん!

(…………いかん。酷くテンパってきてるから、一度落ち着いて頭の中を空っぽにしよう。冷静になってリセットすれば好転するものだと、担任が言っていたもんね)

 その人は五十半ばの、酸いも甘いも噛み分けたベテラン教師だ。人生の大先輩に従って、損はないだろう。

(……忘れろ……。一度落ち着き、全て忘れろ優星……)

 静かに鼻から息を抜き、呼吸のリズムと鼓動を整える。
 ……………………………………おお、頭の中がスッキリした。これで、リセット完了。ここから反撃に転じるぞ!

(よっし。では今一度確認したあと、改めて思案しよう)

 まずやることは、自分が使える『武器』は何なのか? のチェック。自身をちゃんと把握していないと、正しい判断はできないのである。

(こちらが使用できるのは、『チェンジ・マナ』。『金硬防壁』。『虹の増速』、だな)

 何でも魔力に変換できる、究極奥義。核ミサイルを1兆発受けても壊れない壁を作れる、究極奥義。行動を10倍にする、究極奥義。
 扱えるのは、この3つだ。

「魅里ちゃんを傷付ける者は、許さない!! 色紙優星、死体にする!!

 肘打ちされても膝蹴りされても、シールドはヒビすら入らない。時間切れ以外では消えそうにないから、焦らずにいこう。

(こっちの武器は3つとなると、やっぱし『チェンジ・マナ』でHPを魔力に変換するしかないな。だけど……)
「魅里ちゃんを傷付ける者は、許さない!! 色紙優星、退いてもすぐに昇天させる!!

 攻撃する気配ってのを、感じ取っているんだろうな。俺が手を伸ばすと――10倍の速さで伸ばしても、相手は瞬時に飛び退って半月型の物体で攻めてくる。
 自分は戦闘の素人で、そういう気配を消せないからなぁ……。先の無意識体当たり以外では、触れられそうにない。

(……これだと、どうやってもスタミナを魔力にできないな。どうするかね…………)
『こういう時は、仲間に頼るのが一番だぞ。チームメイトに意見を求めてみようぜ』

 謎の声、どうやって話すんだよ。頼りになる戦友は、アホな悲鳴をあげて場外にいるっての。

『優星、お前こそホントにアホだな。アレがあるだろアレが』
(んん? アレってなに?)
『異変が生じたなら、シズナが心配して「遠聴」等を使ってるだろ。あれなら会話をできて名案を出してくれるかもだから、小声で呼びかけてみようぜ』
(おおソレはいいなっ。……シズナ、この声が聞こえる?)

 こう問いかけてみると、


(……おや?)
 返事は、なし。


 心配をして、『遠聴』等を使ってくれてはいないようだ……。

(え、なんで? なんでやってくれてないの?)
『ああ。そういやあれだ』

 ん? なあに?

『空間が変に乱れると、やがてその空間は崩壊してしまうらしい。だから、元伝説の魔法使いのシズナは――いや、英雄の三人は運営が作った「この空間を作りだしてる何か」に発生している不具合を、大急ぎで直してるんだろうな』

 なんか急に難しいことを言い出したけど、どうにか理解したよ。してその修復は、すぐ終わるものなの?

『普通の魔法使いなら、まず直せない問題だからなぁ。さしもの英雄であっても、あと三十分はかかるだろうな』

 要するに、シールド消失には間に合わないのね。もぅ泣いてもいいですか?

『別に構わんが、優星よ。泣いても好転しないぞ?』

 だよねー。ですよねー。
 僕は、泣きません。くじけず、生き残る方法を探します。

「魅里ちゃんを傷付ける者は、許さない!! 色紙優星、死んでも殺す!!

 ローリングソバット、エルボー、裏拳。更には踵落としと、あらゆる技がバリアーに牙を向く。
 でも、俺は負けない。『金硬防壁』っ、必ず捻り出すから止めていてくれよ!

(むむむむむ……。絶対に、見つけるぞ……!)

 一生懸命、脳味噌を働かせる。

(むむむむむ…………っ)

 絶対に、絶対にだっ。頑張ってくれている防壁のためにも、発見してやる。

(むむむむむ…………。むむむむむ………………。むむむむむ……………………。ぁ)
『おっ。捻り出せたのか?』
(……ううん。やっぱり、攻撃する方法がなかったんだよ……)

 攻める気配を読まれて、避けられてしまうからね。どうやっても、死に物狂いになって考えても、彼にダメージを与えられないんだよ……。

『ぁ~、うん、そうだよな。そうなるわな』
「うん、そうだよなで、そうなるの。……謎の声、どうしよう……」

 現段階で、生き残る方法はなし。どうすればいいの?

『こっちにも専門家がいるんで、不具合を内側から直せないか確認してみるとしよう。ただ望み薄だから、そっちも引き続き模索しとけ。ないと感じててもやるんだ』

 お、おうです了解です! 模索しときます!

(謎の声様、見知らぬ専門家様、どうかっ。どうか希望をください……!)

 まずは心の中で手を組んで祈り、それから言われた通り考えることにする。

(……………………んーと……。攻撃はボツだから、直るまで逃げる方向で探れば――そうだ! 10倍速にして逃げ続ければ――ぁぁ、これもボツだな……)

 その究極奥義を使っても、スタミナはそのまま。優星の体力では最後までもたない。

(……攻めるのも、守るのも不可能……。そうなると必然的に、謎の声に期待するしかなく――)
『すまん優星。確認してみたが、方法はなかった』

 謎の声に期待するのも、×となる。
 あれれ? なんか、天使さんが迎えにきた気がしたよ♪

『……すまんな、優星』
(ははははは……。あはははははははは……。泣かずに落ち着いて頭を空にしても、好転しなかったよ……)

 無意識的に、こんな言葉が出てしまう。
 そもそも、使えるモノは3。たったの3つ! こんな白金人間を相手に、3! 英語で言うと、スリーしかないんだっ!
 いくら年長者に倣っても、良い方向に進むワケがない! なんなんだこの問題は! マジでなんなんだこの問題はっ! これだけでどうにかできるはずないだろ――

(待てよ)

 待て。そうじゃない。
 これは…………………………そうだっ。どうにかできるぞ!!
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登場人物紹介

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

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