第1話

文字数 955文字

 愛着の白の Lee のジーンズが、膝の部分が薄くなって横方向に約4㎝裂けた。ダメージドジーンズが自然に出来上がった。
 ジーンズには思い出がある。今から40数年前、私が高校生の頃だった。私が通っていた都立高校では、黒の学生服が制服から標準服になり、私服での通学が認められていた。「黒い学生服を着ているからといって真面目な高校生というわけではない。人は外見ではない。馬鹿はどんな格好をしても馬鹿だ。」という古文担当の先生の言葉は今も印象に残っている。
 そんな訳で当時は(今も?)ジーンズが流行していた。新品のジーンズはだめで、年季の入った色落ちジーンズが格好良かった。
 「ジーンズは腰で穿()け。」「ジーンズのベルトは飾りだ。締めるな、緩め位がいい。」と母に教わった。そんな母も、膝が薄くなり、裂けが入ったジーンズだけは穿くことに反対した。今となっては流行の最先端だったのだが、その理由を聞くと「だらしなく見えるから」だった。
 当時、学区の通学路には池袋、高田馬場、新宿、渋谷などそうそうたる繁華街があった。そんな繁華街を高校生ながら闊歩、歌舞伎町は庭だった。だから強面(こわもて)のお兄さんに因縁をつけられたり恐喝されたりしないように細心の警戒はしていた。そんな状況を母は親として心配していたのだろう。
 今はこのダメージドジーンズは製品として売られている。が、自分にとっては少し違う。ジーンズの裂け方が人工的で不自然なのだ。自然に裂ける部分は膝の部分が多く、(すね)太腿(ふともも)はあまり裂けない。裂けは横方向が多く、鉤裂き《かぎざき》は滅多にない。やはり物は自然体がよく、時間の経過を短縮しても本物の風格は出ないのだ。
 自然に出来た Lee のダメージドジーンズを穿いてみた。ん?膝の裂けた所から膝痛のために貼っていた湿布が顔を出していた。
 嗚呼、歳は取りたくない、いつもながら改めて痛感した。

 さて写真は、2018年12月8日に羽越本線 北余目(きたあまるめ)駅で撮影した鈍行列車の離合(すれ違い)である。

 2018年は雪が多く、12月の最初から厳しい冬だった。白馬、軽井沢、苗場などのスキー場は、人工降雪機で雪を降らし、10月末~11月末には滑降が可能だったそうだ。
 自然や時間には人工的に手を加えない方がいいと思う。
 んだんだ!
(2019年12月)
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