第64話  黒澤 凛  1

文字数 2,905文字

――――――――――

   5 章

――――――――――

5章。6章は黒澤凛視点です。
凄く長いお話だけど、よろしくね。

 ※

 男の子と女の子に入れ替わるこの身体。僕はこの身体が大嫌いだ。


 良い事なんて何もない。悪いことばかり。
 この身体のせいで、僕達家族はどれだけ嫌な思いをしてきたのか、数え切れない。


 友達も作れない。一緒に遊べない。入れ替われって頭は痛くなるし、この身体の事を絶対他の人にバレちゃ駄目だと言われてる。その為には、平気で嘘をつかないといけない。


 何も良い事なんてない。僕はこの身体が大嫌いだ。
 この気持ちを一番良く分かってるのは、お父さんじゃなくて、いつも一緒にいてくれるお兄ちゃんだった。


 僕はお兄ちゃんが大好き。

 ずっと僕の事を気にかけてくれて、いつも優しくて、勉強も教えてくれたり、一緒に遊んでくれたり、一緒にお風呂に入ったり……僕をとても大事にしてくれる。



 お兄ちゃんは言った。

 この街で生まれ変わるぞ。って。
 いっぱい友達作ろうな。って言ってくれた。


 前の学校だと、僕は他の子にいじめられ学校に行けなかったから。
 だから、新しいこの街で、ちゃんと学校に行けるように、頑張ろうと思った。



 自分の為に。お兄ちゃんやお父さんが悲しまないように。

 僕の事で怒ったり、泣いたりして欲しくないんだ。



 ※



華凛ちゃん。おはよ
え? あれ? 聖奈お姉ちゃん?

 僕がベッドから飛び起きると、本当に聖奈お姉ちゃんがいた。

 もう制服に着替えてて、エプロンをしてた。

ご飯出来てるわ。食べなさい
ど、どうして?
昨日泊まったのよ。華凛ちゃんが心配でね
あっ! お、お兄ちゃんは?
もう起きてるわよ。先にご飯にしよっ

 そう言うと聖奈お姉ちゃんは部屋を出てしまう。

 僕も慌てて部屋を出ると、テーブルを囲んでいるのは、お兄ちゃんと平八おじさんだ。

おうっ。おはよ
おはようございます。華凛お嬢様
 どうしてこんな急に……
聖奈お姉ちゃん!
 僕は聖奈お姉ちゃんの手を持つと、自分の部屋まで連れて行った。
お、お兄ちゃんに言ってないよね?
勿論よ。約束だわっ

いい? あなた一人で解決しなさい。

ただし……何があったのかは全部報告する事

うん……
当事者以外の人間が出てきた時は、私がやるから
とうじしゃ?

例えば……相手の親とか兄弟とか。教師でもいいわね。今回の件に関係ない人とか。

それは私が相手するから

わ、分かった
 すると聖奈お姉ちゃんに抱きしめられながら、リビングまで運ばれちゃった。
 良い匂いがする。聖奈お姉ちゃんの女の子の匂いは大好き。
華凛。ちゃんと食っとけよ。朝ごはんなんて久しぶりだぜ
うんうん

こういう食卓もたまにはよろしいですな。

もも。まろ。そなた達のご飯はそっちですぞ。

ワァウ!
最近はずっと平八と二人だったから新鮮ね。たまに作ってあげるわよ。

 スクランブルエッグにベーコンと。トースト。
 お兄ちゃんが牛乳も入れてくれると、早速食べだした。


 うん。美味しい! 聖奈お姉ちゃんは何でも出来て凄い。

華凛ちゃん。まだ入れ替わらなくていいの?

学校へ行くギリギリまでは変わらないほうがいい。凛は男でいられる時間が短いからな。

行く寸前に入れ替わって、着替えるのが基本なんだ。

そっか。なるほどね

 お兄ちゃんの言う通りだ。そうじゃないと学校での長い時間持たない。

 頭が痛くなって、動けなくなったら大変だから。ギリギリまで女の子でいるんだ。



 朝ごはんを食べ終わって、入れ替わって、体操服に着替える。

 汚れてもいいように、僕は進んで体操服を着てた。


 ランドセルを背負って、玄関に行くとみんなが待ってた。

いこっか

 お兄ちゃんは笑顔を見せてくれる。
 僕はなんとか笑顔を見せると、玄関が開く。


 その時、僕は……
 お兄ちゃんに本当の事を話さず、内緒にしているのがとてもつらかった。

落ち着け。いつもの平常心を保て


 


 マンションの階段を下りると、聖奈お姉ちゃんが頭を撫でてくれる。

頑張るのよ。私がいるからね。

 小さな声でそう言ってくれた。
 その時、急に泣きそうになっちゃった。



 そうだ。頑張らないと! 
 これは僕が一人でやらなきゃ。またお兄ちゃんが……



 お兄ちゃんも頑張ってるんだ。
 これ以上心配させたくない。


凛。頑張って来いよ
うん! 行って来る!
じゃあね凛ちゃん。ちゃんと勉強してきなよ
分かった。聖奈お姉ちゃん

 ※



 いじめられた。
 それは四月の終わり位から結構そんな感じはしてた。


 最初は男の子とも喋ってたんだけど……僕は人と喋る事が苦手だった。
 声を掛けてきてくれた男の子も「学校終わったら遊ぼう」と言ってくれたけど、僕には出来なかった。


 夕方には女の子に入れ替わらないといけない。
 だから絶対に遊べない。


 この時、土日に遊ぼうと勇気を出してれば良かったのに、だけど内気な僕はただ「ごめん」と返事するだけしか出来なかった。



 学校では隣に座ってる女の子の坂田さんとか、堀口さんとは良くお話できた。

 だけど、少し前に席替えがあって二人とは離れてしまった。

 


 その頃から男の子が僕を「女たらし」とか「女としか喋らない」とか言われるようになる。

 それに……坂田さんや堀口さん達が僕と話すのを嫌がってた気がしたんだ。



 そういう気持ちは、僕には良く分かる。
 何となく、目を見れば分かる。


 僕達家族が、よく見せる悲しい目。

 近寄っちゃダメだと思った。坂田さん達に迷惑掛けちゃうから。きっとみんなの目を気にしてるんだと思った。



 一人ぼっちになると、そこから僕は男の子にちょっかいを出され始めた。

 あぁ。前の学校と一緒だ。その時からずっとそう思ってた。



 体育の時間にドッジボールを思いっきり当てられるようになると、僕はもう学校に行くのをやめようと思った。



 それでも僕を学校に行かせる理由は……お兄ちゃんだった。

 生まれ変わろうって言ってくれて、お兄ちゃんも頑張ってる。
 だからこのくらいで学校を行くのを辞めちゃダメだと思った。


 だって。お兄ちゃんはどんどんお友達を作ってて、凄い頑張ってるのに僕も頑張らないと、そう思った。



 聖奈お姉ちゃんや、平八おじさん。
 美優お姉ちゃん。魔優お姉ちゃん。ママ。じいじ。

 坂田さんのお姉ちゃん。
 映画館のお兄ちゃん。あと、怖い女の子。



 みんなお兄ちゃんがつれてきたお友達。

 僕も……そんな友達が欲しい。




 教室に入ると、みんな席に座っていた。
 時計を見ると八時三十分。急いで席に座るのをみんなが見ていた。 


【赤木】

お、黒澤が来たぞ! おっせーぞお前

【魚住】

もう来なくていいよ。帰れよ転校生

【名谷】

スマホ大丈夫だったか~?

 名谷(なや)と魚住(うおずみ)と赤木(あかぎ)
 昨日、僕のスマホをやったのはこの三人だ。


 今までなら教室内でこんな風に言われなかったけど、やっぱり昨日苛められてから、クラスの雰囲気が変わった。


 みんなに見られてる。それが凄くつらい。
 僕は下を向いて先生が来るのを待っていた。



 ……まるで引っ越す前の学校と一緒の状態。
 その後、僕は学校へは行かなくなってしまった。


でも今度は逃げない。僕は……負けない。
お兄ちゃんの為にも、逃げたりするもんか!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介


 ★登場人物でも若干のネタバレを含みます。第一部からお読みいただきますようよろしくです。

 ★逆に第二部の登場人物を先に読んでから、第一部をお読み頂きますと、別の意味で楽しめます。

 

 ★読者視点は神視点。登場人物の心の声も聞こえます。(フキダシの色がこの色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年

 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 自分自身の事よりも、仲間の為ならば凄まじく有能になる。

 ★ 白峰楓蓮 しらみね かれん


 蓮の女性の姿。類稀なる美少女だが本人にはあまり自覚がない。


 外部には黒澤家の親戚(蓮の姉)となっている。

 楓蓮では世間との関わりあいを最小限にしてきたが、徐々に一人の女性として目覚め始める。

 

 自分を理解してくれる人間が増えるたびに楓蓮は飛躍的に成長してゆく。  

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生

 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。

 

 二部中盤で凛オンリーの章があります

★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは黒澤家の秘密を知るものだけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。

★ 黒澤 玲斗 くろさわ れいと

★ 白峰 麗華 しらみね れいか


蓮や凛のお父さん。ただいま遠方で仕事中。

麻莉奈や平八。ティナとは大親友。


後半から再び登場します

★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。

 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。


 高校当初から蓮と関わりを持ち、お互いに影響されてゆく。無二の親友?

 記憶喪失だったが、徐々に昔の事を思い出してゆく。


 二人目の主人公。

★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲

 おっぱい職人。ツイッタのフォロワーは10万以上の有名人。

 作中でも最強だと言われるが……

★ 白竹 美優 しらたけ みゆう

 

 男女入れ替わり体質

 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。とても内気で、語尾が変になる。

 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は魔優と入れ替わっている

 歌が上手く、全国でも有名な絵師でもある。(エロ同人が本業)

 

 三人目の主人公。 

★白竹 美樹 しらたけ みき


 白竹美優の男性の姿。

 外部では白竹魔樹と名乗っているので、彼を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で厨房担当したり、サイクルの都合上、学校でも魔樹として振舞う。

 男の子の身体で遊ぶのが大好き

★白竹 魔優 しらたけ まゆう


 男女入れ替わり体質。

 外部では白竹美優と名乗っているので、彼女を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で接客担当。サイクルの都合上、学校でも美優として振舞う。

 心の中は女の子なので、こちらが真の姿となる。

 四人目の主人公

★白竹 魔樹 しらたけ まき


 魔優の男の姿。外部に知られているのは魔樹である。

 蓮の隣のクラスで、常にクール。成績も良く、空手や合気道を習得。

 学校内では魔樹王子と呼ばれるほどモテる。


 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は美優と入れ替わっている

 乙女ゲー大好きのツンデレ。

★白竹 麻莉奈 しらたけ まりな


美優。魔優の母。入れ替わり体質。


とてもピアノが上手く、蓮はプロの犯行だと断定。

双子の母だけあり、とても美人だが色々とヤバい人。

男の姿は、でかい上にマッチョらしい。


★ じいじ


 白竹家のおじいさん。喫茶店のオーナー。

 小太りでツルっぱげ。チョビ髭が可愛い。

 厨房担当で楽しい事があると、その場でクルクル回りだす。

★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 男女入れ替わり体質。

 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的で、クラスでも人気がある。

 楓蓮に一目惚れし、ずっと彼女を追い求める。

 オムライサーでありポニテマニア。

 

 五人目の主人公

★山田 龍子 やまだ りゅうこ


 龍一の女性の姿。

 楓蓮を追って同じ喫茶店で働く事になる。全国でも有名な山田組の人間。

 ケンカが強く、蓮も認めるほど。

 楓蓮に近づく男を排除しようとする俺っ子。

★山田 虎子 やまだ とらこ


男女入れ替わり体質。龍一の弟(妹)

全国統一を夢見る女の子。既にチームを結成しており、チームヴァルハラと名づける。

口調はキツいが、兄弟には頭が上がらない。

デコトラならぬデコチャリで街中を暴走する。

★染谷 翔一 そめや しょういち 


男女入れ替わり体質。龍一の兄(姉)

龍一が恐れる唯一の兄貴。百人でかかっても勝てないらしい。

ただいま、新婚生活真っ最中。

★染谷 桜 (そめや さくら)


 翔一の奥さん。普通の人間。

 とても清楚で大人しそうな美人だが染谷三兄弟は彼女に対し頭が上がらない。

 翔一を女らしくする為、日々調教中。

★百済 紫苑 くだら しおん


 高校二年。軽音部。実家はソッチ系統の百済組。

 楓蓮達と一緒に喫茶店でバイトを始める。関西弁ちっくな喋り方だが、とても優しく後輩想い。

 蓮の同じクラスである、米山まゆこと、坂田沙織は小学校からの付き合い。

 マイブームはマジョリーナちゃん(ミニチュアダックス)を可愛がる事。

★坂田 沙織  さかた さおり


 高校一年。蓮と同じクラス。

 いつもニコニコ。おっとりとした口調でマイペース。

 紫苑と同じ軽音部。ベース担当。

 親が犬のブリーダーで楓蓮に二匹のダックスを譲る。

★ 西部

 蓮と同じクラス。

 事あるごとに蓮に絡んでくるが、その目的は聖奈や美優と接点が持ちたいが為である。

 ツイッター名では「モントゴメリー」。おっぱい職人を神と崇める。

★真鍋

 蓮と同じクラス。西部の友達。

 頭は良く、テストでも上位だが、彼もおっぱい職人を神と崇める。

 ツイッター名は「穴バースト」

★米山 まゆこ (だんじりバージョン)


 蓮と同じクラス。坂田とは昔からの親友で、紫苑は先輩に当たる。

 魔樹王子にベタ惚れてしまい、蓮に紹介してもらえるよう頼んだ。

 バスケ部所属。一年なのに相当の実力を持っている。

★ 三輪 加奈子 みわ かなこ

 

 蓮と同じクラス。坂田沙織の友達で幼稚園からの付き合い。

 男の子同士がホニャララするのが好き。

★ 清原 愛美 きよはら まなみ


 魔樹と同じクラス。米山まゆこと中学時代からの付き合い。

 ちなみに魔樹王子と呼び出したのはこの子。

★ 梶谷


 蓮と同じクラス。西部の友達で小学生からの付き合い。

 バスケ部所属。一年でレギュラー筆頭。

★高坂


蓮と同じクラス。梶谷の友達。

ギャルゲーのアイドルプリンセスをこよなく愛する男の子。

★ 鼻


楓蓮が命名。

その昔、蓮にケンカ売ってきたり、美優をナンパしたり、ろくでなし男であったが楓蓮や龍子にボコられる。だが楓蓮に鼻を治してもらったと勘違いしている。

楓蓮に殴られてから、とんでもなく優秀な男へ変貌する(だがケンカは弱い)

★ヴァルハラメンバー 


 只今メンバーは八人。

 虎子率いるチームヴァルハラメンバー。俗に言う不良だが、楓蓮。龍子。虎子には従順。

 実は全員イケメンレベルだが、とにかく頭も弱く、ケンカも弱い。

 NO表示されており、変なヤツが混じってます。 

 竜王 冴子 りゅうおう さえこ


 高校一年。西部曰く、彼女と美神聖奈。白竹美優を三大美女認定している。

 いつも笑顔。とても愛想が良い彼女だが……

 王二朗曰く、超危険人物。鞄にスタンガンを隠し持ち、女の子を襲うらしい

★ 播磨 王二朗 (はりま おうじろう)


 高校一年。竜王冴子と共に登場。190センチの巨漢であり極道顔。

 とてもじゃないが高校生には見えない容姿に、シルエット姿となっている。

 警官とエンカウントすると、ほぼ職務質問されてしまう。

 ゴリラのモノマネが神がかっている。

★竜王 将哉 りゅうおう しょうや


 萌ゴリと共に現れた男性。とてもイケメンだが萌にナンパーマンであると暴露されてしまう。萌は恋人だと告げるが……楓蓮は最初から将哉を警戒する。 

★稲坂 萌 いなさか もえ


 楓蓮が早朝マラソンに出かけた際に知り合った女性。

 巨漢で筋肉質なので、楓蓮は男だと勘違いするほど。

 とても気さくでしゃべりやすい印象を受けた萌ゴリ。ちなみにラッキースケベ体質。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色