第75話  平八社長

文字数 3,159文字

 学校内のどこかの部屋。

 こんな場所に入るのも初めてだった僕。それは赤木達も同じだったらしくて、色んな表彰状やトロフィーが飾られた、そんな部屋だった。



 さっきのケンカで、僕も赤木達も口を出さなかった。
 どちらとも言わないので、大熊先生は親を呼ぶと言ってたけど、原因を言わない。


 先生は僕達に告げたとおり、ケンカの中心にいた僕達四人の親に連絡し、親が来るのを待っていた。



 今二時過ぎ、あまり遅くなると大変だったけども、聖奈お姉ちゃんが来てくれるので安心してた。

 大丈夫。お姉ちゃんは何度もそう言ってくれた。


 だけど……

 
 一番初めに来たのは魚住のお父さんとお母さんだった。結構おじさん叔母さんだった。

 最初から僕を睨み、凄く嫌な雰囲気で、赤木や名谷も知ってるらしく、二人には笑顔を見せていた。

【魚住の父親】

お前。こんな奴にやられたんか? なっさけねーな

【魚住の母親】

最近の子は、キレるとおかしくなる子が多いから困るわね

 僕にとって大人に攻撃されるのは、恐怖しか感じられなかった。

 気が付けば足が震えて、ひたすら聖奈お姉ちゃんが来るのを待っていた。



 次に来たのは名谷のお母さん。部屋に入ってくるなり、僕を指差して「あんたがやったの?」と叫んでいた。最初からもう滅茶苦茶怒ってて、仕事がどうの。とか言い出した。



 僕の顔は真っ青で前を向くことすら出来なかった。



 すると……

子供のトラブルです。失礼ですが、仕事云々よりも大事なことなのではないですか? 

そう言う言葉は謹んでいただけますか?

 横を見ると大熊先生が真剣な表情を浮かべ、真っ直ぐと名谷のお母さんを見ていた。これには大人連中は何も喋らなくなった。



 この部屋に入って十分ほど経ってから、赤木の親は来れないと連絡があったらしく、ほっと胸を撫で下ろしていた。



 その時入って来たのは……聖奈お姉ちゃんと平八おじさんだった。

 真っ黒なスーツな聖奈お姉ちゃん。



 どこからどうみても大人だった。

 あぁ……来てくれた。僕は二人を見た瞬間すぐに泣きそうになったけど、ぐっと堪えた。

凛ちゃん。待たせたわね
 すぐに聖奈お姉ちゃんが隣に座ると、僕の手を握ってくれて、相手を見ていた。
お待たせしました。凛の親の者です

 あれ? 平八おじさんが親?
 とか思ってると、この部屋に次々とスーツを着た男の人や女の人が入ってくるんだ。


 その数十人くらいで、部屋がいっぱいになっちゃった。


 これには大熊先生もびっくりで、向こうの親も口を開けていた。

 だけど大熊先生は「部外者はご遠慮いただけますか?」と言うと、平八おじさんは、

すみませんな。何せ一刻を争う商談の最中でして……

みな。下がれ。車で待っておれと言ったであろう?

 平八おじさんが、平八おじさんらしくない事を喋ってた。
 指示通り、黒服の人達はみんな部屋から出て行くと、テーブルに置かれたお茶を啜った平八おじさんは淡々と喋り始める。

億単位が簡単に動くもので、みなも焦っているのでしょう。申し訳ありません。

では……今回の件を説明してもらえますでしょうか?

【魚住の父親】

億単位?

 魚住のお父さんが飛び上がっていた。他のお母さん達もこれにはビックリだったみたい。

 だけど大熊先生だけは、平八おじさんを真剣な表情で伺っていた。

黒澤さん。事情は分かりますが、今日親御さん達をお呼びしたのは、もっと大切な事だと思いますよ
……ですな。私もその通りだと思います。失礼しましたな
では、今回親御さん達に来てもらった経緯についてお話しましょう
 大熊先生がそう告げると、話し合いが始まる。
 僕はふと、聖奈お姉ちゃんを見ると、軽くウィンクをしてくれた。 

 ※

 勝負は圧倒的だった。僕でも分かる。
 難しい用語は分からなかったけど、平八おじさんが淡々と喋ると、向こうの親の顔が引きつり、青ざめ、恐怖におののいていた。



 それでも魚住のお父さんは立ち上がりケンカ腰で喋るものの、聖奈お姉ちゃんと平八おじさんが短く返す事で、あっさりと椅子に座るのだった。



 赤木達は、親が不利なのが分かると、親と同じように頭を下げるしかなかった。僕はその様子を、顔色変えずにずっと見ていた。


 そこにいる全員が一番ビックリしたのが、僕の壊れたスマホを見たときだった。

 親が事情を子供達に問い詰めるとあっさり三人は認めた。


そこから私は監視を付けさせていただきました。

凛がいじめられている様子を、動画に納めております。ご覧になってください

 え? いつの間に?
 
 そう思っていると、平八おじさんがスマホを取り出すと……動画には昨日、校門から出てきて三人に付きまわされて、後ろから蹴られ、公園に連れて行かれそうな場面が写っていた。


 その後、虎にぃが出てくる前まで写ってたんだ。
 っていつの間に撮られてたんだろう……

【名谷の母親】

あんた達!

 名谷のお母さんが赤木達に叫んだ。慌てて制止する大熊先生は「なるほど」と、前置きしておいてから喋り出した。

黒澤さん。事情は分かりました。だからといって私には、一方的に彼等の責任にする事は出来ません。

あくまで教師と言う立場上、彼らからも言い分はあると思ってます

 言い分? そんなのあるのか?
 こればかりは大熊先生に賛成できない。
そうですな。その話は子供と先生方にお任せします

 平八おじさんもあっさり同意してしまう。

 するとその時、聖奈お姉ちゃんが「社長」と呼んだ。どうやら平八おじさんが社長らしい。

予定時間です。これ以上は我が社の損益に関わります。既にかなりの損害が……
いくらだ?
十四億ほど。これ以上に膨らむ可能性があります

 もう別世界の話だった。

 聖奈お姉ちゃんはお金持ちだって聞いたけど、桁が全然違うじゃないか。


 だけどそれを聞いた平八おじさんは、ふぅっと溜息を吐くだけだった。

美神。後は任せたぞ。そちらの親御さん達に説明しろ。手短にな
分かりました
 そこから聖奈お姉ちゃんは、親御さん達に今後の話し合いという事で、喋り出した。
 
 僕には難しすぎて分からなかったけど、裁判や、法廷。弁護士。刑事なんとか、誓約書とか、とんでもない金額の話とか、凄い速さで説明していく。

と言う訳で、今後社長とお話したい場合は、民事裁判。損害賠償請求も考えております。

その事を念頭に置いてご連絡下さい

 暫く誰も何も言えなかった。特に親御さん達が完全にHPがなくなっていた。
あと、名詞をお受け取り下さい。何かあればこちらに連絡を
 聖奈お姉ちゃんは名詞を渡すと、親御さん達の手が震えてた。
ネットなどで調べれば、我が社が分かると思いますよ。是非お調べ下さい
しかし。黒澤さん。これは子供達の……
いえ。今は親同士の話をしているだけですが
 大熊先生までも黙ってしまった。だけど平八おじさんは、こんな事を言い始めたのだ。

しかし。子供達の話は別ですな。

どうでしょうか、みなさん。


今回の件はすべて、大熊先生にお任せするというのはどうでしょう?

もちろんです。子供達の為にも、子供達だけで解決させるのが一番でしょう

 すると、平八おじさんが「こほん」を咳払いすると、何故か聖奈お姉ちゃんはこちらを向いて、ニヤっとした。


 僕には意味が分からなかった。

こちらと致しましては、今後の話は、大熊先生にお任せします。

子供達は子供達だけで、当事者同士で話し合うべきです。


どうぞそちらの方々も、同意なさっていただけませんか?

 すると親御さん達も二つ返事で同意した。
 それを見届けた平八おじさんは「時間が無いので失礼致します」と立ち上がった。
美神。凛を頼む
分かりました

 平八おじさんが出て行く。その時……凄いものを見た。
 あの平八おじさんが、僕に笑顔を見せるんだ。



 お金やそんなお話よりも、平八おじさんが笑ったほうがよっぽど凄いと、僕は思った。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介


 ★登場人物でも若干のネタバレを含みます。第一部からお読みいただきますようよろしくです。

 ★逆に第二部の登場人物を先に読んでから、第一部をお読み頂きますと、別の意味で楽しめます。

 

 ★読者視点は神視点。登場人物の心の声も聞こえます。(フキダシの色がこの色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年

 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 自分自身の事よりも、仲間の為ならば凄まじく有能になる。

 ★ 白峰楓蓮 しらみね かれん


 蓮の女性の姿。類稀なる美少女だが本人にはあまり自覚がない。


 外部には黒澤家の親戚(蓮の姉)となっている。

 楓蓮では世間との関わりあいを最小限にしてきたが、徐々に一人の女性として目覚め始める。

 

 自分を理解してくれる人間が増えるたびに楓蓮は飛躍的に成長してゆく。  

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生

 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。

 

 二部中盤で凛オンリーの章があります

★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは黒澤家の秘密を知るものだけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。

★ 黒澤 玲斗 くろさわ れいと

★ 白峰 麗華 しらみね れいか


蓮や凛のお父さん。ただいま遠方で仕事中。

麻莉奈や平八。ティナとは大親友。


後半から再び登場します

★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。

 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。


 高校当初から蓮と関わりを持ち、お互いに影響されてゆく。無二の親友?

 記憶喪失だったが、徐々に昔の事を思い出してゆく。


 二人目の主人公。

★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲

 おっぱい職人。ツイッタのフォロワーは10万以上の有名人。

 作中でも最強だと言われるが……

★ 白竹 美優 しらたけ みゆう

 

 男女入れ替わり体質

 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。とても内気で、語尾が変になる。

 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は魔優と入れ替わっている

 歌が上手く、全国でも有名な絵師でもある。(エロ同人が本業)

 

 三人目の主人公。 

★白竹 美樹 しらたけ みき


 白竹美優の男性の姿。

 外部では白竹魔樹と名乗っているので、彼を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で厨房担当したり、サイクルの都合上、学校でも魔樹として振舞う。

 男の子の身体で遊ぶのが大好き

★白竹 魔優 しらたけ まゆう


 男女入れ替わり体質。

 外部では白竹美優と名乗っているので、彼女を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で接客担当。サイクルの都合上、学校でも美優として振舞う。

 心の中は女の子なので、こちらが真の姿となる。

 四人目の主人公

★白竹 魔樹 しらたけ まき


 魔優の男の姿。外部に知られているのは魔樹である。

 蓮の隣のクラスで、常にクール。成績も良く、空手や合気道を習得。

 学校内では魔樹王子と呼ばれるほどモテる。


 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は美優と入れ替わっている

 乙女ゲー大好きのツンデレ。

★白竹 麻莉奈 しらたけ まりな


美優。魔優の母。入れ替わり体質。


とてもピアノが上手く、蓮はプロの犯行だと断定。

双子の母だけあり、とても美人だが色々とヤバい人。

男の姿は、でかい上にマッチョらしい。


★ じいじ


 白竹家のおじいさん。喫茶店のオーナー。

 小太りでツルっぱげ。チョビ髭が可愛い。

 厨房担当で楽しい事があると、その場でクルクル回りだす。

★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 男女入れ替わり体質。

 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的で、クラスでも人気がある。

 楓蓮に一目惚れし、ずっと彼女を追い求める。

 オムライサーでありポニテマニア。

 

 五人目の主人公

★山田 龍子 やまだ りゅうこ


 龍一の女性の姿。

 楓蓮を追って同じ喫茶店で働く事になる。全国でも有名な山田組の人間。

 ケンカが強く、蓮も認めるほど。

 楓蓮に近づく男を排除しようとする俺っ子。

★山田 虎子 やまだ とらこ


男女入れ替わり体質。龍一の弟(妹)

全国統一を夢見る女の子。既にチームを結成しており、チームヴァルハラと名づける。

口調はキツいが、兄弟には頭が上がらない。

デコトラならぬデコチャリで街中を暴走する。

★染谷 翔一 そめや しょういち 


男女入れ替わり体質。龍一の兄(姉)

龍一が恐れる唯一の兄貴。百人でかかっても勝てないらしい。

ただいま、新婚生活真っ最中。

★染谷 桜 (そめや さくら)


 翔一の奥さん。普通の人間。

 とても清楚で大人しそうな美人だが染谷三兄弟は彼女に対し頭が上がらない。

 翔一を女らしくする為、日々調教中。

★百済 紫苑 くだら しおん


 高校二年。軽音部。実家はソッチ系統の百済組。

 楓蓮達と一緒に喫茶店でバイトを始める。関西弁ちっくな喋り方だが、とても優しく後輩想い。

 蓮の同じクラスである、米山まゆこと、坂田沙織は小学校からの付き合い。

 マイブームはマジョリーナちゃん(ミニチュアダックス)を可愛がる事。

★坂田 沙織  さかた さおり


 高校一年。蓮と同じクラス。

 いつもニコニコ。おっとりとした口調でマイペース。

 紫苑と同じ軽音部。ベース担当。

 親が犬のブリーダーで楓蓮に二匹のダックスを譲る。

★ 西部

 蓮と同じクラス。

 事あるごとに蓮に絡んでくるが、その目的は聖奈や美優と接点が持ちたいが為である。

 ツイッター名では「モントゴメリー」。おっぱい職人を神と崇める。

★真鍋

 蓮と同じクラス。西部の友達。

 頭は良く、テストでも上位だが、彼もおっぱい職人を神と崇める。

 ツイッター名は「穴バースト」

★米山 まゆこ (だんじりバージョン)


 蓮と同じクラス。坂田とは昔からの親友で、紫苑は先輩に当たる。

 魔樹王子にベタ惚れてしまい、蓮に紹介してもらえるよう頼んだ。

 バスケ部所属。一年なのに相当の実力を持っている。

★ 三輪 加奈子 みわ かなこ

 

 蓮と同じクラス。坂田沙織の友達で幼稚園からの付き合い。

 男の子同士がホニャララするのが好き。

★ 清原 愛美 きよはら まなみ


 魔樹と同じクラス。米山まゆこと中学時代からの付き合い。

 ちなみに魔樹王子と呼び出したのはこの子。

★ 梶谷


 蓮と同じクラス。西部の友達で小学生からの付き合い。

 バスケ部所属。一年でレギュラー筆頭。

★高坂


蓮と同じクラス。梶谷の友達。

ギャルゲーのアイドルプリンセスをこよなく愛する男の子。

★ 鼻


楓蓮が命名。

その昔、蓮にケンカ売ってきたり、美優をナンパしたり、ろくでなし男であったが楓蓮や龍子にボコられる。だが楓蓮に鼻を治してもらったと勘違いしている。

楓蓮に殴られてから、とんでもなく優秀な男へ変貌する(だがケンカは弱い)

★ヴァルハラメンバー 


 只今メンバーは八人。

 虎子率いるチームヴァルハラメンバー。俗に言う不良だが、楓蓮。龍子。虎子には従順。

 実は全員イケメンレベルだが、とにかく頭も弱く、ケンカも弱い。

 NO表示されており、変なヤツが混じってます。 

 竜王 冴子 りゅうおう さえこ


 高校一年。西部曰く、彼女と美神聖奈。白竹美優を三大美女認定している。

 いつも笑顔。とても愛想が良い彼女だが……

 王二朗曰く、超危険人物。鞄にスタンガンを隠し持ち、女の子を襲うらしい

★ 播磨 王二朗 (はりま おうじろう)


 高校一年。竜王冴子と共に登場。190センチの巨漢であり極道顔。

 とてもじゃないが高校生には見えない容姿に、シルエット姿となっている。

 警官とエンカウントすると、ほぼ職務質問されてしまう。

 ゴリラのモノマネが神がかっている。

★竜王 将哉 りゅうおう しょうや


 萌ゴリと共に現れた男性。とてもイケメンだが萌にナンパーマンであると暴露されてしまう。萌は恋人だと告げるが……楓蓮は最初から将哉を警戒する。 

★稲坂 萌 いなさか もえ


 楓蓮が早朝マラソンに出かけた際に知り合った女性。

 巨漢で筋肉質なので、楓蓮は男だと勘違いするほど。

 とても気さくでしゃべりやすい印象を受けた萌ゴリ。ちなみにラッキースケベ体質。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色