第3話(12)

エピソード文字数 1,765文字

「ひべ? 景色が、回転して…………」

 ボスと呼ばれていた男は、空中で絶命。刎ねられた頭と残された身体が道にゴロンと転がり、戦いは僅か数秒で幕を閉じてしまった。

「……結局誰も、一撃を味わう事すら出来なかったわね。まあ隠した力に気付かず『雑魚』と評した時点で、雑魚と決まっていたのだけど」

 彼女は消えゆくボスを眺め、ヤツが消滅すると凛とした雰囲気も同じく消える。そうしてあっさり勝利した少女さんは、再び優雅な空気を纏い舞い戻ってきた。

「男子くん。私、どうだったかしら?」
「つ、強かったです……。アナタって何者なんですか?」

 巫女さんの類、ではない。まさか地球には、創作物のように魔法剣士とかがいたのか?

「私は、虹橋(にじはし)シズナ十七歳。こことは異なる日本で、魔法使い魔王をやっている者よ」

 虹橋さんが自分の右肩に触れると、背中から漆黒の翼が出てきた。

「Зшо△」

 衝撃が、デカすぎましたからね。またまた地球外言語になってしまいましたよ。

「あら、不思議な言語ね。伝説の魔法使いの魔法でも、訳せないわ」
「ご、ゴホン。ゴッホン」

 あ、あ~、あー。よし、日本語を取り戻したぞ。

「驚きました。アナタは、レミアとフュルの友達だったんですね」
「大正解。レミアさん達は少し抜けている所があるから、親友を代表して手を貸しに来たの」

 彼女は魔剣と翼を消し、魔法? で、少し破れていた服を修復。お直しを終えると短めなワンピースの裾を摘み、膝をチョコンと曲げた。

「けれどまさか、到着早々こんな事になるとは思ってなかったわ。タイミングがよかったわね」
「ええ、ホントに助かりましたよ。しっかし、どうしてあんなのに後れを取ったんですか?」

 例えるなら彼女とあのボスは、恐竜とミジンコ。ミジンコちゃんがどんなに暴れても、痛くも痒くもないはずなんだよなぁ……?

「お恥ずかしいから内緒にしておきたいのだけど、気になるわよね。私がああなっていたのは、これのせいよ」

 虹橋さんは左手を薙ぎ、そうしたら――ぎゃああっ!? 真っ黒い鎌が飛び出し、俺の頭髪を掠めていった。

「ぼ、ぼくの後方にある建物が、スパッと切れちゃってる……。なにやってんだよボケぇっ当たったら死んでただろ!!
「ぁはぁんっ」

 拳を振り上げ怒鳴ったら、頬を上気させて艶っぽい声を出した。

「ちょぉ……。どしたの……?」
「私は、ね。異常な、怒られ好きなのよ」

 ぅぇ? おこられずき?

「どんな事でも怒られたら気持ちよくなって、時々無性にその快楽を得たくなるの。変わってるでしょ?」
「ええ。変わってますね」

 これは、否定できない。どっからどう見ても変態だ。

「虹橋、さんは……。その、ドMなんですね……」
「いいえ、私はSよ。これに関してだけMっぽくなるの」

 まだ余韻があるようで、身体をビクンビクンさせながら答えている。
 ヤダなにこれ怖い。抜けてるレミア達を心配して、常識を逸脱してる人が来日しちゃったよ。

「戦闘中にふと『ワザと負けて負傷したら、心配した皆に思い切り怒られる』、って過っちゃってね。ついつい、防御力を落とした状態で攻撃を受けたのよ」
「バカだっ、バカがいるっっ。時と場合を考えろよ!」
「んぁぁっ! いいわっ。その顔と口調、たまらない……!」

 口の端から少し涎を垂らし、内股になる大和撫子。
 この人、美人だなぁ。そう感じていた時期が、僕にもありました。

「もう嫌だコイツ……。さっさとレミア達と合流しよう……」
「待って。その前にお願いがあるの」

 彼女は真面目な顔に切り替え、こちらを見つめてきた。
 これは、もっと怒って! の類ではなさそうだからな。俺は態度で、続けてと促した。

「あのままだと私は気絶している間に、手始めに胸やお尻を触られていたかもしれません。今こうして何事もなく居られるのは、貴方のおかげです」
「半分は、こっちにも責任があるんだけどね。で、それがなんなんです?」
「虹橋家にはね、命の恩人に行う事があるの。そこで家のルールに則り」

 虹橋さんはここで一度間を置き、呼吸を整えてこう告げた。


「私――虹橋シズナは、貴方の従妹になります」
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

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