第2話 遥かな突風
文字数 480文字
その口の前でバツを作るしぐさは、同じ図書委員の
島袋さんが、クラスを代表して母さんの葬儀に来てくれた時、ありがたくて、心の中で泣いていた。
誰にも大切な母さんへの涙を見せたくなかったから。
何だ?
あのばいんばいんの島袋さんと俺が?
傷付けないようにか、島袋さんは笑ってくれた。
うおお!
俺なのに、頬を染めたりして何か可愛い。
どきどきして、俺の顔が見られない。
何てバカなことがあるんだ!
島袋さんの両手をそっと包むと、とくん、とくん、とくんと鼓動が痛いほどに伝わる。
島袋さんが目をつむる。
がーんだ。
俺がそんなナンパな訳ないよ。
まだ、誰にもこの唇を預けたことはないのだよ。
すると、屋上に突風が吹いた。