文字数 610文字

「どこにいくんでえ」
「ちと厠まで」
「そんなオメエさん、見ねえ見ねえとおもってたら、すぐ厠かい」
「いえね、便意をもよおしたものですから。しばらく会わなくったって、知らない仲じゃないからいえるんですよ、こんなこと」
「しかしオメエさん、ベッピンになったなあ」
「そうですか」
「そうともさ。しかし厠っていうとアレだね。ヤボなこというようだが何か飲み食いしたんだね」
「そりゃアナタさん、うちだって飲まず食わずじゃ生きちゃおられません」
「そんなもんかい」
「そうですよ、絵に描いた女神さまだって絵に描いた餅たべるって。お座敷のひと、いってました」
「誰がきてるんでえ」
「だれって、アナタさんが知らないひとですよ」
「そんなことあるけえ、おらあ誰でも知ってるって有名なんだ」
「どこで有名なんですか。うちアナタさんなんか知らん」
「そういうねえ、オメエとおらの仲じゃねえか」
「なにするんです!」
「なにもかにもあるもか。こうするまでよ」
「いやああああああああ、だれかあ! タ・ス・ケてってえええええ」
「やめねえか! いつから芝居がかった! こらしめるぞ、こうして、こうして、こらしめるぞ、こうだ、こうだ、こうだ」
「イヤアうぐぐ、やめてやめてやめて、堪忍して。離して! アナタさんが捨てたんじゃありませんか! アナタさんがうちを!」
「オメエが浮気したからだ!」
「浮気じゃありません! 本気の本気の本気よ。アナタさんがイケないの! アナタさんが、、、」
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